習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『キラー・ヴァージン・ロード』

2009-09-27 17:55:48 | 映画
 あまり評判がよくないし、全然期待もしないで見たのだが、正直言って最初はこけそうになった。こりゃぁなんじゃぁ、と思う。下手糞なミュージカルもどきで、歌うし踊る。でも、それがなんかサマになってないし、なんかダサいです。(今時「ダサい」なんて誰も言わんなぁ)このままずっと行くんならいやだなぁ、と思ったが、さすがにダサ・ミュージカルは治まって、普通のバカコメディーになり、ほっとする。  上野樹里はまる . . . 本文を読む
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『リミッツ・オブ・コントロール』

2009-09-26 20:42:00 | 映画
 大好きだったジム・ジャームッシュの久々の新作である。これを見ないわけにはいかない。だが、前作『ブロークン・フラワーズ』同様なんとも気の抜けた映画で、やはり彼はもう過去の人なのか、と思うしかない。あれほど僕たちを興奮させたそっけないスタイルが形骸化し、空虚なだけだ。これには驚くしかない。時代が変わったのに、彼ひとりが変わらないからなのか。でも、そんな頑固さが魅力になることも可能だろうが、そうはいか . . . 本文を読む
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May『ボクサー』

2009-09-26 09:36:41 | 演劇
 これを作るにあたっての覚悟。それは並大抵のものではあるまい。大阪での前作『チャンソ』を見たとき、とうとう彼はここまで自由に自分を語れるようになったのか、と感動した。金哲義さんがこれを描くための助走は終わったのだ。時機はきた。だから、彼はこれに挑む。  もちろん簡単なことではない。生半可なことでは描けない。そんなこと、彼自身が十二分に理解している。前作が井筒和幸『パッチギ』と比較しても負けてない . . . 本文を読む
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劇団態変『ファン・ウンド潜伏記』

2009-09-26 09:08:46 | 演劇
 余談だが、僕がこの芝居を見た日の観客に、とあるひとりの老人がいた。彼は初めて何も知らずに友人に誘われるままこの態変の公演を見に来たようだ。そして、あまりの強烈さに耐えきれず、劇場を中座したらしい。彼の混乱ぶりから、改めて身体障害者による表現は演劇にとって武器でもあるが、観客にとっての凶器にもなるということを思い知らされる。  途中の休憩時間に戻ってきた彼は、舞台監督の塚本さんを捕まえて「痛まし . . . 本文を読む
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心震える魂の2作<劇団態変『ファン・ウンド潜伏記』、May『ボクサー』>

2009-09-26 07:56:58 | 演劇
 今週は在日朝鮮人作家による2作品が上演されている。この2本は偶然だろうが、いずれも自分の父親世代の歴史を背景にした大河ドラマである。朝鮮、そして日本を舞台にして自分たちの生きる権利を勝ち取るための壮絶な闘いが描かれていく。それはイデオロギーを描くメッセージ色の濃厚なプロパガンタなんかではない。これは日本人だとか、朝鮮人だとかいう垣根を超えて、人間として生きていくための闘争だ。  態変はそれを自 . . . 本文を読む
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四方田犬彦『怪奇映画天国アジア』

2009-09-23 20:01:53 | その他
 インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール等々、これら東南アジア諸国で作られた怪奇映画の数々。四方田犬彦が、これらの国にはなぜこの手の映画が多いのかに興味を抱き、その謎を解き明かす渾身の一作。一種のゲテモノ映画でしかないはずのものに光を当て、そこからこれらの国の人たちのメンタリティーに迫る。本書は、彼らが支持したホラー映画の根底にあるものを掘り起こしていく貴重な記録だ。そして、それはなぜか感動 . . . 本文を読む
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『一年之初』

2009-09-23 19:00:13 | 映画
 チェン・ヨウチェ(鄭有傑)監督の長編映画デビュー作。偶然だが、この10月から東京では劇場公開もされるらしい。台湾土産でうちの嫁さんが買ってきたDVDを時間を見つけてずっと見てきたが 、実におもしろい映画ばかりで、あと少しで終わるのが残念だ。ここ1,2年に台湾で公開された映画で日本では未公開映画ばかりをリストアップして購入してきたのだが、けっこうどんどん日本でも公開されていくのに驚く。この見知らぬ . . . 本文を読む
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『レボリューショナリー・ロード  燃え尽きるまで』

2009-09-22 22:51:21 | 映画
 サム・メンデスが自身の妻、ケイト・ウインスレット主演で送る破滅的な夫婦の物語。どこかのインタビューでサムがケイトが主演した『リトル・チルドレン』をこき下ろしているのを読んだ。そこには「自分ならあんな映画にはしない」なんて書いてあった。あんなにも凄い傑作をそこまで言うか、と思ったので記憶に残っていた。ずっrと気になっていたのだがようやくこの映画が見れて嬉しい。  彼がこの映画で同じようなテーマを . . . 本文を読む
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『対不起,我愛ニイ』

2009-09-21 18:59:16 | 映画
 『海角7号』の田中千絵主演『すみません、LOVE(対不起,我愛你)』は2009年1月9日に台湾で公開されたらしい。監督は『ウエストゲート№6(六号出口)』や『ジャンプ!ボーイズ』の林育賢(リン・ユゥシェン)75分の中編映画だ。田中千絵は彼女自身を演じる。なんとも不思議な映画だ。これを映画と呼ぶのはなんだかはばかられる。だが、こういうのもありかもしれない。それにしてもちゃんと劇場で公 . . . 本文を読む
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『禅 ZEN』

2009-09-21 18:22:24 | 映画
 ただひたすら座禅を組むだけの映画だ。こんなことだけで2時間強の時代劇大作を成立させていいのだろうか、と不安にさせられる。一応これは娯楽映画だよね。角川映画で一般の劇場で公開もされてるし。  なのに、今見てきたこの映画はたいした見せ場もなく、ひたすら座禅。だいたい最初の30分ほどが、中国のシーンなのだが、みんな中国語をしゃべってるのだ。それって当たり前の話だが、今までのこの手の日本映画の歴史大作 . . . 本文を読む
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コメディユニット磯川家『ティーチャー!!』

2009-09-20 23:11:27 | 演劇
 「これ、むちゃくちゃやわ」と思う。こんなアホな学校はないし、まぁ、そんなことは十分わかった上で作ってるのだが、それにしてもバカすぎ。普通ならあきれて見てられないところなのだが、なぜかこの世界に嵌まってしまう。作、演出の保木本真也さんは確信犯なんで、こういうシチュエーションを使ってどれくらい笑わせれるのかを、狙う。ここにはリアリティーとかあまり関係ない。前回の「葬式」もそうだった。あのシチュエーシ . . . 本文を読む
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『カムイ外伝』

2009-09-20 22:18:19 | 映画
 崔洋一監督渾身の一作。巨大な製作費を注ぎ込み、さまざまな悪条件に見舞われ、ようやく完成にこぎつけた。待ちに待った超大作時代劇巨編。日本映画最大規模と予告編では豪語していたが、それだけのスペクタクルなのに、話は超地味で、しかも、島に籠って漁業に従事する『カムイの休日』って感じの話になっている。ド派手なアクションではない。  もちろん派手なアクションシーンが皆無だ、なんていうのではない。それどころ . . . 本文を読む
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女性芸術劇場『雑草ワルツ』

2009-09-19 20:51:10 | 演劇
 虚空旅団の高橋恵さんの脚本を空晴の岡部尚子さんの演出で送る作品。「女性たちに捧げる現代演劇」だなんて、それだけでもけっこうなプレッシャーになったのではないか。多分にメッセージ色のきつい企画だが、それを高橋さんは枷とするのではなく、反対に創作の力にし、いつもの作品とは一味も二味も違うものとして提示した。それを岡部さんは気負うことなく自分のペースで、軽やかに演出する。2人のコンビネーションがうまく機 . . . 本文を読む
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『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』

2009-09-19 20:08:34 | 映画
 移民の問題を扱った映画は今までもたくさんあったが、こんなにも本格的に、あらゆる側面から多面的にメスをいれた映画はなかった。本腰を入れてアメリカがこの問題と向き合う大作だ。こういう映画が見たかった。しかもマイナーシーンからの発信ではなく、ハリウッドの大作映画として取り組んだということを高く評価したい。  この国が移民をいかに受け入れ、あるいは拒絶したのか。メキシコからの越境者や南米からだけではな . . . 本文を読む
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浪花グランドロマン『ラプソディ』

2009-09-18 22:13:59 | 演劇
 休憩10分を挟んで2部構成、2時間40分の長編である。浪花グランドロマン(NGR)の第30回公演。記念すべき節目に当たる作品である。気合が入らないはずがない。  戦国の世を背景にした時代劇大作だ。ミツヒデ(関角直子)を主人公にして、彼の想いが全編を貫く作品となっている。ミツヒデの想いは彼の肉体が滅んでも、彼によって比叡山を焼き討ちされたテンカイ(めり)へと引き継がれていく。開かれた国作りを目指 . . . 本文を読む
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