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あらためての記-血管肉腫と心タンポナーデ(5)

我が家の慶事にドンペリで乾杯!

兄ちゃんもタキシード姿で

2007年春

 

■2012年5月12日(土)-病気の発覚③-  

目の前で、アルファの身体からどんどん血が抜き取られていきます。真っ赤な鮮血です。担当医がその血液を調べに部屋を出て行きましたが、やがて「癌細胞が認められます」と院長先生に報告すると、院長先生は即座に、恐らく血管肉腫だろうな…とつぶやきました。更に詳しく検査するには専門機関に依頼をせねばならず、結果が分かるのは二週間近くかかるとのことでした。が、原因が何かというよりも、今は目の前のアルファの命が助かるかどうか、祈るような思いで居ました。

済生会病院より心タンポナーデ図

心臓を保護している心膜の水は心嚢水(しんのうすい)、又は心嚢液といって、通常は20~50㏄ほどあるのだそうです。その中で心臓はぷかぷかと浮いている状態…そんな説明を医師から聞かされましたが、その分量が心膜の許容範囲だろうに、そこに300㏄もの血液が貯まるとどうなるか。心臓は狭い袋の中にパンパンになって閉じ込められ動けない、そうなるとあっという間に心臓は止まり、呼吸停止になってしまいます。手遅れにならないよう、早く貯まっている血液が抜けますように…その場にいたスタッフでさえも見守るしかなかった中、心電図を見ていた院長先生が、よしっと明るい声を出しました。その時、あーアルファは助かったのだと身体から力が抜けていくようでした。

心臓と心膜の間は1センチほどしかなく、心嚢水を抜くのは大変難しいです。まかり間違えば心臓を傷つける恐れがあるので医師の経験と技術が必要になります。この病院にその技術を持った先生と設備があって良かったと心からそう思いました。でないとこの一刻を争う事態になったアルファはきっと助からなかったでしょう。

心臓を停止させ掛けていた症状から脱して、アルファは意識を取り戻しました。予後のため、インキュベーターを備えた部屋で回復を図りますが、この中は、温度や湿度を一定に保つのみならず、必要濃度の酸素も満たしています。少しづつ元気になっていく気配があって、私はもう嬉しくて嬉しくて、初めて涙が出てきたのでした。この後に悲しい現実が控えているのだけれど、今日はアルファの命が助かったということだけで十分でした。

-続く-

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