■■■■■
帯とけの枕草子〔百十七〕侘しげに見ゆるもの
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔百十七〕侘しげに見ゆるもの
侘しげに見ゆるもの、六七月の午ひつじの時ばかりに、きたなげなる車に、ゑせ牛かけて、ゆるがしいく物。
(みすぼらしく見えるもの、残暑の候の昼から昼下がりに、汚げな車に、品の悪い牛を掛けて、車体を・揺るがして行く者……失望する感じに見えるもの、みな尽き、夫身尽きの憂し泌じの時ばかりに、穢なげなものに、見かけだおしの憂し兼ねて、身を・揺るがし逝くもの)。
言の戯れと言の心
「わびしげ…みすぼらしいさま…ものたりない感じ」「侘…失望するさま」「見…覯…媾…まぐあい」「六月…みなつき…水無月…皆尽き」「七月…ふみつき…文月…夫身尽き…不見尽き」「牛…丑…憂し…気がすすまない…つらそう」「ひつじ…未…泌じ」「ひつ…漬つ…泌つ…濡れる」「し…子…じ…児…おとこ」「車…しゃ…者…もの」「えせ……似非…質が悪い…見掛倒し」「かけて…掛けて…二つ兼ねて」「いく…行く…逝く」。
雨の降らない日に張り筵している車。
たいそう寒い折りや暑い頃に、げす女の身なりの悪いのが子を背負っている。
老いた乞食。
小さな板葺きの屋の黒く汚げなのが雨に濡れている。また、雨がひどく降るのに小さな馬に乗って御さきがけしている人。冬はそれでもよい、夏は上着も下着も、汗で・一つになってぴったりくっついている。
「わびしげ…みすぼらしいさま…苦しそうなさま…つらそうなさま」。
枕草子は、おとなの女たちには「そうよねえ」と同意するようなことが書いてある。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は「枕草子 新 日本古典文学大系 岩波書店」による