今回起きたJR羽越線の脱線・転覆事故ですが、脱線の原因は強風であるということが確定的になってきました。
TVのニュース報道を見ていると、運転士には刻々と変わりつつある気象情報を伝えるシステムはないということで、私はこれを聞いてこれだけIT化が進んで便利になった世の中と比較して、ひどく前近代的だと感じました。
事故当時の運転スピードは時速100kmだったそうですが、そんなに強風が吹いているならたとえ減速の命令がなかったにせよ、列車に乗っている人は何かしら身の危険を感じたのではないでしょうか。私自身、普段利用するJRの路線で強風にさらされる箇所がありますが、時速100km近いスピードを出しているだけでちょっと不安を感じるときがあります。
そのようにして外部から系統だった情報を得ることができない場合、頼りになるのが自分の五感だけです。列車は雪のためかなりダイヤよりも遅れていたそうですが、それにしても、列車運行のルールには違反していなかったとはいえ、運転士の判断でもう少し減速して運転することはできなかったのでしょうか。
強風時の高速道路で運転していても、時速100kmと時速80kmでは全然車の安定感が違うことは、読者の多くも経験していることでしょう。
情報セキュリティ対策ではいろいろな技術的対策やマネジメントシステムの面の対策を行います。万が一に備えて、想定できることは網羅できるだけ網羅するのですが、事件・事故はその隙間をついて起こります。いわば「想定外」というわけです。
そして、その想定外のことが起こったときにどのように対処すればいいのか、実はこれが一番大切なことです。マニュアルや手順書に書かれていないから、何の手も打てなかった、上からの命令・指示がなかったので何もしなかったというのでは、情報セキュリティポリシーも、ISMS(ISO27001)認証も、プライバシーマークも何の役にも立たないのです。
現場で日々過ごしている人たちの五感。それが大きな事件・事故を防止する、あるいはその被害を最小限に食い止めるために絶対に必要なことです。
人間は自ら考え自分の意思で行動できる動物です。しかし、往々にして組織の一員になるとその能力を失いがちです。たしかに仕方がない面があるのはわかります。その二つの能力は相反する部分があるからです。組織の一員として周囲との協調性を保ちながら、しかし、自分の五感を働かせて自らの判断で行動できる人、そのような人が組織の構成員としては理想的なのだと、今回の事件をみているとあらためて感じました。
結末は平凡かもしれませんが、平凡を嗤う者は平凡に泣くと思います。平凡を馬鹿にし、奇を衒うことばかりがいいことのように思われますが、当たり前のことを当たり前にこなしていく日常生活の積み重ねが実は一番価値のあることなのです。
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