忙中閑話

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新国立競技場建て替え計画の無責任さにあきれる ~ 広田弘毅を見習え

2015-07-18 | 雑感

 建設費が高すぎるとして批判が多かった新国立競技場の建て替え計画がゼロベースで見直
されることになった。

安保関連法案の強行採決によって内閣支持率が低下したことから看過できなかったようだ。

いままで十分議論するだけの時間的余裕があったはずなのになぜ工期ぎりぎりまで決断ができな
かったのだろうかと不思議に思う。

そしてこの一週間余りの間の、迷走ぶりと関係者の責任の擦り付け合いには全くあきれている。
下村文科相。デザインの選考委員長である建築家の安藤氏。それにオリンピック組織委員長の
森元首相。

下村氏は問題のデザインを決めた安藤氏に「記者会見して経緯を説明すべき」として責任を安
藤氏に被せ、安藤氏は「自分はデザイン面だけで選考したのであって建設費についてはノータ
ッチ」、「建設費が高くなった経緯は自分も知りたいくらいだ」と逃げる。

たしかに選考委員には最終的な決定権はないだろう。だが建設費抜きで選考するのなら美的
感覚が多少なりともありさえすれば素人でもできる。建築家は建築のプロとして建設費の概算く
らいははじけるなずなのだから全く無責任としかいいようがない。

そして最も無責任なのが森元総理。ラグビーW杯の誘致に成功し国立競技場の建て替えが決
まったが自分が関係したのはここまでで、そのあとオリンピック開催が決まって計画が膨らんだ
のであって自分は無関係だという。これがオリンピンク組織委員長の発言である。

しかも組織委員長としては無報酬で日当しか貰っていないだとか、僅かばかりの議員年金だ
けで生活している、貰った日当も関係者の慰労のためにプールしているなど、これが首相を
務めた人の発言かと呆れてしまう。
(議員年金は私算で670万円。すべて税金。これを「僅か」という感覚もずれている)

同じ無報酬でも、破綻したJALの再建に尽力し見事重責を果たした稲盛前京セラ会長とは
月とスッポン、いや月とダニの方が妥当か。

実力もないのにさもありげに大きな態度で振舞う、全く目障りな存在である。

さらに最悪なのは民主党への責任のなすりつけである。オリンピック誘致、競技場建て替えは
民主党政権下で決まったこと、自分たちはそれを引き継いだだけだという。森氏以外からも
その発言があった。
ちょっと待ってほしい。政権交代して2年は立つ。再検討には充分過ぎる時間がたっている。しかも民主党政権時代に行った施策はことごとく否定し、凍結したはずの八場ダムをはじめ
として多くの土木工事を再開したではないのか。オリンピック事業は見直しもせずそのまま引
き継いだというのか。

ここで第二次世界大戦のA級戦犯として処刑された広田弘毅のことが思い浮かぶ。彼を題材にした「落日燃ゆ」(城山三郎著)に人となりが詳細に書かれている。
死刑判決を受けたのは7名で広田はその中で唯一の文官であった。
彼は日中戦争開戦前後に外相、首相、そして再度外相を務めた人で、旧憲法のもと天皇が持つ
とされた統帥権を楯に拡大暴走を続ける軍部に対して和平路線を推し進めたにもかかわら
ず戦争責任(共同謀議)を問われたのである。当時軍部を抑えることは命がけのことであった。

文民統制が進んでいる欧米には、統帥権が政権とは別系統であって政権にとって制御不能
なシステムとなっているのが理解されなかったことが有罪となった要因の一つとされるが、何
よりも大きなのは自己弁護を一切しなかった、つまり責任転嫁を全くしなかったことにあるとさ
れる。自己弁護をすれば他人を誹謗中傷することになるという考えだったらしい。
天皇へ戦争責任が及ばないように一身に責任を受けとめたともいえる。

いまのこの混迷を見ていると広田との落差がとてつもなく大きい。

さて計画はゼロベースで見直されることになったが果たしてうまく収まるかどうか今後も心配
である。
なにしろ文科省、組織委員会、それにオリンピック担当大臣までいる。責任者は一体誰なんだ?
「責任は自分にある」というだけで全く責任を感じていない責任者もまた困る。


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