ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

神田橋條治『精神科講義』2012・創元社-患者さんを大切にする精神科医に学ぶ

2024年03月11日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2017年ころのブログです

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 神田橋條治さんの『精神科講義』(2012・創元社)を再読しました。

 神田橋さんは、じーじが若い頃、名著といわれている『精神科診断面接のコツ』(1984・岩崎学術出版社)や『精神療法面接のコツ』(1990・岩崎学術出版社)などという面接技法の本を読ませていただいて、心理療法の勉強をさせていただいたかたで、じーじにとっては、土居健郎さんや河合隼雄さんなどとともに重要な先生です。

 その神田橋先生の精神科医療についての本で、この本もじーじにとっては中井久夫さんの精神病についての何冊かの本と並んで大切な本です。

 今回がたぶん3回目の再読ではないかと思うのですが、アンダーラインでにぎやかなだけでなく、付箋があちこちにあって、本がだんだんと膨らんできてしまいました。

 それでも、今回、初めて気づいた箇所もあったりして、あいかわらず自分の読みの甘さを反省させられましたし、何回読んでもいい刺激になる大切な箇所もいっぱいあって、勉強になりました。

 今回、印象に残ったことのひとつは、他の大家もよく言われていることですが、心理療法において、わからないところをきくことの大切さ。

 すぐにわかった気にならないで、不思議なところ、よくわからないところをていねいにきくことの重要性を指摘されています。

 そして、共感というのは、わからないところをきいて、双方がわかるからこそ共感が生じる、と述べています。

 また、治療者が、ああでもない、こうでもない、といろいろきいているうちに、患者さんもそういうやりとりの中で気づきを得るからこそ、患者さん自身の気づきになる、ともおしゃっています。

 さらに、この時に、治療者の理解はできるだけがまんをして言わずにいて待つと、それが患者さんの気づきを得られやすくする、とも述べられています。

 このあたりは、治療者が事態を理解するだけでなく、患者さんも事態を理解できる道筋が示されていて、たいへん勉強になりました。

 他にも、相手を大切にすることが即自分を大切にすることになること、看護においては意見の統一より個性をいかすことが重要、パワーポイントの功罪と双方向の議論の大切さについて、などなど、勉強になることが多くありました。 

 なにより読んだ後にすがすがしい気分になれて、本当にいい本だと思います。

 いつかまた読んでみたいなと思いました。        (2017?記)

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 2024年3月の追記です

 今ごろ気がついたのですが、神田橋さんも、わからないことに耐えることの大切さ、を述べておられました。    (2024.3 記)

 

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山秋真『原発をつくらせない人びと-祝島から未来へ』2012・岩波新書-30年間、非暴力で闘う姿に学ぶ

2024年03月11日 | 随筆を読む

 2017年のブログです

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 山秋真さんの『原発をつくらせない人びと-祝島から未来へ』(2012・岩波新書)を読みました。

 すごい本です。

 2012年に出ていたこの本を今まで知らなかったのが恥ずかしいです。

 この本も旅先の旭川の本屋さんで見かけて買いました。

 旭川と原発、あまり関係はないようですが、なぜか、岩波新書のところにこの本が平積みになっていて、本の帯の「30年以上、<非暴力>であらがいつづけて」という文章にひかれて購入しました。

 同じく、本の帯には「うちら、海を汚さないように、ずっとお願いをしているですよ」とありますが、この本のテーマは、端的に言えば、お金をもらうか、自然を守るか、という問題につきます。

 山口県上関町の原発計画地域の漁民たちが、原発による海の汚染を心配して反対をし、そこに国や県や電力会社などが地域振興を理由に賛成に回り、反対派は厳しい状況になります。

 さまざまかけひきややりとりがあり、しかし、漁民たちは、原発で自然を破壊したら元には戻せない、ということを理由に団結し、国や電力会社と闘います。

 裁判所や海上保安庁も漁民の立場に立ってくれることはなく、厳しい闘いが1982年からずっと続きます。

 そうして、2011年3月11日、福島の事故があり、県の姿勢が変わり、なんとか一息をついたところで、本書は終わります。

 しかし、まだまだ、おそらく、安心はできません。

 国の姿勢は変わっていませんし、福島のあとの原発再稼働の動きも強いですし、裁判所の判断はまだまだ甘いです。

 また、じーじはこの本を読んで、辺野古の人たちに頑張ってほしい、とさらに強く思いました。

 非暴力で、手作りの反対運動、という点で、両者は非常に似ています。

 辺野古の人たちも、根本のところは、自然を守ってほしい、ということにつきると思います。

 地元の人たちが守りたい豊かな自然を守らずに、日本を守ることはできないでしょう。

 住民を犠牲にしてはいけません。

 住民を守るためにも、自然を守るべきではないのでしょうか。    (2017.8 記) 

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 2022年11月の追記です

 またまた原発60年説が出てきて、危ない動きですね。

 ウクライナでは停電で苦しんでいるのに、日本の夜は昼間のようです。    (2022.11 記)

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 2024年3月の追記です

 先日のTBS「報道特集」で建設されなかった能登半島の珠洲原発のことを知りました。じーじはうかつにも珠洲原発のことはこれまで全く知りませんでした。反省です。

 いろいろ調べてみると、ちょうど新潟の巻原発が住民投票の結果で建設中止になったのと同じころのようです。

 珠洲原発も巻原発も住民のちからで建設を阻止したすごい例です。

 世の中にはすばらしい人たちがいっぱいいるんだな、と改めて希望を持てた気がします。   (2024.3 記)

 

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