『使い捨てられる若者たちは格差社会の象徴か~低賃金で働き続ける若者たちの学力と構造』
(ミネルバ書房)
教育学を専門とする研究者が書いた本である。
5年前に出版されており、いささか古いが内容は大変興味深い。
私は以前から漠然と、「使い捨てられる若者たち」にそれほど悲壮感がないなぁと感じていた。
ここでいう「使い捨てられる若者たち」とは、マクドナルドなどのファーストフードチェーン店に代表されるような、やりがいのない・低賃金の・どれだけやっても技能が身につかない・賃金アップがほとんどないような仕事に従事している若者のことをさす。
成育歴に同情すべき点がある場合や(貧困や養育の放棄など)、早い時期から不登校になり引きこもっている場合でも、あんまし暗い感じがしないな…という印象である。それに加え、まあそこそこ普通の家庭に育ち、中程度の学力がある場合でも(学力っていったって知りようもないので、とりあえず、高校や専門学校、大学あたりを出ているってことで)いわゆる「使い捨て」の仕事に従事していて、あんまし悲観的でもないのに、なんとなく違和感があったのである。
この本の著者が分析した、日本の「使い捨てられる若者たち」は、私の疑問・違和感に対して答えを示してくれたわけである。
日本の「使い捨てられる若者」には、欧米諸国にはないある特徴があるということだ。
それは、このような若者のなかに高学歴者が1割はいるということである。
欧米においては、「使い捨てられる若者」は、多くが移民など貧困家庭出身者である。
著者が分析した日本の特徴をもう少し詳しく見てみると
日本では、どの学力の階層であっても、その階層における成績下位者が低賃金の仕事に従事する傾向があるそうだ。3つのタイプに分けられる。
① 進学校に進みながら成績下位であったものは、比較的家庭環境にも恵まれており、あまり収入がなくても現状の生活を維持できることと、親からの「好きなことを仕事にしてほしい」という希望もあり、主体的に使い捨てられることを選択している。
② もっとも多いのが、中堅校で成績下位であったもので、正規雇用への意欲はあり、現在の仕事を腰かけとみなしており、経過的に使い捨てられている。
③ 非進学校での成績下位者で、自分の生活に満足はしていないが、生活を向上させたいとか、正規雇用につきたいといった意欲はなく、結果的に使い捨てられている。
世間一般では、③ばかりと思われているかもしれないです。
①②③の若者は、自分の現状を肯定的に捉えているものが多いとのことだ。
一生この賃金で働くことについて、どちらかといえば賛成も含めると、33%以上が肯定している。
なぜ今の仕事から抜け出そうとしないのかという問いには、
正規雇用は会社に縛られる、今は自分の時間が自由に使える
明確な夢や希望がない
生活できるので、あえて正規の仕事を目指す必要はない
とのこたえである。
公的援助の効果が期待できない、若年未就労者支援の難しさを示す回答であろう。
いずれのタイプも、入り口はどうであれ、一旦この「使い捨てられる」状態になると、そこから抜け出すことは非常に困難なようだ。
ところで、やりがいのない・技能の身に付かない・低賃金の…仕事の代表である、ファーストフードだが、それでも国によって、大きく違いがあるようだ。
その国の平均賃金を100とした場合、マクドナルドの従業員の賃金は
ノルウェーなど北欧は66~89
フランス・オランダ・イタリアなどは49~62
ドイツ・イギリス・フィンランドなどは44~49
アメリカは36だそうだ。日本のデータは載っていなかったのだが、気になるな
えーっと、つまりどういうことなんだろう?貧困家庭が多くなり、機会に恵まれないのはおおいに問題で、対策は当然講じなければならないが、それだけで解決できるような単純なことではないということか!(それはみんなわかってますね!)文科省がひと頃言ってた「生きる力」ってやつか?違うな…
何が問題なんだろ?