先輩たちのたたかい

東部労組大久保製壜支部出身
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1919年「政府当局者と資本家側の労働問題に対する意見」(読書メモ・・・「日本労働年鑑」第1集1920年版 大原社研)

2021年02月09日 11時34分41秒 | 1919年の労働運動

1919年「政府当局者と資本家側の労働問題に対する意見」
(読書メモ・・・「日本労働年鑑」第1集1920年版 大原社研)

p837 富士製糸大阪工場長山村正熊談 大阪日日新聞3月1日 
「今の職工は只賃金さえよければよいのだ。人格とか、自己の権利とかを自覚している男はいないのだから、外国に見る様な大問題を惹起するには前途遼遠だと思う。なんといっても『依らしむべし』の方針でなくてはだめだ。・・時代の推移を職工は知らない。馬の耳に念仏で、職工の自覚を促そうとしてもそれを咀嚼する力がない。教えても理解しないのだから教えようがない。・・・・日本の職工が権利を主張すると同時に義務の観念を抱いてくるまでは大丈夫だ」

p840 大阪中川鉄工所釜洞盛太郎談 大阪日日新聞3月12日 
「日本の職工は家に帰ると三千年来の家族制度とその言い知れぬ楽しみもあり、涙もあるので、個人主義本位の外国の制度精神を以って労働問題を解決しようとするのは不可能の話で笑止の沙汰だ。日本ではあくまで涙と情である。そして工場自身に一種の空気を醸成するに越す策はない」

p840 大阪日本電線製造会社北山寂談 大阪日日新聞3月12日
「敬服する人のためならば火をも辞さむという人格中心主義の日本人に法律で始終せよと命じるのは不可能である。・・・・皇室中心であるごとく資本労働の間にも情けが漂はねば駄目である。日本色を加味し偶像崇拝の精神が加わらねば」

p841 警視庁川村警保局長談 東京毎日新聞4月11日
「伝えらるるが如き残酷な資本家ばかりでなく中には称賛すべきものも少なくない。鐘紡、富士紡の如きその一例である。」

p842 内務省地方局救護課長田子一民談 東京毎日新聞4月26日
「労働問題の解決の方法は何よりまず第一に資本家が労働者に対して正当な利益分配を為す必要がある。生産の利潤を総て資本家だけが独占してしまうという事は甚だ不合理ある。・・・又、社会調査生活改善等を絶叫しながら漫然いわゆる慈善家の手に一任して置くが如きは甚だしい矛盾で、・・・感化院のごときも府県費が少ないために申し訳的なものが多いので反って反対の結果を生むことが多々ある。・・内務省でも近く、貧児保護法、不具廃疾者保護法、幼年労働者保護法の諸法律を制定すべく着々調査中である。」

p843 警視庁山下工場課長談 東京日日新聞4月29日
「東京府下には工場1万2千と工場労働者の総数は25万にも上るが、これに対する東京府工場課には僅か11人の
吏員だけで予算も切り詰められて何をする事もできない。・・・工場主は今なお16歳以下の少年労働者や女工を12時間も酷使しているが当局の手不足はこれさえも絶滅しえない状態である・・・・労働者の真実の生活を研究し社会に訴えたならば真実の社会政策も生まれよう。今日では夢見る様な有様だ。云々」

p845 労働運動に対する岡警視総監の意見 東京日日新聞6月1日
「労働問題においては取締上、時代と逆行する様な事はせぬ積りで大概大目に見ていたが、彼らは常軌を逸し筆に口に過激な議論をなし、資本家の征伐は同盟罷業を断行するに限るとか、経済的直接行動をとるのが有数な運動方法であるとか、その他過激な事を宣言決議するに至っては最早最後の手段に出ずる外はない。今後彼の労働同盟主催の労働大会のごとき演説会は治安警察法によって禁止する筈である。」

p847 同盟罷業に対する農商務省立石工場課長談 時事新報6月14日
「彼ら職工の要求を見るに何れも賃金の値上であって、その要求が容れられぬ時は暴動と化するのである。・・・・自分としては官吏、工場主、職工の代表者からなる委員会を作り、この委員会に法律で絶対の権限を与え同盟罷業が起こる前に・・委員会が裁判官となって要求の可否を定めるように是非したいと思う。いたずらに官憲の力でストライキをした労働者を圧迫してもそれは到底抑えきれるものでないから、このような機関を設けて円満に解決することに努めたい。」

p848 労働問題に関する意見 小橋内務次官談大阪毎日新聞6月15日
「資本家の横暴甚だしくして忍ぶべからざるものあれば労働者が組合の団結を持って資本家にあたるは余儀なきところなるも、当局としてはあくまで労資両者の調和融合を希望せざるを得ず。治安警察法17条の存在を持って組合発達の障害物と論ずるものあるも、当局においては条文の解釈は時勢に判ふべきものにして、労働者が自己の利益の為に集合し、又は同志と糾合する行為のごときは第17条に該当せずと解釈している。ただ関係者以外の者が煽動または誘惑せる場合のみ第17条をもって処断する。・・・同盟罷業のその主張が正当で手段が穏当な限りこれを圧迫するような意思はない。また、思想問題に対しても当局は極めて寛大なる態度を執りつつありて、国体の大本に関せざる限りの言論を自由に発表する事は文化の進歩を計るものなり。」

p848 治安警察法第17条に対する官憲の態度 東京日日新聞6月27日
「柴山農商務省事務官は、賃金値上げの運動を始めると警官が治安警察法の例の誘惑煽動の四字に当てはめて解散を命じたりするのでかえって事を大きくする場合がある。労働者に値上運動が起こるのは止むを得ない、例の『誘惑煽動』には当局も実際弱っている。池上警視庁高等係主任は、法律が存在する以上適用しない訳にはいかないが、温和な運動にはなるべく干渉せぬ事にしている。」

p853 罷業取締への政府方針の変更 
7月、8月に至りて大都市にストライキが続出した為、政府はこれに対して遂に取締方針を決定したという。
「最近に至りて罷業続出し、その結果秩序を乱すおそれあり、かつ公共事業の従業員罷業の結果は国家に由々しき問題を惹起し、民間事業においては生産能率を減じ国家の大損失となる故、今後従来の方針を一変し治安警察法第17条に触れる者は仮借なく厳罰に処する方針を取る云々」

p881 原首相と治安警察法 11月13日
「治安警察法は独り労働者のみに適用するものではなく資本家にも適用するのだから必ずしも労働者のみを苛める法律じゃないのだ。俺は治安警察法を撤廃する理由を認めない」

p883 八時間尚早説 日清紡績専務宮島清次郎談 中外商業新報11月23日
「現在の労働時間は鉱山業、化学工業および製煉業は12時間、鉄工業は10時間、繊維工業は12時間2交代を採用している。8時間制実施は時期尚早といわざるを得ない。(八時間制になれば労働者は)彼らの多くはただ酒色と賭博に走らんのみ。」

 p487 ストライキに対する川村警保局長談 東京朝日新聞12月27日 
「外来思想の影響と生活不安の為に本年は労働争議が頗る多く起こったけれど概括的に見ると真面目に総てを理解して自発的に罷業の手段に出た者よりも、ただ訳もなく模倣的に又は外部からの煽動が彼らを動かしたものが多かったことは遺憾千万である。これは日本に労働組合が無いためであるから成るべく早くこれを組織せしめなければならない。会社や企業家は彼らの会社又は工場ごとに労働団体を作らせて交渉機関となすべきで現に資本家側でもその必要を感じてきたようである。かくして労働者は外部の援助によらず彼らの意志を貫徹せしめ得る事となろう。政府は事情やむを得ず確固たる理由を具して自発的に起こった同盟罷業に対しては何ら干渉しなかったが、第三者の煽動によって平地に波乱を起こし、ひいては暴動を起こしたようなものに対しては最も厳重な取り締まり方針を採った。例えば足尾釜石等の各鉱山及び砲兵工廠の罷業の如きである。・・・また今年は昨年と比較にならぬ程多数の罷業行われたけれども暴行はむしろ減った。これは多少彼らの自覚を証拠立てるものと思う。また、例の治安警察法第17条の存廃論が中々盛んであったが、要するに現政府の意識は同盟罷業は本来違法行為であるが単に法のみでとはいかない。これが時代の大勢とでもいうものか結局今日では『やむを得ざればストライキを行っても良い』というところまで進んできた。ただし未だ同盟罷業は労働者の権利だとか合法的行為だという訳にはいかない。『やむを得ざる事』とするに過ぎないのである。」



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