習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ブルーバレンタイン』

2011-12-30 19:19:30 | 映画
 どうしようもないことが描かれる。まだ20代後半の夫婦である。お互いに愛し合っている。でも、破局するしかない。幼い娘もいる。人生はまだ始まったばかりだ。なのに、もうどうしようもない。2人はそれぞれ壊れた家庭で育った。だから、幸せな家庭を作りたかった。夫はとても優しい。子どもにも、自分にも。でも、妻はもうこれ以上一緒にはいられない、と思う。  夫は、仕事がない。高校中退で、引越しの仕事をしていたの . . . 本文を読む
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『CUT』

2011-12-30 18:34:53 | 映画
 イランのアミール・ナデリ監督が日本を舞台にして、オール日本人キャストで撮り上げた作品。ルックスは完全に普通の日本映画だ。全編日本語だし。だが、作品事態は当然のようにナデリ監督らしい頑なさに貫かれた観念的な映画に仕上がっている。いつものようにこれもロードムービーだ。ナデリというイラン人の映画監督が東京という異国の異世界を彷徨う姿が主人公を通して描かれるのだが、その主人公が日本人の映画監督であるとい . . . 本文を読む
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窪美澄『ふがいない僕は空を見た』

2011-12-30 18:24:42 | その他
 思いがけない拾い物だった。でも、昨年度山本周五郎賞の受賞作品だし、本の雑誌ベスト1、本屋大賞2位とか、帯に書いてあったから、僕が知らなかっただけで、世間では周知の事実だったのだろう。やられた!  最初はなんかあざとい小説だ、と思ったが、エピソードを重ねるうちに、これは本物だ、と思わされた。際物のちょっとエッチな描写もある小説、なんていうレベルではない。この凄まじい小説を読み終えて、ロドリゴ・ガ . . . 本文を読む
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『Rain Dogs 太陽雨』

2011-12-30 13:17:00 | 映画
 63回ヴェネチア国際映画祭コンペに出品され、東京国際映画祭でも上映された作品。アンディー・ラウの若手育成プロジェクトの1本でもある。2006年作品。マレーシア映画。内容的には、個人的で、インディペンデントな映画だけど、それを低予算で貧乏くさく作るのではなく、適正な予算のもとに、丁寧に作られた映画。とても贅沢なことだ。でも、これでは商業ベースには乗せられない。興行は度外視して作られたのだろう。きっ . . . 本文を読む
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『トレジャー・オブ・エンペラー』『アジャストメント』

2011-12-30 13:05:30 | 映画
 1昨年台湾に行った時、公開されていた映画だ。原題はたしか『刺陵』だったのではないか。よくあるパターンだが、日本版タイトルはどうしてもこんなふうに下品になる。ようやく今頃になって日本でもDVD発売されたようだ。劇場公開はなかった、と思うが知らない間に公開されていることもある。いつものことだが、ほとんど何の宣伝もなく、DVD発売に合わせて箔をつけるためひっそり上映されるケースはいまだ健在だ。でも、も . . . 本文を読む
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『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』

2011-12-29 09:34:59 | 映画
 今なぜ山本五十六なのか。その1点だけを考えながら見ることとなった。東映お得意の戦争超大作なのだが、もうこの手の映画は観客のニーズにはない。アナクロ企画を敢えて持ってきてまで見せたかったものは何なのか。それだけが知りたかった。70年目の真実なんて、言い訳でしかない。今だから言える、なんてことはない。もう言わなくてもいいよ、とほとんどの人が思うことだろう。この時代に必要な指導者、とでも言うのならば、 . . . 本文を読む
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SSTプロデュース『眠っちゃいけない子守歌』

2011-12-29 09:28:36 | 演劇
 眠れない(というか、敢えて「眠らない」のだが)男(山口雅美)の血走った目と、いきなりの凶暴な応対が、一瞬、女(辻野可奈恵)を怯ませる。しかし、彼女はプロである。(何のプロなのかはやがてわかる)冷静に対応して、今自分の置かれている現状を把握し、自分の為すべきことをする。だから、男は少し落ち着いて女と向き合うこととなる。このオープニングの緊張感がとてもいい。  SSTプロデュースの第2作は、前作『 . . . 本文を読む
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十中連合『濡れると、渇く』

2011-12-29 09:25:58 | 演劇
 こういう妄想を理屈もなく感性の赴くまま綴られていくと、見ていて退いてしまう。作り手のひとりよがりのわがままについていけなくなるからだ。しかも、1本のストーリーとして全体をまとまる力もないまま、細切れの断片の羅列をさも意図的なもののように見せられると、せめて一貫性のあるドラマとして提示してくれ、とごねてしまいたくなる。これが自分の方法論なのだ、なんて思っているのなら大きな間違いだ。きちんと見せるだ . . . 本文を読む
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『導火線』

2011-12-29 09:20:16 | 映画
 ウイルソン・イップがドニー・イエンとコンビを組んで作った入魂の一作。昨年、一昨年と連打した(僕は今年に入ってようやく見たのだが)『イップマン』二部作(日本公開は今年だ!)の前に2人が作ったのがこの作品だ。本邦未公開作だった刑事アクションなのだが、ドニー人気で浮上した。ここで2人は、たわいもない刑事ものの枠内で、ある意味、肉体を使ったアクション映画の限界に挑んでいる。  特に後半の怒濤の肉弾戦は . . . 本文を読む
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原宏一『東京ポロロッカ』

2011-12-29 09:15:39 | その他
『佳代のキッチン』の原宏一の新作。このタイミングで出版されるのは、ちょっとあまりにタイムリー過ぎて出版の時期はかなり考えたのではないか、と思う。今年の2月に書き終えて、そのあとあんなことが起きた。  南米アマゾン川の「ポロロッカ」のように多摩川が逆流して洪水になり、町が流される、という噂を巡る7つの短編連作である。この作家らしいハートウォーミングなのだが、震災の直後のこの時期にこれはちょっとなぁ . . . 本文を読む
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『アブラクサスの祭』(改訂版)

2011-12-28 09:11:11 | 映画
   あまりに中途半端にしか、書いてなかったので、少し加筆した。   もとパンクバンドのボーカリストである鬱病にかかったお坊さん(スネオヘアー)が、再びギターを持って、お寺でライブをする、なんていう話だと聞くと、これはきっとコメディーだ、と思うことだろう。坊さんの話つながりで周防正行監督の『ファンシー・ダンス』のような映画を想像する人もいるだろう。(いや、そんなこと、誰も思わないかぁ)だが、もち . . . 本文を読む
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赤星マサノリ×坂口修一『男亡者の泣きぬるところ』

2011-12-27 18:26:20 | 演劇
 昨年12月から1年をかけて全国4か所をまわった赤星マサノリ×坂口修一による2人芝居の凱旋公演。たまたま僕が見た回は、キャストを入れ替えたイヴの奇跡ヴァージョン。よりによってせっかく見るのに唯一の変則ヴァージョンでなくてもいいのに、とも思うが、この回の上演しか、スケジュールが合わなかったのだからしかたない。でも、結果的にはこのヴァージョンが見れて得した気分だ。  2人に当て書きした台本を入れ変え . . . 本文を読む
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奥泉光『地の鳥 天の魚群』

2011-12-27 17:31:46 | その他
 夢を視ない(この作者は頑なに「見ない」ではなく、「視ない」の表記を使う)男が、不思議な夢を見ることから始まる現実とも、幻想ともいえるドラマ。主人公は石脇氏。(この作者は、頑なに主人公に「氏」をつけて表記する)この「頑なさ」がこの小説を形作る。そんな彼が絶望という名の夢を見る。Kという男が、そう告げる。Kはただの隣人だ。だが、息子の失踪に係わる。  妻と2人の子供たちによる4人暮らし。どこにでも . . . 本文を読む
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2011年劇場公開映画ベストテン (「キネマ旬報大阪読者の会」用)

2011-12-27 16:49:48 | 映画
 年末恒例のベストテンのシーズンがやってきた。キネマ旬報大阪読者の会によるベストテンのための順位をつけて見た。リストによると、2010年12月から2011年11月までの1年間に大阪で劇場公開された外国映画は406本。日本映画は370本もある。(映画祭上映は除く)もちろん東京に較べたならこれでも少ないのだろうが、膨大な量である。しかも、その大多数は大ヒット作の陰に隠れて、ミニシアターで人知れず公開さ . . . 本文を読む
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鞦韆舘 presents 短編舞台 vol.1 「劇女系」

2011-12-25 18:19:40 | 演劇
 若い女性たちの3つの集団の短編作品をまとめて上演する企画。僕が見た回は招待作品である空間悠々劇的を除く3プロが並ぶバージョン。「女に生まれただけで劇的!」というキャッチコピーそのままの刺激的な作品が並んでいる。  参加作品は以下の通り。   A:劇団遊人  「Womb→Tomb」(作・演出 なまいきなこ 出演 あべ川つまる/Meina/まんご)   B:Coquecal 「青空と雪と三日月 . . . 本文を読む
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