その男、元モトクロス国際Ｂ級ライセンス。

ハンドルネーム「ひろモンチ」。
何度かこのブログにも登場しました。
その男は、元モトクロス国際Ｂ級ライセンス。
俺達のバイク仲間の間では、ダントツ速い男。
初めて会った時は、私と同じエンデューロバイクに乗っていながら
モトクロスコースの２連ジャンプを軽々と飛んでみせた。
鮮やかさに見惚れた。

「ひろ」は見上げるほど高い所を軽々と飛んでいった。



先週の日曜日、広島のレースから帰った翌日。
同じレースに出ていた友人から電話。



「ひろが事故で死んでもた」



ＪＲ大阪駅の雑踏の中でその言葉を聞いた時、
ちゃんと聞こえていたのに、
電話の向こうから聞こえる言葉の意味が理解できず
何度も聞き返してしまった。



マンションの外壁補修の作業途中、
ひろの乗ったゴンドラのワイヤーが突然切れ、
投げ出された彼は、あっけなくこの世を去った。








なにやってんだよ。

高い所は得意なハズやろ。








なにやってんだよ。

家族のために好きなバイクを降りたのに。









なにやってんだよ。

そんなに高いトコに飛んでったら

もう降りてこれないだろーが。










金曜日の通夜で、久しぶりに会ったひろは、
俺よりガタイが良いくせに狭い箱に入ってやがった。


通夜振舞いで賑やかな周りの音が聞こえなくなった。
掛ける言葉も涙も出ない。


電話を掛けてきた友人も私も
目の前の現実を飲み込めないでいた。





「あれは、ひろじゃない」



友人が呟いた。








傍らに飾られていたひろのヘルメットを撫でた。
薄っすら埃を被っていた。







納得できない何かが、今も胸に痞えている。
俺達を置いて、アイツは高いところへ飛んでった。