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映画・演劇のレビュー

『運命は踊る』

2020-05-24 09:14:33 | 映画
このタイトルはわからないではないけれど、ちょっとアバウトすぎて(同時に大仰すぎて)反対にインパクトに欠ける。この静かで衝撃的な傑作にふさわしくはない。もっとさりげないタイトルでなくては、このすさまじい映画の魅力は伝わらない。これでは、なかなか手に取り、見たいとは思わさない。 先日見たハンガリー映画『心と体と』(このタイトルもなんだかなぁ、だ。あまりにストレートすぎて、この微妙な映画の内容が伝わら . . . 本文を読む
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エイチエムピー・シアターカンパニー 『ブカブカジョーシブカジョーシ』

2020-05-23 22:01:07 | 演劇
こんな形でこの作品を見ることになるとは、思いもしなかった。ただのネット配信での上演というのではなく、ここに新しい形での演劇の在り方を提示する。この「仮想劇場ウンングフィールド」という空間は、僕には想像を絶する劇場だった。 5人の役者たちがそれぞれ別々の空間で演技し、それを誰もいないウイングフィールドという劇場に連れてきてその映像を重ね合わせる。しかも、演じる役者たちは影法師となりそこに存在する。 . . . 本文を読む
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『アンダーテイカー  葬る男と4つの事件』

2020-05-22 21:46:02 | 映画
原題は『Powder Blue』。それがこんな邦題になってしまった。DVDスルーの作品だけど、これはなかなかの拾いものだった。4人のお話を並行させながら、それがどこかで重なり合い、すれ違い、やがて、ひとつの結末を迎える。もっと何かがあるのかと期待させるけど、なんだか肩透かしを食らう、だから、つまらない、という人もいるだろう。だけど、期待させといて、たわいないラストをしゃぁしゃぁと見せるというのは、 . . . 本文を読む
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『男はつらいよ 奮闘篇』

2020-05-17 12:06:12 | 映画
毎週土曜日の夕方、BSで寅さんを見ている。コロナの影響で家にいることが多いからこんな時間でも大丈夫なのだ。デジタルリマスター版の映像は見事で、こんなにきれいな画像で『男はつらいよ』を毎週見ることができるだなんて、幸せだ。この3月に『みんなの寅さん』を同じように毎日読んでいたのと並行して、これを毎週見るというのもなんだか運命みたいで、この7作目まで欠かさず見てきた。 今回ここまでを再見して、第1作 . . . 本文を読む
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窪美澄『たおやかに輪をえがいて』

2020-05-17 11:01:56 | その他
「家族に疲れた」というコピーが目を惹く。50代に入ったばかりの主婦が主人公だ。20歳になった娘はもう親の手を離れようとしている。仕事ばかりの夫は、彼女にかまわない。でも、何があるというわけではない。平穏な日常生活の繰り返しだ。今までもそうだったし、今だってかわらない。だけど、なんとなく憂鬱。そんな憂鬱と向き合い、彼女の心の動きを静かに描く。 これを読みながら、なぜだか、山田太一の傑作『岸辺のアル . . . 本文を読む
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『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』

2020-05-17 09:48:23 | 映画
生真面目な郵便配達夫が主人公だ。無口で、不愛想。淡々と仕事をこなす。妻に死なれて、幼い息子を手放す。ひとりになる。でも、感情を表に出すことなく、今まで通りに黙々と仕事をこなして日々を過ごす。新しい出逢いがある。そんな彼のことを好ましいと思い、偏屈な彼を理解してくれる女性と出逢い再婚する。やがて娘も生まれる。だけど、彼はそんな幸せな日々に怯えている。以前のような哀しみ、不幸がまた起こることを恐れたの . . . 本文を読む
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『心と体と』

2020-05-15 21:55:16 | 映画
なんとも不思議な映画である。『私の20世紀』でデビューしたイルディコー・エニェディ監督による18年ぶりの待望の新作(ようやくの第2作だ!)は、同じ時に同じ夢を見る男女の恋愛物語。夢の中でつがいの鹿となって交流するふたりの男と女。静かな映画だ。ほとんど会話もない。音楽もほとんどない。ふつうに会話はあるし、話もあるけど、それ以外は無音に近い状態で2時間は終始する。 ふたりが初めて体を合わせるクライマ . . . 本文を読む
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『毒戦 BELIEVER』

2020-05-12 21:36:38 | 映画
GW、山盛り見逃していた韓国映画をみた(12本レンタルした)けど、見逃すのにはそれなりの理由があるな、と実感した。そこで今回は1番見たい新作をレンタルしてきた。これはその中の1本だ。ジョニー・トーの香港映画を韓国でリメイクした作品なのだが、オリジナルとはまるで違う作品になっているらしい。(うちの嫁が以前どこかの映画祭で見たけど、こんな映画じゃなかった、という証言あり)これは文句なしの絶品である。 . . . 本文を読む
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『ボーイフレンド』②

2020-05-12 21:10:13 | 映画
全16話、最後まで見た。後半はこの先どうなるのか、気になり、ついつい加速した。ただ終盤の展開は少し、お話が大きくなりすぎて、この手の「恋愛もの」なのに何だかやり過ぎ、という気もする。政界の話とか、スキャンダルとかいう部分はいらない。最後の父親の拘留とか、である。まるでいらない。もっとノーテンキな終わらせ方でよかったのではないか。 これはボーイ・ミーツ・ガールの小さな世界のお話で充分なのだ。生きる . . . 本文を読む
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佐々部清  『この道』

2020-05-12 20:57:11 | 映画
たまたまこの作品が彼の遺作となってしまった。偶然とはいえ、このタイトルである。そこに何らかの運命のようなものすら感じる。62歳。これからまだまだ映画を撮れたはずだ。亡くなる前日も新作の準備で打ち合わせをされていたらしい。こんなはずじゃなかったのだ。 2002年に『陽はまた昇る』でデビューした。あの映画は素晴らしかった。新人監督の作品とは思えない完成度、だけど、新人らしい初々しさ。VHSを作った男 . . . 本文を読む
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『貞子』

2020-05-06 11:15:26 | 映画
コロナの影響で映画館が閉まる直前に見た1作がたまたま中田秀夫監督の最新作だった。もちろん、その瞬間はその映画が劇場で見る最後から2本目の映画になるなんて夢にも思わなかったので、ほんとうにたまたまそうなっただけだ。その後4月2日にもう一本見たが(『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』)それだってそれが最後になるなんて思いもしなかった。まぁ、今後二度と映画を映画館では見られないわけではないから、こういう書 . . . 本文を読む
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『バースデー・ワンダーランド』

2020-05-06 10:26:01 | 映画
原恵一の最新作なので、ぜひ見たいと思っていた。昨年のGWに公開されたのだが、まるで興行は振るわず、すぐに打ち切られた不遇の1作である。なぜ、そんなことになったのかは、明白だ。映画があまりに中途半端すぎた。これでは誰をターゲットにしたのか、わからない。たぶん誰もが楽しめるエンタテインメントを目指したのかもしれないが、それが映画をつまらなくした。妥協なんかしないで、もっと心のままに撮れなかったのかと悔 . . . 本文を読む
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はらだみずき『波に乗る』

2020-05-05 12:49:50 | その他
GW中にはこの1冊しか読んでいない。読書は通勤の往復の時間にするものだから、家にずっといたならば、読書はできないからだ。しかも、図書館が閉まっているから、新しい本は手元にはない。いろんな意味で苦しい毎日である。 突然、父が死にその遺体をひとりで引き取りに行く。両親は離婚し彼は父育てられた。彼の幼いころ両親は離婚しており、大学進学後は東京で下宿暮らし、父とは疎遠になっていた。大学卒業して1か月。仕 . . . 本文を読む
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『無頼漢 渇いた罪』

2020-05-04 11:22:30 | 映画
韓国映画12本立が終了した。その最後の1本がこの作品だ。12本選ぶ基準は、当然見ていない映画で、その中から、バラエティに富んだ選出を心掛けた。2010年代の映画を中心にした。今回はこの10年の韓国映画のおさらいを目指した。 すでに感想を簡単に書いた5本以外は、僕には残念な作品ばかりだ。特に恋愛もの代表として選んだ2作品。(恋愛映画のめぼしいものをほとんど見終えているから仕方ないことだろうけど、) . . . 本文を読む
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新国立劇場「ことぜん」シリーズ 『タージマハルの衛兵』

2020-05-04 10:16:02 | 演劇
たまたまつけていたTVで見た。NHKの舞台中継なのだが、衝撃的な傑作で、最後まで目が離せなかった。劇場で生で見たなら、その衝撃はこの比ではなかろう。ただ、何の期待もなく、何も予備知識もなく、この作品と出会えたのは幸運だった。演出の小川絵梨子さんは国立の芸術監督で、本公演もこの空間の特徴を知り尽くした彼女の大胆な演出が光る。 闇の中にたたずむふたりの衛兵(成河、亀田佳明)。彼らの背後には壮大なター . . . 本文を読む
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