カメムシが狭い隙間をくぐり抜けて家に入ってきます。
外は寒いから必死なのでしょう。
まあ家の中は外よりは暖かいけれど、食べ物はないから腹をすかしたまま死ぬだけですよ。
すでに僕の部屋の照明のカバーの中には、二匹のカメムシの死骸があります。
今日見つけたカメムシは台所のごみ箱の外にいました。
何故そんなところにいたのかはわかりません。
家人は虫が嫌いだから、僕が捕まえて外に出さなければなりません。
せっかく家に入れたのに再び寒い外に出るなんて、カメムシもたまらないでしょう。
払っても払っても必死に僕の手に捕まって家に入ろうとします。
こっちはできればカメムシが臭いガスを出す前になんとかしたい。
しかしこの寒い季節のカメムシは、もう臭いガスをだす力もないようです。
とにかく暖かいところで死にたいのでしょう。
僕としては家の中で死んでもらっても構わないのですが、家人に見つかってしまったのでそういうわけにもいきません。
僕の指に弾かれたカメムシは、夜の闇の中に落ちていきました。
かわうそうに。
最後の力を振り絞って家に入ってきたのだろうか。
もしまだ力が残っていたら、僕の部屋の窓から入ってくれたらいいのだけれど。
外は冷たい雨が降っています。
寒さがとても染みます。