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総同盟が組合同盟員を襲撃した川口鋳物工場事件-1928年の労働争議
参照・協調会史料
鋳物工場で有名な川口町には、総同盟の東京鉄工組合川口支部と組合同盟の関東合同川口支部の二つの労働組合があった。総同盟の東京鉄工組合川口支部は、1926年(大正15年)に創立され、組合員は約800名である。一工場一分会で約20分会ある。一方総同盟第二次分裂以降拡大した反総同盟の組合同盟の一つ関東合同労働組合は1927年(昭和2年)に川口支部を創立し、支部組合員は着実に増加しつつあった。1928年6月、総同盟の東京鉄工組合川口支部100名が組合同盟の関東合同川口支部員6名を襲撃する事件が起きた。
1928年、総同盟の東京鉄工組合川口支部は伊藤工場に対して、「組合公認」を要求した。この「組合公認」とは、一般的によくある会社に対して労働組合を認めろというものではなく、「総同盟だけを公認しろ、一工場一労働組合」という1924年から総同盟が進めていた「団体協約運動」であり、総同盟以外の労働組合は認めない、即ち総同盟に加入していない労働者や評議会系や組合同盟系の他労組員は雇わない、解雇しろという要求であった。特に総同盟が分裂したあと、総同盟が全国的に主導権を拡げようと実施したのがこの「団体協約運動」方針であった。
(総同盟の「団体協約」運動)
総同盟右派は1924年ごろから「団体協約」運動を強力に呼びかけ進めていた。
総同盟と会社との団体協約の中身
一 従業員は総同盟組合員たること
一 会社は総同盟組合を公認し、団体交渉権を認めること
(上からの組織化、東京製綱株式会社の例)
友愛会発足以来、鈴木文治会長が、まず会社と接触し社長らを説得して職場に組合を作る、このような「上からの組織化」の方法は友愛会・総同盟のもともとの伝統的手法であったが、「団体協約」運動はそれをもっと強力に、いわば会社の力で強制的に労働者を総同盟組合に加盟させることができ、かつ評議会や組合同盟など反総同盟の組合員は組合が除名すれば自動的に会社が団体協約に基づき、その労働者をクビにして職場から排除することができるのが、この団体協約運動であった。
反総同盟労働者の排除 岡部電機製作所「団体協約」の場合
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(東京モスリン刃傷事件)
1927年7月、東京モスリン吾嬬工場に於いても、総同盟第二次分裂に伴う左右の対立が激化した。東京モスリン吾嬬工場の多数の紡績女性労働者などは、総同盟の右傾化に怒り脱退し、日本労働組合同盟日本紡織労働組合吾嬬支部に結集した。総同盟は猛烈な巻き返しを起し、総同盟への復帰を迫った。7月3日には数十名の総同盟東京紡織労働組合組合員が、吾嬬支部の事務所に押しかけ、暴力を奮い、ついには短刀で労働者を刺して致命傷を負わせた。組合同盟は「総同盟反動幹部の狂態を見よ」と糾弾した。昨日まで長年の間、幾十もの熾烈な争議を共に闘ってきた東京モスリンの労働者がいまや血をながすほどいがみあうのである。
総同盟の分裂により全国各地でこのような悲劇が繰り広げられた。誰がほくそえみ喜ぶかはあまりにも明らかであった。
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総同盟東京鉄工組合、関東合同労組員襲撃事件1928年6月
(ビラ上写真)
川口町全町民に訴える
総同盟の暴力行為の大醜態を見よ
六月十一日午前八時伊藤仙太郎工場作業場において、総同盟東京鉄工組合所属八十名は突如同工場従業員六名を鉄棒その他の兇器をもって殴打し、重傷人事不生に落ちらせ、もっか北條病院に入院加療中、他の三人も重傷して病床に横たわっている。
川口署は間髪を入れずして加害者を次々と検挙した。
総同盟東京鉄工組合は、労働者をして同じ労働者を殴ろうとする無頼の徒である。
総同盟は何故暴力的手段を取ったか
伊藤工場の従業員は東京鉄工組合と、我が関東合同労働組合のニ組合に加盟していた。
総同盟はすぐる日13ヶ条の要求を伊藤工場に提出した。伊藤工場主は中12ヶ条の労働条件改善案を承認した。あと一ヶ条は「組合公認」問題であった。工場側は、この「組合公認」を承認すれば関東合同の組合員を首切らざるを得ないし、又他の職工も雇われないので、ついに「組合公認」案は承認しなかった。かくして、ついに交渉決裂し五月二十一日より総同盟指導の下にストライキは行われた。
我が関東合同川口支部は、次の如き意味において総同盟に共に戦線を申し込んだ。
(一) 組合公認問題は労働者共同の利益に反するから撤去せよ
(ニ) 他の労働条件改善の要求ならば更に共同して闘争しよう
しかるに総同盟はこれを拒絶した。
「組合公認」が認められれば、関東合同労組や東京鉄工に加盟していない労働者は、、たとえ会社が首を切ってこなくても総同盟から首を切られることとなるのだ。
総同盟は、この惨虐な手段を弄して、すでに東京製綱会社並びに東京岡部電気工場で多数の労働者を手当なしで首切りをやった。また総同盟は組合公認した会社から幹部の給料をもらって労働者搾取の手代をする。現に総同盟幹部中多数の資本家雇幹部が得々として活動している。
故に総同盟の組合公認なるものは、労働者の利益を守るべきものに非ずして総同盟一部幹部の「労働者食い」の為の手段であり方法である。
今、日本全国の労働団体は、この醜悪なる「組合公認」の常套手段者総同盟をダニの如くに嫌い弾劾しているのである。
総同盟は純真なる川口町労働者を食いものにしようとして、ここにまたまた「組合公認」の要求をだしたのだ。
総同盟のような労働者を食いものにするような組合にとっては、関東合同労働組合のごとき正々堂々と労働者の真の利益を守る組合の勢力があることは恐ろしいのだ。
今度の組合公認要求は、暗に同工場から合同の組合員を追い出さんとする非階級的陰謀であったのだ。
故に我々は断乎として組合公認に反対した。関東合同の共同戦線を拒絶した総同盟は、ついに組合公認の要求を撤去し、責任解雇者を承認し、最近まれにみる大惨敗をして、伊藤工場争議を打ち切った。
今回突如として、高嶋君外五名の合同組合員に致命傷を負わせたのは「道理でかなわない」ので「暴力でやっつけろ」という卑劣極まる陰謀の結果の出来事である。
傷害事件と我らの態度
暴力団に成り下がった総同盟は、かくして正義の前に前に木っ端みじんに粉砕された。
目下伊藤工場従業員中暴行を働いた人々は多数検挙されつつある。
だがそれらの従業員は「まんまと総同盟の手に乗った。馬鹿を見た」と互いに己れの非なることをかたりあっている。
そうだろう,十二ヶ条の要求(労働条件の改善はすでに承認され)は通ってしまったのに組合公認だなんて、労働者を種に幹部の食いものになる為に十五日間もストライキをさせられ、あげくのはてに合同の組合員を殴ってしまえ、なんておだてられて、それで結局自分らだけ検挙されたのだ。総同盟への反感は当然のことである。
(略)
全川口町労働者諸君、総同盟の醜悪なる非階級的行為を糾弾せよ! 稲垣君外五名の重傷者は、すでに北條病院に入院中である。我が合同労働組合は、全力をあげて之に救援すべく準備はできた。諸君も何卒この階級的犠牲者のために積極的にご援助下されん事をお願い致します。
稲垣君外五名の傷害事件に対しては自由法曹団弁護士の来川を乞い目下訴訟手続き中である。
川口町労働者諸君
◇総同盟のダラク幹部の手段に乗るな
◇総同盟の労働者食い幹部の手段を徹底的に葬らなければならない
◇稲垣君外五名の重傷者を救え
六月十一日
日本労働組合同盟関東合同労働組合本部
同 川 口 支 部
(ビラ2)
総同盟の「組合公認」の中身は、
第一に、「鉄工組合員以外の労働者は使わぬこと」
第二に、「鉄工組合公用の場合は工場主が全日給を支給すること」
第三に、労働条件その他の問題は鉄工組合本部に相談して行うこと」
第一は、鉄工組合にはいらなければ首になるということだ。わが関東合同組合員は総同盟ダラ幹の手で工場の外に追い出されるのだ。
総同盟の「組合公認」要求ストライキは、反総同盟である旧評議会系や組合同盟の関東合同労働組合を工場からクビにしろという要求であった。関東合同労組川口支部は断乎として総同盟の「組合公認」要求とそのストライキに反対した。
15日間のストライキは最後には要求を取り下げ、組合リーダーは解雇され敗北した。伊藤仙太郎工場争議が終結したかに思えた。ところが、突如として約100名の総同盟組合員が、関東合同労組組合員6名を襲撃し致命傷を負わせたのだ。襲撃した総同盟組合員は多数が検挙された。また関東合同労働組合は自由法曹団弁護士により訴訟手続きに入った。
全川口町労働者諸君、総同盟の醜悪なる非階級的行為を糾弾せよ! 稲垣君外五名の重傷者は、すでに北條病院に入院中である。我が合同労働組合は、全力をあげて之に救援すべく準備はできた。諸君も何卒この階級的犠牲者のために積極的にご援助下されん事をお願い致します。
川口町労働者諸君
◇総同盟のダラク幹部の手段に乗るな
◇総同盟の労働者食い幹部の手段を徹底的に葬らなければならない
◇稲垣君外五名の重傷者を救え
六月十一日
日本労働組合同盟関東合同労働組合本部川口支部
(ビラ3)
声明書
親愛なる川口鋳物工諸君!
六月十一日午前十一時突如伊藤仙太郎工場内に一大乱闘が起きた。百人余の総同盟鉄工組合員は、少数ダラ幹のでたらめ煽動に乗って卑怯にも関東合同の組合員わずか五人に不意打ちをくらわし、川口町始まって以来の傷害を負わした。
伊藤工場の争議原因は鉄工組合公認で・・・・・鉄工組合員外の者は使用するなという事だ、(関東)合同の組合員三名を首切れというのだ。
ソンナ馬鹿な事があるか、労働者が労働者をイヂメ殺す、かかる組合は労働組合でなくして労働者アッパク団だ。吾が森安工場では工場主が関東合同を公認している鉄工組合員が三人いる。しかしながらこれらの鉄工組合員を首切るだの、(関東)合同組合員外は使用しないだなんて肝っ玉の小さい考えは少しも持たない。
総同盟の幹部共は自分勝手に従業員を煽動しストライキをやらせておいて、見事に惨敗した。関東合同が切り崩したのなんのってダラカンの言抜けも甚だしい。鉄工組合の公認は川口町周囲の事情にソムクものだ。だから関東合同組合員は勿論他の職工も反対するのだ。
全川口労働者の立場からかかる卑劣な運動をなす総同盟のダラカン政策を川口から葬りだせ。鉄工の組合員も(関東)合同の組合員も互いに仲良くするのだ。そして幹部の仕事に注意するのだ。
労働者圧迫団総同盟排撃会
森安工場従業員
川口町栄町三丁目
以上