クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

耕一物語ーマロンの出会い

2014-09-27 22:04:18 | 物語

チンピラ風の三人は、耕一が座っているテーブルの直ぐ横のソファーに腰を下ろした。

その中の一人がジッと耕一の顔を見ている。

《インネンをつけてくる気か・・・》

 

 

耕一がそう思った時、

「そこの兄さん、どっかで見た顔だな」

その男が言った。

耕一は男の方に顔を向けた。しかし、耕一にはその男の顔に見覚えが無い。

「そうですか。どこでお会いしたんでしょうかね・・・」

耕一は取り合えずそんな返事をした。

「ああ、そうだ・・・。思い出した。半年ほど前に、根岸屋で松兄ィと一緒にメシを食っていた船乗りじゃないか」

男はそう言った。

そう言えば、あの時、兄分格の春樹さんが二人の手下を連れていた。その時の一人かも知れない。

《まずい奴に会ってしまったな・・・・》

耕一がそう思っていると、

「だけど、なんであんたはこんな所にいるんだい? あんた達が乗っていた船はとっ捕まっちゃったんだろう。みんな逮捕されたって言うじゃないか」

男がそう言った。

耕一は、コーヒーを一口飲んでから口を開いた。

「実はですね、1ヶ月前にクビになったんですよ。どうも働きが良くなかったようで・・・」

「へぇーー、そうだったのかい。それにしても、あんたは運の良い男だな」

「はい。ラッキーでした。ところで、春樹さんは達者ですか」

「春樹兄ィかい。ああ、達者でやっているぜ。兄ィは稲川会の親分に引っ張られて静岡へ行っちまったよ。いずれは稲川会の幹部になるって話だ。羨ましい話だぜ」

「へぇーー、そうだったんですか」

「ところで、あんたは今何をやってんだい?」

耕一はまたコーヒーを一口飲んでから口を開いた。

「新しい仕事を探しているところです」

「ふーん。しかし、あんたはなかなかハンサムだから、どっかで使ってもらえるかもしれないな。そういえば、俺の舎弟が人を探していたな・・・」

「そうなんですか。それはどんな仕事なんですか?」

その男が意外に愛想の良い話し方をするので、耕一はつい釣られて聞いてしまった。

「渋川組のシマの店の仕事らしいよ。カタギでもできる店番らしいぜ」

 

 

 

《渋川組と言えば、最近、京浜地域で勢力を延ばしている組だ。親分はなかなかのやり手との噂だ。ちょっと覗いてみるのも面白いかもしれないな・・・・》

天涯孤独のこの男に、失うものは何も無い。好奇心の虫が騒いだ。

「俺のような男でも出来るんですか?」

「たぶん雇ってくれると思うよ。明日にでも舎弟に聞いてみよう」

 

 

続く・・・・・・・・・。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント (4)
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