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映画・演劇のレビュー

『偉大なる、しゅららぼん』

2014-02-28 23:09:54 | 映画
 万城目学の小説の映画化第3弾である。先の2本以上にバカバカしくて壮大なこのお話をどう仕上げるのか、興味深々で試写に臨んだわけだが、正直言うと、これは最初から負け戦だな、と思っていた。それはこの作者たちが(監督も脚本家も知らない人だった。水落豊監督)悪いのではなく、すべての原因は原作者にある。  これは一見すると、とても映画向けの題材であるにもかかわらず、その実は映画にするのがとても難しい企画な . . . 本文を読む
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『フィギュアなあなた』

2014-02-28 22:50:06 | 映画
 石井隆監督の新作である。『甘い鞭』と2本セットで制作されたうちの1作。劇場で見たかったのだけれど、関西ではローカルな劇場でしか上映されず(布施ラインシネマ)見ることができないまま上映が終わった。DVDになって、すぐに借りるつもりだったのに、TUTAYAの店頭には並んでなかったので、おかしいなぁ、と思いつつ、今日まで時が経った。なぜ、見ることが出来たのかは、簡単な理由だ。この映画がポルノの棚にあっ . . . 本文を読む
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『臍帯』

2014-02-28 22:48:10 | 映画
 始まってから15分間まるでセリフがない。そのほとんどは、少女がある家を外からずっと見ているだけの描写。彼女が何者でなぜそんなことをしているのか、わからない。遠くからみつめる。家の中の会話がかすかに聞こえるシーンもあるけど、ことさらそれを聞かせる気はない。特に重要なことを話しているわけでもない。ただの、日常会話だ。彼女は雨の日も、風の日も(あっ、これは慣用句のようなものね)、もちろん天気のいい日も . . . 本文を読む
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原田マハ『総理の夫』

2014-02-28 22:46:27 | その他
 若い女性が日本の総理大臣になる、という荒唐無稽な設定をどこまでリアルに立ち上げ、ファンタジーとして仕立てることができるのかがこの小説のねらいだ。もちろん、心地よいファンタジーでありつつも、もし、こういう理想が実現できたならいいのに、と思わせることも大事だ。絵空事のうそであってはならないし、もしそうならこのお話には乗れない。このとんでもない設定をどこまで現実に近付けるのかが作者の腕の見せ所。   . . . 本文を読む
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『建築学概論』

2014-02-25 20:26:38 | 映画
 なんとも無味乾燥なタイトルだが、このそっけなさは、悪くはない。こういう硬いタイトルがこの映画にはぴったりなのだ。これは、その辺によくあるような、ただ、甘いばかりのラブストーリーなんかではないからである。  10代の男女の恋物語が、等身大に描かれる。このなんとも言えないもどかしさは誰もが心当たりがあることだろう。もう少し上手は、やれるはずだろ、と見ていて歯がゆくなるのは自分たちがもう大人になって . . . 本文を読む
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『50回目のファーストキス』

2014-02-25 20:06:23 | 映画
 アダム・サンドラーとドリュー・バリモアが主演したラブストーリー。事故で記憶障害になったドリューは、事故の日以降の記憶を留めて置くことができず、毎日同じ一日を繰り返す。父親と弟はそんな彼女と永遠に続く1日を過ごしていた。(小川洋子の『博士の愛した数式』みたいだ。)だが、アダム・サンドラーが彼女と出会い、彼女を好きになることで、ありとあらゆる手を使って彼女の記憶を留めようとする。これはそこから始まる . . . 本文を読む
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長岡弘樹『教場』

2014-02-25 20:04:59 | その他
 6話からなる短編連作スタイルの長編作品。最近はこのパターンの小説がやけに多くなった。要するに読みやすく(書きやすく、でもある)するためだ。読み手の力量に合わせて書かれてあるのかもしれない。長い文を読む力のない(時間もない)読者のニーズに作者が合わせているのなら、なんだか少し悲しい。(もちろん、書き手にもそれほどの力量がなにのかもしれないけど)  警察学校を舞台にしたドラマである。彼らがここに入 . . . 本文を読む
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浮遊許可証『リ-ンカーネーション・ティーパーティー』

2014-02-24 20:02:24 | 演劇
 10周年記念企画第2弾であるにも関わらず、僕は初めてこの集団の芝居を見る。以前から気にはなっていたけど、なかなか見る機会がなかったからだ。舞台監督の塚本さんから案内を頂かなければ、今回も見ないまま終わったかもしれない。そんなふうにして、大切な芝居をたくさん見逃していることだろう。どうしても、いつも見ている確実な劇団を見ることから、まずスケジュールを決めてしまう。少ない時間をどうやり取りするかは本 . . . 本文を読む
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伏兵コード『留鳥の根』

2014-02-24 19:56:22 | 演劇
 初演からキャストを一新(でも、稲田さん演じる女だけは変わらない)して、演出も今回は稲田真理さん自身が担当するOMS戯曲賞受賞公演。パンフで稲田さんが述べているように、彼女は「物語」を語りたいわけではない。そこから「できるだけ離れたい」と言う。だから、ここには明確なストーリーラインやドラマチックな展開は存在しない。予感のようなもので突き動かされる。  登場人物は5人のみ。起伏の大きい舞台装置は、 . . . 本文を読む
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たなぼた『カラメルループプチ~LOVE & PASSION MIX~』

2014-02-24 19:37:38 | 演劇
 これは昨年1月久々の復活公演を果たした「たなぼた」が、満を持して臨む最新作である。しかも古巣であるウイング・フィールドに彼女たちが帰ってきた。なんだかそれだけで嬉しくなる。今、芝居をやるって、結構大変なことだ。しかも、しばらく休団していた女性中心の劇団が復活するのは簡単なことではない、はずだ。でも、彼女たちはまた、こうして戻ってきた。そのことを喜びたい。  4話からなるオムニバス・スタイルなの . . . 本文を読む
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小野一光『家族喰い(尼崎連続変死事件の真相)』

2014-02-24 19:26:28 | その他
隅田美代子による事件を扱うノンフィクションなのだが、あまりに膨大な人物と事件の概要の壮大さに、言葉を失う。どこを切り口にして描くのかも、筆者自身がわからなかったはずだ。読みながら、誰がどうしてどうなったのか、それを掴むことすら困難を極めた。それは事件が発覚した時の新聞やTV報道でも感じたことだったが、今回、この本を読みながら、ますますその困難を感じた次第だ。小野さんは尼崎に入ってそこで生活しなが . . . 本文を読む
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『新しき世界』

2014-02-23 22:36:07 | 映画
 久々に「韓国映画を見た!」という気分にさせられる傑作映画の登場である。先日、三池崇史の『土竜の唄』を見たとき、なんだかなぁ、と思った部分をこの映画はちゃんと補ってくれる。もちろん、あの映画はコメディーだから、あれはあれでよかったのかもしれないけど「潜入捜査もの」というジャンルに於いて、必要な条件を満たせていない。緊張感である。あのときは『インファナル・アフェア』を引きあいに出したけど、それは的外 . . . 本文を読む
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椎名誠『あやしい探検隊 済州島乱入』

2014-02-23 22:35:41 | その他
 椎名さんの「あやしい探検隊」シリーズは一体何冊あるのだろうか。作者ですらわからないのではないか。(というか、椎名さんは数えない!)これは、取りあえず、その最新作である。(たぶん)昔、昔、記念すべき第1作『わしらは怪しい探検隊』を読んだ頃を思い出す。角川文庫で読んだ。まだ、それほど椎名さんは有名ではなかったはずだ。この本も単発の1冊でしかなかった。(きっと)  衝撃的だった。こんなおバカな本がこ . . . 本文を読む
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中脇初枝『わたしをみつけて』

2014-02-23 22:26:58 | その他
『神様のカルテ』の看護師ヴァージョン。でも、あの小説のように暑苦しいことはない。(あっ、あの小説を貶しているのではないよ! どちらかというと、褒め言葉ですから)少し暗すぎるのは中脇さんのパターンなので気にしない。医療現場ものは、読んでいて辛い気分にさせられる事が多い。しかも、これは捨て子の話でもあるのだし。 病院の前で捨てられていた、子どもが成長して、看護師になった。そして、たった一人で生き . . . 本文を読む
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『BUDDHA2 手塚治虫 のブッダ-終わりなき旅』

2014-02-22 08:29:04 | 映画
 手塚治虫の傑作漫画の映画化シリーズの第2作だ。一作目を見たとき、こんな古いタイプの漫画映画を今の時代に作って、大丈夫か、と心配するほど、わが道を行くタイプの映画で、衝撃的だったけど、今回、ちゃんと続編ができてうれしかった。あれだけ、こけてしまったのだから、もう続きはないかも、と思った。今回も前回に輪をかけたほど、客の入りはよくない。まるでセールスの施しようにないような企画なのだから仕方ない。子供 . . . 本文を読む
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