


君がすくすく育つように
祈りをこめて植えたほうき桃が
寒い陽ざしに背伸びして
白い蕾たちが揺れています
もう少し待って もう少し待ってと
卒業する君への賛歌を準備して
私の心をくすぐります
遅々とやってくる春の匂いは
邪気を払う桃の蕾をつつんでいます
元気にそだった君に
桃たちは ほほほと笑うのでしょう
笑って 笑って花たちは
君の誕生日に
生まれるうれしさを山盛りにして
手渡して咲くのでしょう
いつか荒れた風や波が
君の体を揺するでしょうが
空の青さを心の秤(はかり)にして
ほうき桃の
まっすぐ生きる音を聴いてほしいのです
遠くの木枝で囀(さえ)ずるシジュウカラを横目に
ほうき桃はよんよんと
青空をめがけて揺れています
13年目の君の春の眩しさは
やさしい息吹となって
70を越えた私の哀しさに届いています

88歳の叔父から手紙が届いた。私が成人してから尋ねること
が多かった叔父である。かなりの読書家で、叔父の家には蔵書
がたくさんあった。それを借りて読むことが私の楽しみになり、
私が文学に興味を持ったのもこの叔父の影響だったと思える。
88歳になった現在は昔読んだ本をもう一回読みなおしている
との便りであった。
しかも司馬遼太郎の作品は地図を広げ確認しながら読んで
いると記されていた。
何歳になっても見届けようとする精神のたくましさに私は
とても驚いた。齢を重ねると体も思うようにいかなくなり、
心もなえ、興味が薄れていくだろうが、叔父の生きる日々
の姿勢を文面から感じられ励まされた思いになった。
そして、私の前を歩いている叔父がいることに何処か生き
ることへの安心感を持たせてくれる味わいのある手紙で
あった。
手紙の暖かさを久しぶりに味わった気持である。
今年の鶯の鳴き声を成田の長男の家で聞いた。
練習用の鳴き声でなく、それは それは見事な
鳴き声であった。春の訪れの近さを感じさせて
くれた。
諸葛菜が咲き貝母(バイモ)が咲き、木瓜が
色づき始め、春が待ち遠しいです。
(2017.3,22.)