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映画・演劇のレビュー

『体操しようよ』『母を失くしたとき、僕は遺骨を食べようと思った。』

2021-04-29 18:42:24 | 映画
この2本を昨日見た。定年後の憂鬱と向き合うこと。母の死と向き合うこと。今自分が直面している問題をシミュレーションした2作品ということになる。いささか甘いコメディといくぶん甘いシリアスドラマという相違はあるけど、どちらもしっかり現実と向き合っている。僕にはいい刺激になった。 まず、『体操しようよ』から。定年退職した男が時間を持て余す。毎日することがなく退屈していて、暗い気分になっている。今の自分と . . . 本文を読む
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『青夏 きみに恋した30日』

2021-04-29 17:08:56 | 映画
コテコテの少女マンガの王道を行く映画を見た。普通恥ずかしくてここまではしない。微妙というより、「これはないわ。」と思うしかないお話の展開だ。でも作者は最初からそれだけを意図して作っているのだから、この定番の(鉄板の)展開を一切外すこともなく突き進む映画世界に浸って見ることにした。たまにはこういうのも悪くはないという気分だった。なんだか毎日がしんどくて塞ぎがちだったので、もう何も考えないことにした。 . . . 本文を読む
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『るろうに剣心 最終章 The Final』

2021-04-27 17:31:25 | 映画
コロナ禍で公開が延期されていたのだが、ようやく公開が始まったにも関わらず公開2日で、緊急事態宣言が発令され、日曜日から東京、関西での上映がストップしている。この映画だけではなく、映画界は大打撃であろう。特にこのGW大動員が期待されていただけに大きな痛手だ。 50億円の巨費を投じた日本映画としては最大規模の超大作である。ここまでの3作品はとても好きだ。こういうタイプのスケールの大きな時代劇アクショ . . . 本文を読む
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『息をひそめて』

2021-04-27 16:36:40 | 映画
Huluによる8話からなる短編連作配信映画。中川龍太郎監督作品。(脚本は高田亮との共作)舞台は2020年春、川崎、多摩川地区。そこでのコロナ禍の人々のスケッチを切り取り、最後は2021年の秋、近未来につながる。とりあえずコロナが終息した後が描かれる最後のエピソードまで。ささやかな人々の営みが、丁寧に切り取られていく。 ただ、仕方ないことだが、マスクの扱いとか、少しリアリティのない描写もあり、お話 . . . 本文を読む
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浮狼舎『残念王国』

2021-04-27 15:56:31 | 演劇
とても面白いタイトルだと思った。何が一体「残念」なのか。この「残念」ということばに「王国」という単語が繋がれた時生じる不思議な感触が期待を抱かせる。それはこういうことだ。ここにある不思議は演劇ならではの世界観を形成するに違いないという期待である。 リチャード王とその妃であるキヌーシャの悲劇が描かれるのだが、こういう赤毛ものをこんな小劇場で見せると、それはまるで喜劇のように見える。芝居は学芸会で、 . . . 本文を読む
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『ホムンクルス』

2021-04-24 11:37:11 | 映画
現在劇場公開中の映画なのに、ネットフリックスで配信がスタートした。なんだか不思議な世の中になったものだ。なんとなく得した気分で見始めたのだが、僕は乗れなかった。綾野剛の熱演は確かに凄いけどそれが空回りしている。描かれる世界がリアルではないのだ。 監督の清水崇はこのとんでもないお話を現実とも妄想とも言えない不思議な感覚で映像化していくべきだった。もともと彼はそういうものが得意だったはずなのだ。代表 . . . 本文を読む
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小川糸『とわの庭』

2021-04-24 10:53:56 | その他
読んでいてこんなにも苦しい小説はなかなかお目にかかれまい。出来ることなら、もう読むことをやめてしまいたい。そう思った。だけど、この苦しさから目を背けてはならない。母親と過ごす第1章もきつかったが、母親がいなくなる第2章は耐え難い。ようやく保護されて人間らしい生活を送り始める第3章を読みながら、ほんとうによかったね、と思う。目が見えないというそれだけでも、大概なハンディなのに、その前提すら大したこと . . . 本文を読む
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『泣くな赤鬼』

2021-04-23 20:07:42 | 映画
『キセキ あの日のソビト』の兼重淳監督作品なので、ただのよくある難病物ではないと思っていたが、お話自体はこんなにもある種のパターンを踏襲する定番映画なのに、それにこんなにも感情移入させられるとは思いもしなかった。脱帽である。 前任校では野球部の鬼監督だった男が転勤してまったくやる気を失くしている。50代になり、若い頃の情熱を失った。クラブ活動に対して以前のような想いで向き合えなくなった。甲子園を . . . 本文を読む
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『サウンド・オブ・メタル 聞こえないということ』

2021-04-23 18:40:56 | 映画
とてもリアルにこの突然の悲劇と向き合うことになる。他人ごとではない恐怖が僕たちを襲う。彼の視点(というより、聴点?)からの描写が、彼の直面した現実をよりリアルに体感させてくれる。今、彼がどんな音を聴いているか、(どんなふうに聴こえているのか。いや、どれだけ聴こえていないのか、だ。)を実感しながら、(彼を見るのではなく、)彼自身を感じる。これはそんな類い稀な映画だ。 彼の恐怖を自分のこととして受け . . . 本文を読む
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乗代雄介『旅する練習』

2021-04-23 18:09:35 | その他
自宅から鹿島アントラーズの本拠地まで歩いて旅する6日間のお話。小説家の叔父さんとサッカー大好き姪っ子(小学6年)がコロナ禍の2020年3月、ふたりでサッカーボールを蹴りながら(旅の途上でリフティング500回を目指す)鹿島を目指す。彼女は学校では男の子にも負けない。中学は女子サッカー部のある私学に入った筋金入りのサッカー少女だ。 旅の途中で同じように鹿島を目指すみどりさんと出会い、共に旅する。3日 . . . 本文を読む
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藤野恵美『きみの傷跡』

2021-04-20 15:56:37 | その他
青春小説で大学生の男の子と女の子の恋愛小説なのだけど、この小説のつつましさが好きだ。これはキラキラした小説ではない。どこにでもある地味な恋バナで、今時こんな恋愛をする大学生がいるのか、と思うかもしれない。だけど、ほんとうはこんなふうに憶病で、誠実な恋はある。 少しずつ距離を詰めていくけど、おどおどしながらで、なかなか近づけない。だけど、それは全くもどかしくはない。これでいいのだ、と思う。映画や小 . . . 本文を読む
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岸政彦、柴崎友香『大阪』

2021-04-20 15:25:54 | その他
大阪について書かれたエッセイなのだけど、読みながら、これはまるで自分の気持ちが書かれているようだ、と思った。なんだか不思議な気分だ。自分が見てきたものがそこにはある。ふたりの作家がそれぞれの視線から交互に大阪への想いを綴る。引き込まれてしまう。 幼年期大阪の大正区で暮らしていた。柴崎さんが書いていることのひとつひとつに思い当たることがあり、それはまるで自分の記憶そのものだ。 泉尾中通りの商店街 . . . 本文を読む
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『バイプレイヤーズ』

2021-04-19 18:02:12 | 映画
TVは時々見ていたけど、それほど熱心なほうではない。あまり面白いとは思わなかった。楽屋落ちみたいで、乗れない。だから、この映画も見る気はなかったのだが、たまたま時間調整で上手くはまったので、見たのだけど、実に面白い作品に仕上がっていて満足した。これだけの俳優をよくぞ集めたものだ。日本中の役者たちを総動員した。個性的で、どの映画でも見る有名なバイプレイヤーたちが一斉に顔をそろえている。全員実名で出て . . . 本文を読む
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『街の上で』

2021-04-19 17:18:59 | 映画
この映画のなんとも言えない緩やかなタッチが好き。なんでもない生活の風景が提示される。自分もまたこの街で暮らしているようなそんな気分にさせられる。ドラマチックとは別次元で、そこに生きる人たちのスケッチを彼らの目線で見ている。だから彼らと一緒にそこで暮らしている自分を想起する。でも、それは感情移入して彼らと寄り添うのではなく、もっとさりげない。特別ではないありふれた日常がそこにはある。ここで暮らしてる . . . 本文を読む
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『水を抱く女』

2021-04-18 13:06:28 | 映画
『東ベルリンから来た女』のクリスティアン・ペッツォルトがこんな映画を作るのかと、驚く。水の精であるウンディーネ神話をモチーフにしたファンタジーなのだけど、語り口がリアルで、お話の内容との齟齬が不思議な味わいにつながる。これでよかったのか、どうだか、よくわからない。不思議な感触に包まれる。 90分という短い上映時間も影響して、「えっ、これでおしまいなの、」とキツネにつままれた気分。説明はいらないけ . . . 本文を読む
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