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映画・演劇のレビュー

第2劇場『なべちち』

2010-01-31 21:02:02 | 演劇
 このいいかげんさには感心させられる。2劇の芝居にはテーマとか、メッセージとか、そんな大層なものはない。ただ状況を楽しむばかりだ。もちろん観客が、ではなく、自分たちが、である。彼らはこう考える。自分たちが楽しかったなら、きっと観客もまた同じように楽しいだろう、と。なんてノーテンキな人たちだろうか。  この芝居を通して描きたかったことなんかない。ただ、鍋をしたかった。劇場で鍋を囲んだ芝居を作る。そ . . . 本文を読む
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演劇集団よろずや『油小路の八人』

2010-01-31 20:29:46 | 演劇
 作、演出の寺田夢酔さんはこれを「幕末アクションホラー活劇」と呼ぶ。だが、よろずやである。ただのエンタメを目指したわけではない。どちらかというと、これは『オーマイリョーマ』の流れを汲む作品だ。まぁ、時代背景が同じだから、というのがその理由で、ジャンルとしてはコメディーとアクションと、まるで違うではないか、と言われそうだが、寺田さんの目指すものは共通している。単なるアクションではなく、どちらも幕末を . . . 本文を読む
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東直子『らいほうさんの場所』

2010-01-31 20:02:39 | その他
 読み終えてなんだか嫌な気分にさせられます。救いようのない。小説としては実に上手いとは思うけど、自分から進んでわざわざこんな気分にさせられるのは嫌です。(と、いきなり、こんなタッチで描きだしてしまった!なんだかわからんが丁寧体で書いてしまったのだ。)  この後味の悪さは、生きていくことの痛みなのか。3人だけの家族。姉と、妹。そして、弟。彼らは両親が死んで居なくなった家で、今もずっと暮らしている。 . . . 本文を読む
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売込隊ビーム(若手公演)『マーチ!』

2010-01-31 10:03:44 | 演劇
 これは少し前の横山さんの作品を、若手で再演した作品だ。そうそうこんな感じだった。こういう作品が多くなってきて、僕は売込隊ビームの芝居を見なくなった。  だが、ここ数本の横山作品はすばらしい。彼は『エダニク』以降発表した芝居はきっとそれ以前の作品とはまるで違うものになっているのではないか。僕が見ていない空白の期間は想像するしかないのだが、この作品を見て、なんとなくその空白の想像がつく気がした。( . . . 本文を読む
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baghdad cafe 『ワタシ末試験 追試』

2010-01-31 08:55:36 | 演劇
 追試の課題はどれだけスピード感のある作品に仕立てなおすことが可能か。その1点に尽きる。だが、それはなかなか簡単なことではない。どうしても饒舌になるし、説明だけではなく情報量自体が多いこの作品を、必要最小限のエピソードだけにして、再編集するには時間がない。初演から7ヵ月である。前回は7月の頭で高校なら1学期末試験の最中だったが、今回はちょうど3年生の学期末試験の時期である。主人公のイチコ(一瀬尚代 . . . 本文を読む
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平田俊子『私の赤くて柔らかな部分』

2010-01-31 08:54:10 | その他
 なんだかいやらしそうなタイトルの本だね、と職員室の隣の席の先生から言われる。机の上にこの本を置いたまま授業に行っていた。なんだか、顔が赤くなる。そんな本ではないのですけど、と言い訳するのも変なので、へへへ、とやり過ごす。この必要以上に赤い本は、そのなんだか意味深なタイトルも含めて、要らぬ想像まで逞しくさせる。  一瞬で読み終えてしまえる。あっけないくらいに、早かった。朝の電車から、読み始めて、 . . . 本文を読む
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『心霊之歌』

2010-01-31 08:32:05 | 映画
 とても単純な映画だけど、その素朴さがしっかり伝わってきて、気持ちのいい映画だ。台湾の数ある少数民族のひとつの、とある村を訪れて、彼らの歌を採集してくるひとりの青年と、その村の小学校の先生の物語である。(舞台となる場所は台中のブヌン族の村らしい)  ストーリーの骨格はチェン・カイコーのデビュー作『黄色い大地』と似ているけど、こちらはとても甘くて、緩いタッチの青春映画になっていて、どちらかというと . . . 本文を読む
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『インビクタス 負けざる者たち』

2010-01-28 22:04:16 | 映画
 このサブタイトルは頂けない。せめて『敗れざる者たち』にして欲しかった。だが、それってやはり沢木耕太郎を連想せざる得ないから、ちょっとまずいし。まら、もうサブタイトルなんかいらない、と強く出ることもできないのは、この映画のセールス上の弱さだろう。いくらイーストウッドの新作だからといえ、興行上の弱さは否めない。彼のネームバリューだけでは、映画はヒットしない。しかもなんだか彼らしくない題材だし。という . . . 本文を読む
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三崎亜記『刻まれない明日』

2010-01-27 20:58:15 | その他
 これは『失われた町』の続編である。三崎亜記はよほどこの設定が気に入ったらしい。彼は現実の世界を舞台にしない。見た目はよく似てるけど彼が書く世界は、いつもなんだか微妙にねじれている。ここに描かれる町は、世界から消えた町を含む。ぽっかりと穴が開いたように、ある部分が失われた。ありえないことが、ここでは起きた。だれもが、そんなことを現実とは思いたくはない。だが、現実にそれは起きたのだ。仕方ないことだ。 . . . 本文を読む
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『リテイク・シックスティーン』(後編)

2010-01-27 20:16:41 | その他
 最後まで読み終えて、結局、何の説明もしなかったんだな、と気付く。きっとしないだろうな、と薄々気が付いていたが、思った通りでほっとした。スキー合宿のところでそんな予感はしたけど、その潔さに、痺れる。これでなくては、ダメなのだ。SFではないのだから、理由なんかいらない。事実だけがそこにあればよい。  孝子は12年後の世界からやってきて、もう一度15,16歳という時間をやり直す。高校1年の最初から始 . . . 本文を読む
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『デトロイト・メタル・シティ』

2010-01-25 21:29:35 | 映画
 久々にTVで映画を見た。一昨年の夏公開されたこの映画は、劇場では見る気がしなかった。ましてやDVDをレンタルしてくる気もなかった。でも、タダで見れるのなら、まぁ見てもいいかなと思い、1年振りくらいで、TVで映画を見ることとなった。この映画なら、途中でCMが入っても別に気にならない。106分なので、ほぼノーカット放送だろう。TV特別編と宣伝されていたが、どこがどう違うのか。そこはなんだか気になるが . . . 本文を読む
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豊島ミホ『リテイク・シックスティーン』(前編)

2010-01-25 20:20:04 | その他
 豊島ミホの最後の大長編小説。この作品の後、彼女はしばらく休養を取るらしい。断筆するのかもしれない。まぁ、あまりに全力で頑張り過ぎたから、疲れてしまったのだろう。彼女の本格長編というのももしかしたらこれが初めてではないか。当然のことながら、かなり気合が入っている。  27歳の何をやってもダメな女性が、もう一度高校時代をやり直すためにタイムスリップして12年前にやってくる、という夢のようなお話。主 . . . 本文を読む
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ミジンコターボ『ダメダメサーカス』

2010-01-23 19:54:11 | 演劇
 こういうエンタメ芝居がずっと見たかった。だけど、それはなかなか叶わない夢だった。ストーリーのおもしろさと、作り手の熱いハートが上手く合致し、その上で確かな技術を備えた芝居を作ることは、出来そうでなかなか出来ない。上手い役者を集めて、優秀なスタッフを集めたからといって出来るものではない。一番大事のことは、その作品を通して観客に何を伝えるか、である。そして、それをきちんと観客の胸に手渡すことができる . . . 本文を読む
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飛鳥井千砂『サムシングブルー』

2010-01-23 19:33:12 | その他
 期待したほどにはおもしろくない。この作者は『はるがいったら』1作で自分の持てる力のすべてを出し切ってしまったのかもしれない。それくらいにあの作品は素晴らしかった。ただ、あんなふうな作品はそうそう何作もは書けないだろう。力をセーブして書く、だなんて新人に出来るはずはないし、そんなことは無意味だ。遣り尽くした後に残るのは何だろう。今回の作品はその残滓でしかない。そういう意味では『アシンメトリー』もそ . . . 本文を読む
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『ゴールデンスランバー』

2010-01-23 07:57:09 | 映画
 このお話は明らかにおかしい。リアリティーがない。だいたい日本の警察はあんなにも簡単に発砲出来ないはずだ。しかも、総理暗殺事件の謎にはまるで迫らない。この映画にとってそこはただのきっかけでしかない。でも、それってかなり大事な部分ではないか。これって大事件ではないか、と思うのですが、いいんですか?  だいたい彼は誰にはめられたのか、まるで描かれない。まぁ、彼の立場だけから世界を描こうとするのがこの . . . 本文を読む
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