島崎藤村 作詞 若松甲 作曲 舟木一夫 歌
まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに 見えしとき
前にさしたる花櫛の 花ある君と 思ひけり
やさしき白き手をのべて 林檎をわれにあたえしは
薄紅の秋の実に 人こい初めし はじめなり
わがこころなき ため息の その髪の毛にかかるとき
たのしき恋の盃を 君がなさけに酌みしかな
林檎畑の木の下に おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと 問いたまふことこいしけれ
前にさしたる花櫛の 花ある君と 思ひけり
やさしき白き手をのべて 林檎をわれにあたえしは
薄紅の秋の実に 人こい初めし はじめなり
わがこころなき ため息の その髪の毛にかかるとき
たのしき恋の盃を 君がなさけに酌みしかな
林檎畑の木の下に おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと 問いたまふことこいしけれ
明治29年10月30日に島崎藤村が「文学界」に、当時の和歌俳句から型破りな新しく美しい七五調「初恋」の詩を発表しまし、翌年8月この詩を載せた詩集「若菜集」が刊行されました。
島崎藤村は8歳のときに幼馴染の「ふゆ」と林檎の木の下を歩いた思い出を「幼き日」に書いており、青春時代の佐藤輔子との恋愛に重ねて詩にしたようです。
「初恋」は中学の教科書・ベストセラー「声に出して読みたい日本語」などにも取り上げられています。
七五調の定型詩であるためリズムよく読め、洗練された短く美しい言葉の中の情景・作者の感性・心情が心にしみます。
昭和46年に若松甲作曲で舟木一夫の歌(4番は省略されています)でヒットしました、彼も当時「日本人の心の奥底にひそんでいる情緒をよみがえらせてくれる歌、素朴な人の美がひそんでいて、溢れんばかりの情感に満ちている」旨のコメントをしています。
メロディーも素晴らしく今でも長野を旅行したり林檎の木を見ると自然に口ずさんでいます。 美しい日本語・メロディー・景色は何時までも残したいものです。