習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『東京家族』

2013-01-29 23:04:53 | 映画
 山田洋次監督50周年記念作品である。山田洋次監督は、半世紀の長きにわたって映画を作り続けてきたんだ。その当たり前の事実に驚く。そして、今回、彼は小津安二郎監督の名作『東京物語』に挑む。日本映画史上最高の傑作に留まらず、世界映画史にも名を残す作品をリメイクするのではなく、新たに新作として作り直すのだ。山田洋次にしか描けない世界を、この同じ話の中で展開するのだ。しかも、時代設定は、今である。この現代 . . . 本文を読む
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『テッド』

2013-01-29 23:00:09 | 映画
 友だちがいない少年は、両親からクリスマスにもらった熊のぬいぐるみを大事にしている。彼にとってそれは、たったひとりの親友だ。片時も離れず、いつも一緒にいる。寝る時も一緒だ。ある日、そのぬいぐるみが、しゃべりだす。そして、普通の人間のように振る舞うのだ。それから20数年。30歳になっても、彼はぬいぐるみのテッドと一緒に暮らしている。  この映画が実現可能なら、実写版『ドラえもん』も十分可能だろうと . . . 本文を読む
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燈座『人の香り』

2013-01-24 20:36:53 | 演劇
演出のキタモトさんは、この母と娘を冷徹にみつめている。きちんと距離を保ち、近寄りすぎることもなく、突き放すわけでもない。その微妙な距離感が、この作品を緊張感のあるものにする。  失われた義足を巡る母と娘の対話を通して、彼女たちの関係性を浮き彫りにしていく。母は娘に対して注ぐ愛情はストレートなものではなく、彼女に対してとても済まないという気分から、かなり下手に出た対応であり、娘の方が尊大だ。娘は . . . 本文を読む
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満月動物園『ツキシカナイ』

2013-01-23 20:41:56 | 演劇
 早いもので、今回でシリーズ4作目になる。幟を手にした死神(河上由佳)と、彼女に取りつかれた男との日々を描く連作。死神がいつも、自分の横にいて、あれこれとおせっかいを焼く。それって、本当に鬱唐しい。でも、ずっとそうなのだ。取りつかれたその日から。  いつも同じパターンの話で、それがようやく心地よくなってきた。最初はこのテンポに慣れなくて、困ったが、今ではこのまどろっこしいところが快感だ。でも最初 . . . 本文を読む
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山本美香『戦争を取材する』

2013-01-23 20:41:15 | その他
 小学校高学年から中学生向けの本なのだが、大人が読んでも、十分考えさせられるし、教えられることがたくさんある。優しい言葉で難しい問題をわかりやすく語る。山本さんの実体験から語り起こした言葉の数々が胸に沁みる。彼女が実際に戦場で亡くなったことを知っているから余計に、重いものとして、伝わってくる。  戦場カメラマンという仕事について、そして、今あるこの世界の状況について、あれもこれも、知らないことば . . . 本文を読む
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小川洋子『最果てアーケード』

2013-01-23 20:40:40 | その他
 ここは彼岸の最果てアーケード。そこにやってくる人たちと、そこで暮らしている人たちとの一瞬のふれあいが、いくつもの小さな物語として、ここには収められてある。10話からなる連作だが、それが永遠のように思える。彼女はここにいて、さまざまな人たちを見ている。お客さんのところに商品を届ける。彼、彼女と言葉を交わす。彼女はここにいて、ずっと見ている。やがて、少しずつ、時は過ぎていく。  ここには、お客さん . . . 本文を読む
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市川拓司『ねえ、委員長』

2013-01-23 20:40:08 | その他
 こういう運命の恋を描くラブストーリーは市川拓司の真骨頂なのだが、それをこういう中短編の世界で展開すると、長編の時以上に心地よいものになるという事実にちょっとした衝撃を受ける。3話連続で同じパターン。そんな中でも、短いほどインパクトが強いという事実。タイトルロールの中編より、少し短い『Your song』のほうがよくて、しかも、一番短い『泥棒の娘』が、もっといい。それって内容にもよるのだろうが、そ . . . 本文を読む
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『少年と自転車』

2013-01-18 20:49:22 | 映画
『ロゼッタ』『ある子供』『ロルナの祈り』、ダルデンヌ監督は、いつも変わらない。淡々とした描写で冷徹に主人公たちをみつめていく。観客の我々は突き放された気分にすらなるのだが、彼は突き放しているのではない。そこにある現実をただそのまま見せていくばかりなのだ。それが、もどかしかったり、時には冷たすぎるのではないか、とも思う。だが、これが現実だ。そんな過酷な現実を少年は生きている。  彼に共感することは . . . 本文を読む
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戌井昭人『松竹梅』

2013-01-18 20:44:31 | その他
 これは凄すぎる。今まで戌井昭人はそれほど好きじゃなかったけど、今回はやられました。ノックアウトです。主人公のバカ小学生3人組の生きざまに惚れた。こんなハードボイルドな小学生を造形した彼の力量に完敗です。というか、別に彼と喧嘩してるわけでもなんでもないのだが、思わずそんなふうに言わざる得ないほど、この小説は魅力的なのだ。  彼らは教室では落ちこぼれだし、担任には嫌がられるし、でも、マイペースで、 . . . 本文を読む
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劇団もんじゃ『プラットホーム スピンオフ』

2013-01-17 20:51:14 | 演劇
 こういう作りの甘い芝居をたまに見るのは、悪いことではない。お芝居が大好きで、演じることで、楽しい時間を過ごしたい、というこの芝居に関わった人たちの素直な想いがちゃんと伝わってくるから、これはこれで気持ちがよかったのだ。  作品としては別にどうこういうことはない。オムニバススタイルで、駅のプラットホームを舞台にした寸劇が語られていく。そこには取り立てて、凄い話があるわけでもなく、なんとなく、見て . . . 本文を読む
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『鈴木先生』

2013-01-17 20:48:03 | 映画
 これもまた例によってTVドラマの映画化なのだが、従来のパターンと違うのは、これが大ヒット作ではない、ということだ。しかも最初から映画を前提にしていたらしい。だが、それにしては映画向きの内容ではない。映画にしては地味すぎる気がする。内容は確かにかなり過激だ。これをTVでしていたなんて、ちょっとした衝撃だろう。そういう意味ではこれは映画でしか描けないのかもしれない。中学を舞台にして、先生と子供たちの . . . 本文を読む
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『LOOPER ルーパー』

2013-01-17 20:34:37 | 映画
これってお話としては、まるで『ターミネーター』じゃないですか。しかも、それをシュワちゃんではなく、ブルース・ウイリスが演じるのだ。30年後の未来からやってきた男が、30年後の犯罪組織のボスを過去に遡って殺しに来る。今はまだ少年であるその悪の親玉を、その子の母親と、ブルースの30年前の自分が守る。このややこしい説明でわかりますか? 要するに20代の今の自分と、その30年後のハゲオヤジになった未来の . . . 本文を読む
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ブルーシャトルプロデュース『ゼロ』

2013-01-13 19:55:38 | 演劇
 圧倒的なダンスシーンで全編を彩る大塚雅史さんによる最新作。零戦をテーマにして描く青春群像劇だ。こういう題材は扱い方が難しい。特攻隊を描く青春映画は数あれど、それらの作品は、どうしても「戦争をどう捉えるか」というデリケートな部分で、紋切り方の切り口になりつまらなくなるのだが、この作品は敢えてそこを無視している。それはそれで正しいあり方だろう。  神風特攻隊を描く。だが、戦争の不条理には触れない。 . . . 本文を読む
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たなぼ た 『ちゃんぽん meets Cafe au lait』

2013-01-13 19:03:02 | 演劇
 たなぼたの第13回公演だ。 なんと4年振りの活動再開らしい。そんなにも、間が空いていたなんて、気付かなかった。ウイングで上演されていた時はよく見ていたけど、最近ご無沙汰していたから、僕にとっては4年どころか、本当に実に久しぶりだった。なんだか新鮮で気持ちのいい芝居だ。 作・演出はいつものように中川千寿さんである。 たわいのないコメディーだが、ちゃんとそのたわいのない話を作ってあるから、それはそれ . . . 本文を読む
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『妖怪人間ベム』

2013-01-13 17:58:16 | 映画
 今年最初の劇場で見る映画がこれというのは、なんだか情けない話なのだが、時間の関係でこれしか見ることが出来なかったのだから、仕方ない。たまたま3時間ほど時間が出来たのだが、そこにぴたりと収まる映画がなかなかなくて困った。かといってせっかくの時間を無駄にはしたくないから、これは、見ていない映画で、見れるもの、というとても消極的な理由からの選択なのだ。  TVシリーズは見ていない。だが、オリジナルの . . . 本文を読む
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