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帯とけの枕草子〔百五十二〕とくゆかしき物
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔百五十二〕とくゆかしき物
文の清げな姿
はやく知りたいもの、巻き染(縞模様染)、むら濃(濃淡模様染め)、括り物(絞り染め)などを染めている・染め上がり。人が子を産んだとき、男女を早く聞きたい、良き人はなおさらである。ふつうの者、げ衆の身分の程でも、やはり聞きたい。除目(官職任免の日)の明くる朝、必ず、知る人がそうなるのが当然でないときでも、やはり、結果を・聞きたい。
原文
とくゆかしき物、まきぞめ、むらご、くゝり物などそめたる。人のこうみたるに、をとこ女、とくきかまほし。よき人さら也、ゑせ物、げすのきはだに猶ゆかし。ぢもくのつとめて、かならず、しる人のさるべきなきをりも、猶きかまほし。
心におかしきところ
はやく知りたいもの、巻き染、むら濃、括り物などを染めている。
人が子を産んだとき、男女を早く聞きたい、身分高い人はなおさらである。ふつうの者、げ衆の身の程でも、やはり聞きたい。
沈黙の明くる朝、賀ならず、汁る男が、そうなるのが当然ではない折りも、汝お、何に故か・聞きたい。
言の戯れと言の心
「とく…すみやかに…すぐ…とくと…よくよく」「ゆかしき…見たい…聞きたい…知りたい」「ぢもく…除目…官職の任免が行われる日…ち(ん)もく…沈黙…沈痛な静寂」「ん…表記しない事がある」「かならず…必ず…賀ならず…祝ならず」「さるべきなき…そうなるのが当然でない…そうなる必然性が無い」「きかまほし…聞きたい…どこかぐあいが悪いの?…また浮気してきたの?…どこの女に搾り取られたのよ」
歴史の書には、長保二年(1000)十二月十五日、皇后定子第二皇女御産、十六日、皇后崩、とあるでしょう。
われわれには、霧の中の出来事のようで心晴れない思いがしたのである。ほんとうに「とくゆかしき…よくよく知りたい」のはそのことであった。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。