ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

下坂幸三・飯田眞編『家族療法ケース研究5・うつ病』1993・金剛出版-ていねいな家族療法に学ぶ

2024年03月02日 | 心理療法に学ぶ

 2020年3月のブログです

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 下坂幸三さんと飯田眞さん編集の『家族療法ケース研究5・うつ病』(1993・金剛出版)を久しぶりに読みました。 

 家族療法学会にはしばらく顔を出していませんので、なんとなく疎遠になった感じですが、しかし、実はじーじの面接は、50歳前後のしばらくの間、家族療法の勉強の中で鍛えられた感じがします。

 面接の逐語録をそのまま報告書に書いて、調停委員さんには評判が良かったのですが、裁判官からは、もう少し短く書いてくださいね、と注文をつけられたりしました(裁判官さん、ごめんなさい)。

 その後は、精神分析的な面接が中心になっていますが、母子面接などの家族面接も大切だと考えていて、その重要さは変わりません。

 今回、うつ病の家族療法を再読して、懐かしさとともに、新たに考えるところが多々ありました。

 例によって、印象に残ったところを一つ、二つ。

 一つめは、後藤雅博さんの、うつ病患者さんの家族合同面接。

 後藤さんは新潟の家族療法の第一人者で、裁判所の研修にもたびたび講師で来ていただいて、勉強させていただきました。

 この論文では、うつ病の夫と妻の合同面接を逐語録も提示されてていねいに検討されていて、とても参考になります。

 特に、リフレーミング(再枠づけ)がうまいなあ、と感心させられました。

 二つめは、すっかり忘れていたのですが、大平健さんの「妄想を伴ったうつ病患者の一例」という論文。

 大平さんといえば、『診察室に来た赤ずきんちゃん』『やさしさの精神病理』などで有名ですが、家族療法の論文も書かれているのは意外な感じでした(一度読んでいるはずなのに、意外、もなにもないのですが…。大平さん、ごめんなさい)。

 例によって、大平さんのドラマのような症例報告で、堪能させられました。やはりすごいです。

 昔の本を、新刊本のように(?)新鮮な気持ちで読むことができて、とても贅沢な1週間でした。   (2020.3 記)

 

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八木義徳『北風の言葉』1980・北洋社-どさんこ作家の文学的自伝エッセイを読む

2024年03月02日 | 北海道を読む

 2020年3月のブログです

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 北海道室蘭市出身の作家八木義徳さんのエッセイ集『北風の言葉』(1980・北洋社)を久しぶりに読みました。

 だいぶ前に北海道の古本屋さんで買って読んだはずなのですが、中身をほとんど忘れていて、今回、本棚の隅に見つけたので手にしました。

 いい本です。

 文章が美しいというか、端正というか、読んでいて心地よくなる本です。

 北海道を旅した紀行文や随筆、そして、文学的自伝からなりますが、じーじはこの文学的自伝に圧倒されました。

 もともと、「北海道新聞」に1971年に連載されたものらしいですが、すごい迫力です(当時、じーじは高校生で旭川でうろうろしていたはずですが、当然、読んでいませんでした。八木さん、ごめんなさい)。

 室蘭時代の思い出、北大時代の文学への目覚め、左翼運動と転向、早稲田大学での同人誌修行、作家横光利一との出会いと師事、出征地での芥川賞受賞、戦後のどさんこ作家たちをはじめとする小説家たちとの交友、などなどが、端正な文章で描かれます。

 ひとりの真摯な男の生きざまがしっかりと描かれます。

 そして、過不足のない美しい文章は北海道の広々として美しい風景を思い出させるような感じがします。

 同じどさんことして、このぜいたくな感覚を共有できる喜びをとてもうれしく思いました。

 今後は八木さんのような端正な文章を書くことを目標にして頑張っていきたいなあ、と切に思いました。    (2020.3 記)

 

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