この圧縮具合で小山正太郎を概ね原作をなぞる形で取り上げているのは、『ごく普通の父性的な視点』があって、その普通さが凄惨な戊辰戦争を全体としては淡白に描いて、一方で妻の比重が上がった要因なのかもしれませんね。どこか昭和の良心的なサラリーマンの空気が流れてるような。まぁドロドロの内戦の話なんですけど。
話の圧縮と、作り手のメッセージや盛り込みたいシーンもあって、結構台詞のボリュームがありました。冒頭の徳川慶喜(東出感が凄い)、妻(松)、むつ、川島億次郎、父母、少し違った形で登場する孫と老人、敗戦確定後に結構気を遣ってくれる大殿様、とにかくずっと画面にいる松蔵・・。クローズアップされていました。青年将校の岩村清一郎をベテランが担当したのは役所広司との兼ね合いかもしれませんね。コストの高そうな近接剣劇は全体がワーっ! と動いて状況が変わる描写主体で、アクションは銃砲戦主体でした。その銃砲もガトリング砲のダメージ描写は特殊効果になるから苦心の跡が見えました。あとはやはり天候描写。さらに3億円は必要ですっ! 明治の描写も入れるならさらにさらに7千万円は欲しいっ!! ストーリーの感想は基本的には原作と同じですが、クライマックスの政治家になった継之助で完結しているので、『コイツも色々あって着地したな』という読者の親心みたいな物は持てません。『奇跡より算数だよ』という感覚がより強いですね。1つの歴史となってみれば『気骨』を遺したと言えるのかもしれませんが、あくまで内戦ですし、藩が『国』であったことを差し引いても厳しいところです。演者の存在感で寄り切りは成っていましたが。所々、『家康』に見えちゃったりするのも含めて。