～私の72候～ 夕顔

～私の72候～　(2017.8.31)
　
　　　　　　　　　　　　　夕顔　　　



　どんよりとした今日の空は

台風の近かさを知らせています

湿った風が吹いて

糸巻き歌をうたうように

私の弱い体をじわりと不快の色で巻き付けます


うとましく思いながらも

聞こえてくる８月の蝉の鳴き声に

心を重ねるのは

夏の終わりのにがさを感じるからでしょうか


夜半になると夕顔が

純白の装いでひそやかに咲きだしました


夜空から一枚の絵が下りてきたと思えるほど

暗闇に咲く夕顔は

ときめき心であふれています


幾つも咲いた

花びらの中を　雄しべから雌しべへと

蟻が命のありかを探しています


夕顔の芳しい香りは

長く歩いた夫婦の心模様を

宵闇の揺りかごに乗せて

やさしくさすってくれます


私達の休息もままならないような台風が

大雨を連れてくるのだろうか
　　　　　　　　　　　　　　　




　８月も終わろうとしています。今年は梅雨時が猛暑であったり、
梅雨戻りがあったり変化の多い夏でした。
お盆の頃になると「やぶらん」が咲きだすのですが今年は少し
遅いようです。紫色の小さな花ですが実にさわやかです。
万葉植物ですが公園や、竹やぶなどで株をなしているのを見か
けたことがあります。葉はランに似ています。花瓶に花を挿す
時などやぶらんの葉は引き立て役として随分活躍してくれます。
きっと、この花を見かけたことはあると思いますが名前と結び
つかないかもしれません。我が家の庭でもだいぶ増えあちこち
にみることができます。２本ぐらい紫色の花と葉をとり一輪
ざしにいれると、とても　とても映えます。
そして、強いからこそ生き延びた万葉植物でしょうが、
その時の長さを考えると感慨もひとしおになり、ほめてあ
げたい衝動にかられるのです。

（2017.8.31)