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映画・演劇のレビュー

『今日から俺は!! 劇場版』

2020-07-30 23:23:06 | 映画
鹿島勤監督の『今日から俺は!!』という映画をご存じだろうか。『ビーバップハイスクール』が受けたから徒花として、企画された。そして、本家とは違う笑いを提示した。あの映画はそんな秀作だった。きっと今の若い世代は知るはずもない。公開当時もまるで顧みられることはなかった映画だけど、実に面白い映画だった。プログラムピクチャーだからこそ、出来るささやかな輝きを呈した。(鹿島監督のこの映画はVシネマとして作られ . . . 本文を読む
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『ステップ』

2020-07-30 23:17:43 | 映画
重松清の小説の映画化。若い父親が、妻を失い、たったひとりで幼い娘を育てる10年間の軌跡を追う。子育て映画。山田孝之がこのどこにでもいそうな普通の男を演じる。力むことなく、とても自然に子育てと向き合う。近年エキセントリックな芝居が多かった彼がこんなふうに普通の人を、普通に見せる姿はなんだか新鮮だった。力みがないから、嘘くさくない。山田孝之じゃないみたい。 娘を演じた3人の子役もとてもいい。特に2人 . . . 本文を読む
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『はちどり』

2020-07-30 23:10:42 | 映画
この夏いちばん見たかった映画を見たのだけど、なんだか思っていたような映画ではなくて、戸惑う。でも、それってこの映画のせいなんかではなく,僕の勝手な思い込みのせいだ。だから、自分が悪い。甘いノスタルジックな懐古趣味のドラマを期待したわけではないけど、この厳しさは今の弱り切った僕にはキツい。 この映画の直前に飯塚健監督の『ステップ』を見た。これもいい映画だった。たまたまこの2本を連続で見たのだけど、 . . . 本文を読む
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『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』

2020-07-22 21:47:36 | 映画
ウディ・アレンの最新作は、久々にニューヨークを舞台にした街歩きの映画だ。僕の一番好きな彼の作品『ミッドナイト・イン・パリ』の姉妹編のような作品になっている。たった92分の至福。とても楽しくて、心地よい時間だった。若い恋人たちが過ごす2日間の甘い休日だったはずの時間。なのに、ふたりは別々に行動することになる。彼らが過ごしたすれ違いのそれぞれの時間が描かれる。 甘いラブストーリーではないけど、映画は . . . 本文を読む
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『劇場』

2020-07-22 20:57:08 | 映画
4月公開予定だったこの作品がようやく劇場公開された。松竹系で全国200あまりの劇場での拡大公開だったはずなのに、配給は吉本興業に移り、20館のミニシアターでひっそりと公開される。大阪はシネ・ヌーヴォーで17日から2週間、1日2回上映だ。客席80ほどの劇場なので、今は定員は40ほどか。満席になっても、とてもじゃないけど、ヒットとは言えない。それでも、ネット配信だけではなく、ちゃんと劇場公開されたこと . . . 本文を読む
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エイチエムピー・シアターカンパニー『死者ノ書』

2020-07-22 20:01:13 | 演劇
5月の配信による公演(大竹野正典・作『ブカブカジョーシブカジョーシ』)からまだ2か月も経たないというのに、もう新作を発表するエイチエムピー・シアターカンパニーである。しかも今回はリモートと劇場のコラボによる公演に挑戦するのだ。笠井さんたちは常に新しい表現に果敢に取り組む。 さて、今回は折口信夫の『死者ノ書』である。こんな題材を取り上げるというだけでも十分刺激的なのに、それを前作に引き続き、今回も . . . 本文を読む
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『一度も撃ってません』

2020-07-19 21:02:06 | 映画
この映画は一体何なんだ、と突っ込みを入れたくなる。ハードボイルド・コメディってもう何が何だかわけがわかりません。でも、そのわけのわからない不思議な世界がこの作品の魅力なのだろう。これはひとりの老人の見た妄想、かもしれない。70年安保の時代から50年が過ぎて、若者だった彼らはもう70代の老人になった。あの頃、何を思い、何を感じ生きたかなんてもう忘れた。いや、まだあの頃を引きずっているのかもしれない。 . . . 本文を読む
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劇団すかんぽ長屋『深川生首橋』

2020-07-19 17:47:45 | 演劇
実に4か月振りになる本格的「小劇場演劇」観劇である。コロナ下での上演中止に最後まで抵抗して、上演した前作から4か月、予定通りのスケジュールで今回の公演を強行した神原さんたちの覚悟のほどが伝わってくる作品だ。だけどそこには悲愴感はない。それどころか、まるでいつも通りで変わりない。あっぱれだ。この状況であろうとも、(どんな状況であろうとも)変わることのない「いつもの自分たち」を、お客さんに届ける。舞台 . . . 本文を読む
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高瀬隼子『犬のかたちをしているもの』

2020-07-18 11:02:01 | その他
不思議な小説だ。これだけではなく、最近読む本はいずれもそんな感触の作品が多い。自分の趣味の問題なのかもしれないけど、いずれも、たまたま図書館の新刊コーナーで手に取った作品で、必ずしも、自分の趣味ではない。 セックスレスのふたり。まだ20代のカップルなのだが。最初はそうではなかったけど、数か月でそういうふうになる。卵巣の病気も原因か。男の子は優しい。女の子は今までも誰と付き合ってもそういうふうにな . . . 本文を読む
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『幸福都市』

2020-07-15 22:47:56 | 映画
最近、ほぼ毎日1本ずつ、Netflixで映画を見ている。あまりにいろんな映画やドラマがありすぎて、困る。あまり、考えないで選ぶ。最初はピンポイントで攻めていたけど、だんだんもうどうでもよくなってきた。あまりにいろんなものがありすぎるって、なんか、たいへんだ。 さて、この映画である。これは時間が遡る映画だ。不思議な感触の映画だ、3つの話は遡行する。最初は近未来の台湾から始まる。ここで描かれるのは、 . . . 本文を読む
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あみゅーずとらいあんぐる『☆TRYすこしずつ☆』

2020-07-12 21:45:32 | 演劇
なんと3か月ぶりの劇場である。もう芝居を見ていたことを忘れてしまうくらいに、長い空白になった。最近、見る本数が減ってきたとはいえ、月に10本は見ていたのだ。こんなにも長い期間見ないで生きるなんてことはこの40年くらいなかった。 そして、ようやく劇場に戻れた。もうそれだけでうれしい。あみゅーずがその先陣を切ってくれた。1日限りの公演で、ワンステージ20名限定。3回公演。上演時間は1時間。途中休憩5 . . . 本文を読む
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『日本沈没 2020』

2020-07-12 20:18:24 | 映画
湯浅政明監督の最新作。3時間の大作だ。小松左京の小説を原案にしたオリジナルである。原作からの流用は日本が沈むというところだけ。小説の主人公である田所博士と小野寺は一応は登場するけど、主人公はある家族。彼ら4人のサバイバルが描かれる。ピンポイントで、日本沈没の風景が描かれる。全体像は一切見えないまま。何が起こったかもわからないし、どうしたらいいのかもわからない。政府の対応とか、世の中の動向とか、まる . . . 本文を読む
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『のぼる小寺さん』

2020-07-11 20:50:49 | 映画
小寺さんはただただ登るだけ。ボルダリングに打ち込む彼女を、映画はただただ見守るだけ。彼女がなぜここまで登ることに囚われるのか、説明は一切ない。そんな彼女の姿から目が離せなくなるのは、同じように体育館でクラブ活動をしている卓球部の男の子、近藤だ。彼は彼女を目で追う。恋心ではない。ただただ彼女の姿が気になるのだ。登る姿が、である。登る彼女から目が離せない。ストーカーではないから、彼女に終始付きまとい、 . . . 本文を読む
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『マザー』

2020-07-11 20:05:18 | 映画
こんなにも嫌な母親なのに、子供たちは彼女を慕う。映画を見ながらどんどん気分が滅入っていく。こんな嫌な映画を見てしまった自分を恨むしかない。見るのをやめようか、と思うくらいに嫌な話なのだ。でも、スクリーンに釘付けされる。一瞬も目が離せない。彼らの人生に付き合ううちに際限なく見ている僕たちも落ち込むことになる。ここには未来はない。ただ落ちていくだけ。しかも、それを何とかして食い止めようともしない。こん . . . 本文を読む
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