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帯とけの枕草子〔百五十〕くるしげなる物
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔百五十〕くるしげなる物
文の清げな姿
苦しそうなもの、夜泣きということする乳児の乳母。思う女二人もって、こちらからあちらからも嫉妬されている男。強い物怪に関わっている験者、験(ききめ)さえいち早ければよいだろうに、そうでもない。それでもやはり人に笑われまいと念じている、とっても辛く苦しそうである。わけもなくもの事を疑う男にたいそう思われている女。太政大臣などのもとで時めく人も、安閑とはできないけれど、それは、苦しげでも・いいでしょう。心が苛立っている人。
原文
くるしげなる物、夜なきといふわざするちごのめのと。思人ふたりもちて、こなたかなたふすべらるゝをとこ。こはき物のけにあづかりたるげんざ、げんだにいちはやからばよかるべきを、さしもあらず。さすがに人わらはれならじとねんずる、いとくるしげ也。わりなく物うたがひするをとこにいみじう思はれたる女。一のところなどにときめく人も、えやすくはあらねど、そはよかめり。心いられしたる人。
心におかしきところ
くるしそうなもの、好無きという技巧する子の君のめの門。
思い人二人持って、あちらこちらに、伏すべられるおとこ。
強いものの気に、かかわっている見者、見さえいち早ければ良いでしょうが、そうでもない。それでもやはり女に笑われまいと思って、とってもくるしいらしいよ。
どうしょうもなく疑心暗鬼する男に、ひどく思われている女。
絶頂などにときめく男も、身の枝、安泰ではないけれど、それは、さがだから・良いでしょう。
心苛立っている女。
言の戯れと言の心
「夜なき…夜泣き…よ無き…好無き」「ちご…乳児…稚児…おとこのこの君…おとこ」「め…女」「と…門…女」「ふすべらる…妬かれる…燻される…伏すべらる…ものを折り伏される」「もののけ…物の怪…ものの気…その欲」「けんざ…験者…見者…まぐあう者」「見…覯…媾」「一のところなど…第一の人のもと…上りつめた地位…山ばの絶頂」「えやすくはあらねど…安閑としておれないが…枝安泰ではないけれど」「え…得…枝…身の枝…おとこ」「そはよかめり…それは(自業自得だから)いいでしょう…それは(おとこのさがだから)いいでしょう」「心いられたる人…心苛立っている人」「人…男…女」。
一の人と成って、ときめく人(道長)も、安心では無いだけれど、くるしそうだけど自業自得・それでいいでしょう。
心くるしそうに苛立っている人(道長)よ。われら女たちよ。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。