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映画・演劇のレビュー

『からかい上手の高木さん』

2024-05-31 16:45:00 | 映画
今泉力哉監督がこんなかわいい話を手掛ける。彼の描く『からかい上手な高木さん』は原作の10年後のお話。中学生だった彼らも、今はもう25歳。そんな大人になったふたりの再会が描かれる。母校の体育先生になった西片(高橋史哉)。そこにパリから日本に戻って来て、東京の大学に通う高木さん(永野芽郁)が教育実習生として島に帰ってくる。  小豆島を舞台にしたローカル色豊かなほのぼのしたドラマ。まぁお話自 . . . 本文を読む
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『アンデス、ふたりぼっち』

2024-05-31 07:56:00 | 映画
2017年のペルー映画。アンデスの山の上でたったふたりで暮らす老夫婦の日々を静かに描く。彼らの周囲には誰も住まない。そんな場所でふたりぼっちで生きている。そして都会に行ったままで、帰らない息子をずっと待ち続ける。オスカル・カタコラ監督作品。まだ若いのにこの映画を撮った後亡くなったらしい。これはまだ監督第二作。だが確かな自分のスタイルを貫く。カメラは終始フィックスのままで一切動くことはない。スクリー . . . 本文を読む
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三浦しをん『しんがりで寝ています』

2024-05-31 07:38:00 | その他
エッセイは読んだ後あまり感想をここには書いていないのだが、これは書くことにした。バカバカしいおバカエッセイだし、書くことはないのだけど、楽しかったからだ。読みながら、こんなものを読んでいるじかがもったいないと思って何度も本を置いたが、気づくとまた読んでいた。何冊も他の本を読みながらも、時たまこれを読んで、相変わらずバカだなぁ、と思う。三浦しをんの小説は好きだが、エッセイのバカさ加減もそれはそれで心 . . . 本文を読む
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『猿の惑星 キングダム』

2024-05-30 20:14:00 | 映画
シリーズ最新作にして新章のスタート、とかいう宣伝にウンザリして、最初から見る気はなかった。だけど時間の関係で見られる映画はこれしかなかったから、仕方なく見ることにした。  だけど予想外の作品で少なからずの衝撃を受けた。こんなうれしい誤算があるから映画は見ないとわからない。2時間半に及ぶ作品の最初の1時間半くらいまで、なんと人間は登場しないのだ。本格的にここは猿の惑星なのである。 &n . . . 本文を読む
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浅倉秋成『家族解散まで千キロメートル』

2024-05-29 22:26:00 | その他
家族解散まで3日。最後の3日、不在の父の不始末をなんとかするために青森まで旅する家族。1,000キロメートルの旅の先には何があるのか。  これは、まさかの岡本喜八監督作品を思わせるそんな小説だ。生きていた頃の喜八さんに読んでもらい映画化してもらいたかった。そうして欲しかった。主役はともかく、ふざけた父さんは60代の頃の仲代達矢で。まぁ、今なら役所広司でお願いします。面白いし、テンポもい . . . 本文を読む
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『終末の探偵』

2024-05-29 16:32:00 | 映画
北村有起哉が主演する探偵ものである。懐かしい松田優作の『探偵物語』を想起させる設定だ。北村が主演する映画なんてもしかしたら初めてではないか。めでたい。都会のかたすみで生きる孤独な探偵を見事に演じた。当然だけど。上映時間が80分というその長さは劇場用劇映画としてかなり微妙だ。昔の添え物併映作でも90分というのが相場。なのに敢えてこの長さに収めたのは何故か、それとも安易に低予算映画だからこの尺にしたの . . . 本文を読む
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いとうみく『真実の口』

2024-05-29 13:28:00 | その他
なんだかなぁと思いつつ読み進めるが、ラストまで読んだ時、確かにな、と感心させられる。母親に言わず自宅に泊めて、勝手に父親のところに連れ出すのはあまりに無謀な行為である。これは高校1年の子どもたちが4歳の少女を助ける話だが、警察官に言わせると彼らの行為は誘拐になる。最初の出会いはコンビニの前。迷子になってそこに座っていた彼女を家まで送り届けるために警察まで連れて行った。 やがて彼女が母から . . . 本文を読む
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辻村深月 他5名『時ひらく』

2024-05-28 08:36:00 | その他
テーマを定めて集めたアンソロジー。錚々たるメンバーによる得意な設定を駆使した短編を集めた。場所は三越百貨店。ライオン前。時空を超えた出会いと別れ。さまざまなアプローチをする。辻村深月からスタートして、伊坂幸太郎が続く。ふたりらしい作品で安心して読める。ここまでがハイライト。その後も三越百貨店という350年の歴史を誇る老舗を舞台にして、いずれもそれなりには楽しめる作品が提示された。阿川佐和子、恩田陸 . . . 本文を読む
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北村薫『不思議な時計』

2024-05-27 18:56:00 | その他
『水 本の小説』に続く『本の小説』シリーズの新作。本を中心にして映画、演劇等々の蘊蓄を小説にして綴る短編連作。  連想ゲームのように徒然に綴られるお話の数々が素晴らしい。特に『ブランデーから授業』。塚本邦雄から始まった詩人の話は朔太郎の授業の話へとつながる。さらに『授業から映画』は白眉。今ちょうど2年生の授業で詩を取り上げているから目から鱗状態で読み進めた。蜂飼耳のエッセイからスタート . . . 本文を読む
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くじら企画(シン・クジラ計画)『流浪の手記』

2024-05-25 18:49:00 | 演劇
ウイング再演大博覧會2024参加作品。今回の再演博のトップバッターを飾る。くじら企画の進化形、「シン・クジラ計画」の第二弾。大竹野正典が亡くなってからもう15年になる。今回取り上げる作品は出版された『大竹野正典劇集成』には収録されなかった作品である。地味なストーリー展開で少しわかりにくいかもしれない。そんな作品を後藤小寿枝演出で取り上げた。深沢七郎(フカサワヒチロー)の無為の放浪を描く。ヒチローは . . . 本文を読む
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山田太一『時は立ちどまらない』

2024-05-24 16:31:00 | その他
あんなに好きだったのに、晩年の山田太一作品をオンエアで見ていない。テレビを見る余裕なんかなかったからだ。この本に収められた作品も『時はたちどまらない』しか見ていない。いずれも2010年代に書かれて放送された作品だ。『五年目のふたり』は山田さんの遺作となる作品らしい。この3作品を編者の刈谷さんは東日本大震災三部作と呼ぶ。重くて暗いドラマだから、避けたのかもしれないが、あの頃はあまりに忙しくて、TVの . . . 本文を読む
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『デッド・デッド・デーモンズ・デデデデデストラクション後章』

2024-05-24 13:01:00 | 映画
まさかの大傑作だった前章を受けて待望の後章である。前章はたまたま見た。同日公開だった『オッペンハイマー』を見る前に時間がピタリと合ったから前座で見たのに、あまりの衝撃で『オッペンハイマー』がただのオマケになってしまった。(あれはあれでいい映画だったけど)あれから2ヶ月、ようやく後章の公開である。待ちに待った。いきなりの公開予定の変更で、1ヶ月後だったはずが2ヶ月後に延期された。今回は今日これだけを . . . 本文を読む
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『ミュジコフィリア』

2024-05-23 15:48:04 | 映画
原作は先にすでに映画化された「神童」「マエストロ!」のさそうあきらによる同名音楽マンガ。それを同じように「音楽もの」である『バジーノイズ』で好演した井之脇海の主演で映画化した2021年作品。松本穂香も出ているから見ることにした。京都が舞台で、芸大生たちのドラマというのにも興味を引かれた。今時「学園もの」は高校生がほとんどだから大学生が主人公というのは珍しい。 監督は『時をかける少女』(2010年 . . . 本文を読む
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『5億円のじんせい』

2024-05-23 15:38:31 | 映画
心臓移植で命を取り留めた6歳の少年、望来(みらい、と読む)。善意の募金5億円。その代償として11年間TVが彼の人生を追いかけている。17歳になった彼は善意の募金という「借金」を返して自由になるための旅に出る。「NEW CINEMA PROJECT」第1回グランプリを受賞した企画の映画化で、脚本を蛭田直美、監督は文晟豪(ムン・ソンホ)。家出からの5億円を稼ぐための旅には当然説得力はない。短期間で17 . . . 本文を読む
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宇野碧『繭の中の街』

2024-05-23 05:22:00 | その他
神戸の街を舞台にしたラブストーリー。時空を超えて出会ったふたり。街をさまよい歩く日々。浪人中の彼女はある日彼と出会う。萌黄の館に行き、さまざまな異人館を巡り、彼の住む古ぼけたアパートに行く。   短編集ではなく、中編に短編も混ざっている7編。タイトルの繭の中をメインにした冒頭の中編『エデン102号室』ともうひとつの中編『つめたいふともも』(10歳以上年上の別れさせ屋の女性との恋)を中 . . . 本文を読む
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