帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔百五十〕くるしげなる物

2011-08-22 06:23:23 | 古典

  



                                            帯とけの枕草子〔百五十〕くるしげなる物



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔百五十〕くるしげなる物


 文の清げな姿

 苦しそうなもの、夜泣きということする乳児の乳母。思う女二人もって、こちらからあちらからも嫉妬されている男。強い物怪に関わっている験者、験(ききめ)さえいち早ければよいだろうに、そうでもない。それでもやはり人に笑われまいと念じている、とっても辛く苦しそうである。わけもなくもの事を疑う男にたいそう思われている女。太政大臣などのもとで時めく人も、安閑とはできないけれど、それは、苦しげでも・いいでしょう。心が苛立っている人。


 原文

 くるしげなる物、夜なきといふわざするちごのめのと。思人ふたりもちて、こなたかなたふすべらるゝをとこ。こはき物のけにあづかりたるげんざ、げんだにいちはやからばよかるべきを、さしもあらず。さすがに人わらはれならじとねんずる、いとくるしげ也。わりなく物うたがひするをとこにいみじう思はれたる女。一のところなどにときめく人も、えやすくはあらねど、そはよかめり。心いられしたる人。


 心におかしきところ

 くるしそうなもの、好無きという技巧する子の君のめの門。

思い人二人持って、あちらこちらに、伏すべられるおとこ。

強いものの気に、かかわっている見者、見さえいち早ければ良いでしょうが、そうでもない。それでもやはり女に笑われまいと思って、とってもくるしいらしいよ。

どうしょうもなく疑心暗鬼する男に、ひどく思われている女。

絶頂などにときめく男も、身の枝、安泰ではないけれど、それは、さがだから・良いでしょう。

心苛立っている女。



 言の戯れと言の心

「夜なき…夜泣き…よ無き…好無き」「ちご…乳児…稚児…おとこのこの君…おとこ」「め…女」「と…門…女」「ふすべらる…妬かれる…燻される…伏すべらる…ものを折り伏される」「もののけ…物の怪…ものの気…その欲」「けんざ…験者…見者…まぐあう者」「見…覯…媾」「一のところなど…第一の人のもと…上りつめた地位…山ばの絶頂」「えやすくはあらねど…安閑としておれないが…枝安泰ではないけれど」「え…得…枝…身の枝…おとこ」「そはよかめり…それは(自業自得だから)いいでしょう…それは(おとこのさがだから)いいでしょう」「心いられたる人…心苛立っている人」「人…男…女」。

 


 一の人と成って、ときめく人(道長)も、安心では無いだけれど、くるしそうだけど自業自得・それでいいでしょう。


 心くるしそうに苛立っている人(道長)よ。われら女たちよ。



 伝授 清原のおうな

聞書 かき人知らず   (2015・9月、改定しました)


 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。