(原 光訳 2000年、沖積舎)
ダンテの「神曲 地獄」編 第10歌(カッコ内は筆子、その6)
◯師は力強く機敏な両手で墓の間、あのものの方へわたしを押し動かして言つた、「丁重な言葉づかひをしろ。」
わたしがその墓の下に着くと、あのものはすこしわたしを凝視(みつ)めてから、ほとんど蔑むやうに、わたしに尋ねた、「そなたの先祖は誰か?」
従順でありたかつたわたしは、隠さずにすつかり打明けた。すると眉をすこし釣上げて言つた、(ここまで前回)
◯「あのものたちはわしとわしの先祖と党派に、残酷狂暴に敵対してゐたのだ、だからわしは二度あのものたちを追ひ散らした。」
追ひ出されはしましたが、二度とも、」とわたしは答へた、「八方から戻つてきました、でもあなたの味方は戻る術(すべ)を良く学び取らなかつた。」
そのとき蓋の持ち上げられている墓の口から、一つの霊があの霊と並んで顎まで現れた、たしかに起き上がつて膝をついてゐたのだ。
(つづく)
◯2015年6月21日は、今年の第二十五主日。日聖協「聖書愛読こよみ」は、ルカ6章35~45節、その43節、「悪い実を結ぶ良い木はなく、また、良い実を結ぶ悪い木はない。」という。自然の秩序は首尾一貫している。ところが人間はそうではない。心があるからである。心の変化によって体が動き、動かされた体が実を結ぶ。ところがその心を制御できる人は誰もいない。従って人間の場合はよい木が悪い実を結ぶときがあるのである。まして最近はその心が神のごとくになった。危ない人間。
◯写真は、長崎伝道所の6月14日の特別伝道礼拝記念写真である。礼拝出席者39名であったとの報告。活水女学院からの聖歌隊の応援を受けたとのこと、よい伝道方法である。