これは、私が失敗した体験談なのですが、今でも反省しているエピソードのひとつです。
私が教育ソフトメーカーに勤務していた時の話です。
私が勤務していたその会社は、出版社でもあったので、ソフトを扱う傍ら、書籍の取り扱いも行なっていました。
書店に書籍を置いて頂いて、その管理をするのも仕事のひとつでした。
多くの書店を訪問して、新刊の案内や在庫確認、商品補充を行ないます。当初は私が、近畿のほとんどの書店を訪問していたのですが、
教育ソフトの販売業務もあり、並行して行なうのが難しくなってきました。
そこで、書店訪問のための契約社員を雇うことになり、一人の60代の男性が採用されました。
そして、私がその方の指導と管理を任されることになりました。
親子ほど歳の離れた方に指導を行なうのに、かなり戸惑いましたが、業務の方法ややり方などを伝えていきました。
その方は、「それぐらい分かりますよ!」とか「大丈夫ですから!」と私の言う事は、あまり聴いてくれず、上司としては、見てくれ
ませんでした。
ある時、その方の、営業報告書を見ていた時に、そのお粗末な内容に呆れてしまい、その方の前で、思わず報告書を放り投げてしまい
ました。
「せっかく書いた報告書を何故、投げるんだ!」と言う言葉に私は、
「もっとちゃんと仕事して下さいよ!」と言い返し、挙句の果てに「感情的になるのは、社会人として未熟だからじゃないですか!」
と年上のその方に対して、言ってはいけない一言をつい口にしてしまいました。
すると、その方は、烈火の如く怒り出し、「その言い方が人を小馬鹿にしていると言うんだ!」と怒鳴り散らしました。
「親子ほども歳が離れた者に対して、その態度がむかつく!」とどうにも怒りが収まらない様子。
すぐに、先輩が間に入って、その場を収めて下さいました。
その翌日、東京の本社から上司が駆けつけ、私は、上司から、こんこんと叱られました。
「相手は年上なんだから、ガラスの器を扱うような気持ちで接すること!」と延々と説教されました。
「ガラスの器」と言われたその時の言葉を、今でも人と接する時、肝に銘じるようになりました。
確かに、企業内では、上下関係は、年齢は関係なく、役職や勤務年数や業績などで決まることが一般的です。
ですから、一旦採用されたのなら、年下であっても上司や先輩の指示や命令に従うのは、当然のことです。
しかし、その方は、「俺は、お前より人生の先輩だ。」という考えやプライドが強かったのでしょう。言葉の端々にそういう思いが
感じられました。 ですから私の指示を聴けなかったのも仕方のないことなのかもしれません。
「年下に頭を下げる。」ということも、年齢を重ねるほどに、非常に難しくなって、その方も毎日が辛かったのだと思います。
それからは、私は、その方の営業報告を受ける度に、「ご苦労様でした。」と言うように心掛け、営業に出る際には、必ず見送るように
しました。 しだいにその方とも蟠りもなくなり、しばらくして、その方も円満退職していかれました。
「プライドが高い人の心は、ガラスの器のように繊細で壊れやすく、そして傷つきやすい。」
そういう人の扱いは、なかなか難しく気を使わされるものです。 しかし、そういう人にこそ、注意して接していきたいと思います。
【工芸品ショップ泉亀(いずかめ)】ショップサイト
http://www.izukame.com