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映画・演劇のレビュー

エイチエムピー・シアターカンパニー『HOMOHALAL-ホモハラル-』

2021-03-31 09:34:26 | 演劇
精力的に公演を続けるエイチエムピー・シアターカンパニーの新作。同時代の海外戯曲を紹介するシリーズの4作目。今回も実に楽しい作品に仕上がった。深刻な問題を扱いながら、しかも、近未来の話で、なんだか難しそうな芝居だな、と見る前(始まる前にパンフを読んでいた時)は思ったのだけど、芝居は予測とはまるで違い、とても軽快でわかりやすく心配は杞憂になる。 2037年のドイツが舞台だ。だから一応はSFなのだけれ . . . 本文を読む
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遊劇体『われわれは遠くから来た、そしてまた遠くへ行くのだ』

2021-03-31 08:36:18 | 演劇
いつものように何もない正方形の象徴的な舞台空間は具体的なドラマを提示しない。台風によって閉ざされた安全だったはずの空間は、地震によって破壊される。逃げ場として求めた村の消防団の詰め所に来た。だがそこに閉じ込められる。こういう基本的な設定はわかるがそんなことはどうでもよくなる。四角い空間の4人の男たち。彼らを囲んで4人の女たち。台本のト書きは口を閉ざした女たちによって読まれる。男たちのセリフはもちろ . . . 本文を読む
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『まともじゃないのは君も一緒』

2021-03-26 12:11:21 | 映画
これは凄い。思いもしない出来に驚く。こんなにも新鮮な驚きに満ちた映画には、なかなかお目にかかれまい。思いがけない拾い物で、ニンマリさせられる。前田弘二監督の2作品(『婚前特急』『わたしのハワイの歩きかた』)はいずれもおもしろかったけど、だからどうだ、というほどではなかった。『婚前特急』はコメディーとしてよくできているけど、中の上くらいか。でも、今回は違う。 この映画のテンポのよさ。主人公ふたりの . . . 本文を読む
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ヨルノサンポ団『あすのことはこれから』

2021-03-26 10:18:46 | 演劇
現在配信で公開されているヨルノサンポ団のウイングカップ参加作品。今回のウイングカップの掉尾を飾る作品なのだけど、コロナ禍で予定されていた公演が中止となり、代替措置としてこの作品が上演されることになった。実は配信ではなく、録画撮りのための公演を見せてもらった。 一人芝居で30分の短編だけど、実に丁寧に作られていて楽しめた。たわいないお話だといえばそうで、見終えた後、忙しくしていて気が付けば今日まで . . . 本文を読む
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『ミナリ』

2021-03-26 10:08:24 | 映画
80年代のアメリカを舞台にした韓国人の移民のお話。(最初はこれはいつの時代の話なんだろうか、と気になっていた。大統領の名前が出てきてようやく時代背景がわかる)若い夫婦とと2人の子供たちがアーカンソーの高原にやってくる。そこにあるのはトレーラーハウスだけ、何もない。 カリフォルニアでやっていたひよこの選別の仕事をここでもしながら、土地を開墾して農業を始める。今後需要が見込まれる韓国の野菜を栽培して . . . 本文を読む
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『夏時間』

2021-03-26 09:53:24 | 映画
意外だった。もっと甘美な映画だと思っていた。ホウ・シャオシェンの『冬冬の夏休み』みたいな。ノスタルジックでほろ苦く、でも幾分感傷的で甘い映画ではないかと勝手に期待していたので、そのクールな視線に戸惑う。まるでドキュメンタリーのようにある家族の夏の日々をステッチしていく。どこかにフォーカスして(きっと主人公の少女に)そこから夏の日々を描いていくだろうという予測は外れて、映画は彼ら家族の営みを、感情移 . . . 本文を読む
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金蘭会高校演劇部『Foreverケイ』

2021-03-18 11:56:21 | 演劇
この芝居を見てよかった。なんだか自分が生き返った気すらする。この芝居を見て、彼女たちの熱い想いを受け止めたとき、生きる勇気をもらった気がして、胸に熱いものがこみ上げてきた。   1995年。あの年にこの作品は作られた。阪神淡路大震災、そして地下鉄サリン事件のあった年。私たちがかつて経験したことのない未曾有の出来事と向き合い、そこからどう立ち直って生きるか。これは金蘭会がその指針を私た . . . 本文を読む
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『樹海村』

2021-03-18 11:52:59 | 映画
前作『犬鳴村』以上に嫌な気分にしかならない映画だった。それを意図したのなら成功なのだろうが、こういう成功作を誰が見たいと思うのだろうか。作品の完成度は低く、ストーリーは安易だし、ゆるゆるで緊張感は全くない。なのに、不快感だけはMAXである。怖いのではなく、ムカムカするのだ。清水崇は『呪怨』を撮ったとき、その不快感をきちんと恐怖へと昇華させていた。だから凄いと思ったのだが、今の彼はただ不快を提示する . . . 本文を読む
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『シン・エヴァンゲリオン 劇場版』

2021-03-18 11:39:34 | 映画
1月23日の公開が緊急事態宣言がらみでいきなり延期になり、いつ公開されるのかも未定のまま3月に入ったのだが、十分な告知もないまま、いきなり3月8日から(月曜日だ!)超拡大公開が始まった。すべてが謎のままの上映開始である。 この20年以上に及ぶエヴァの歴史に幕を引く。なんと2時間35分に及ぶ大作である。だが、内容の方はそうでもない。地味な内容だ。   心を完全射閉ざしてしまったシンジ . . . 本文を読む
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『ブレイブ 群青戦記』

2021-03-18 11:34:06 | 映画
これはある意味で新田真剣佑によるもうひとつの『戦国自衛隊』だと考えてもいい。彼の父親である千葉真一のあの代表作と、とてもよく似た設定の作品に彼が挑戦するというのはなんだか興味深いと思った。もちろん全く別の映画なのだが、題材として比較されてもいいくらいに酷似している。真剣佑は父親を越えることが出来たか?   ということで、どんな映画になっているのか、とっても楽しみにしていたのだが、まる . . . 本文を読む
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『クロール 凶暴領域』

2021-03-12 21:50:19 | 映画
こういうB級パニック映画を見るにはほんとうに久しぶりのことだ。昔は大好きだった、だけど、今ではもうほとんど見なくなった。それに、こういう映画は今の時代、映画館にはなかなか掛からないし。でも、レンタルショップにはある。しかも凄い量で。この手の安い映画は煽情的なパッケージで並んでいる。もちろん、見たいとは思わない。 ホラー映画やパニック映画は昔は映画の花形だった。『エクソシスト』以降A級ホラー映画が . . . 本文を読む
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『あのこは貴族』

2021-03-10 22:31:54 | 映画
男よりも女同士で生きること。2人ともそういう選択をする。もちろん、それがずっと続くかどうかはわからないけど、それは男と女であっても同じだろう。華子は結婚したけど、自分から離婚した。美紀はもちろん結婚なんかしない。同じ男と関わりながら彼女たちふたりは男を取り合うわけではなく、友人になるでもなく、でも、出会うし、付き合う。別々の世界で生きるふたりの女性の邂逅。たまたま美紀が付き合っていた男と華子は婚約 . . . 本文を読む
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山内マリコ『あのこは貴族』

2021-03-06 18:06:28 | その他
数日前、この小説の映画を見る予定だった。でも、諸事情から見送った。で、先に小説を読むことにした。今日映画に行こうと思ったけど、小説が面白すぎて映画館に行く時間を惜しんで先にその時間で残り半分を読むことにした。映画は来週に見に行こう。予想したように、先が予想できない小説で読み始めたなら止まらない。 華子の話が、凄すぎた。東京のお金持ちの世界なんて想像もつかないけど、それをちゃんと丁寧に書かれると、 . . . 本文を読む
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幸村しゅう『私のカレーを食べて下さい』②

2021-03-06 16:02:01 | その他
実はこの小説のことを書きたいとずっと思いながら、書く機会もなく時間だけが過ぎた。あまりに面白くて、前半を読んだところで、感想を少し書いた。書いた後、読んだ後半、なんと全くタッチが変わってしまうのだ。これは詐欺だ、と思うくらいに。あんなに幸せだった小説が一転してとんでもなく不幸なお話へと転じる。騙された気分だった。読んでいてあまりにつらすぎて。あんなにも幸せだった小説が、まさかこんなことになるなんて . . . 本文を読む
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『春江水暖』

2021-03-03 21:16:51 | 映画
今更僕がここに書かなくても映画ファンなら、誰もが知っていることだろうけど、これは素晴らしい映画だ。先週公開直後に見てきて、感心した。2時間半があっという間だった。とても豊かな気分になれた。美しい風景を背景にした人間ドラマはとてもよく出来ていて心ひかれる。中国の躍進のなかで、この自然はやがて失われていく。そんなことも含めて、ある家族の歴史であると同時に、さまざまなこともこの映画は描いていく。傑作であ . . . 本文を読む
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