2015年8月2日京都生まれの男の子、三代目アルファの成長日記です
ゴールデンアルファのブログ 「おいでアルファ」
あらためての記-血管肉腫と心タンポナーデ(6)
川遊び大好き兄ちゃん
院長先生から、改めて以下のような説明がありました。
『アルファ君の心臓の右心房に出来た大きな腫瘍が破れ、出血した血液が心膜の中に流れ込んだと考えられます。二日前に川遊びをしたということなので、恐らくそれがきっかけになったのでしょう。ただ川遊び以外でも同じ事になったと思います。例えば、山歩きをしている時、ボール遊びをしている最中、いつもの散歩中にだって起こりえたでしょう。川で泳がせているときに発作が起きなくてほんとうに良かったです。』
『今後の処置ですが、手術をして心膜をはがしてしまうという方法があります。心膜がなくなれば心タンポナーデは起きません。胸骨を折って開腹しますから大きな手術になりますが、この病院では明日にでも出来ます…』
そんな説明を聞きながら、その手術は対処法であって心臓に出来た腫瘍には何の効果ももたらさない、問題の解決にはならないと分かっていました。アルファに痛い思いをさせて何週間もの入院で家族と別れて不安な毎日を送らせる、それで病気が完治するというなら我慢もさせますが、血管肉腫、それも手の施しようもない状態では腫瘍の転移も起こり、全身に癌がはびこることになるでしょう。気持ちは決まっていました。-家に連れて帰ります-。
院長先生は、静かにうなづいて又このような症状が起きたら心膜から水を抜きましょう、心臓を圧迫させないために結局は同じことですからと。
薬は、レノペントという心臓のお薬とセンダンアルファというサプリメントが出ました。心臓のお薬は、炎症を抑え血圧を下げたり血管を広げたりして心臓の働きを助ける薬です。又、センダンアルファ…奇しくも同じ名前…というサプリは、抗がん剤ではありませんが、腫瘍を抑制することが臨床実験で確かめられた画期的な製品だそうで、期待ができるということでした。いずれも副作用がなくアルファを苦しめずにすむということは救いでした。
そして、最後に先生がもらした言葉、『あと二週間くらいでしょう、5月の25日か26日あたり…』その言葉が頭の中でグルグル回っていましたが、支払いを終え帰り支度をしている私の様子に、アルファが嬉しそうにしっぽを振っている姿を見ると、あと二週間だなんて…、院長先生のあの言葉は聞き間違いだ、と思い始めていました。
あらためての記-血管肉腫と心タンポナーデ(5)
我が家の慶事にドンペリで乾杯!
兄ちゃんもタキシード姿で
2007年春
■2012年5月12日(土)-病気の発覚③-
目の前で、アルファの身体からどんどん血が抜き取られていきます。真っ赤な鮮血です。担当医がその血液を調べに部屋を出て行きましたが、やがて「癌細胞が認められます」と院長先生に報告すると、院長先生は即座に、恐らく血管肉腫だろうな…とつぶやきました。更に詳しく検査するには専門機関に依頼をせねばならず、結果が分かるのは二週間近くかかるとのことでした。が、原因が何かというよりも、今は目の前のアルファの命が助かるかどうか、祈るような思いで居ました。
済生会病院より心タンポナーデ図
心臓を保護している心膜の水は心嚢水(しんのうすい)、又は心嚢液といって、通常は20~50㏄ほどあるのだそうです。その中で心臓はぷかぷかと浮いている状態…そんな説明を医師から聞かされましたが、その分量が心膜の許容範囲だろうに、そこに300㏄もの血液が貯まるとどうなるか。心臓は狭い袋の中にパンパンになって閉じ込められ動けない、そうなるとあっという間に心臓は止まり、呼吸停止になってしまいます。手遅れにならないよう、早く貯まっている血液が抜けますように…その場にいたスタッフでさえも見守るしかなかった中、心電図を見ていた院長先生が、よしっと明るい声を出しました。その時、あーアルファは助かったのだと身体から力が抜けていくようでした。
心臓と心膜の間は1センチほどしかなく、心嚢水を抜くのは大変難しいです。まかり間違えば心臓を傷つける恐れがあるので医師の経験と技術が必要になります。この病院にその技術を持った先生と設備があって良かったと心からそう思いました。でないとこの一刻を争う事態になったアルファはきっと助からなかったでしょう。
心臓を停止させ掛けていた症状から脱して、アルファは意識を取り戻しました。予後のため、インキュベーターを備えた部屋で回復を図りますが、この中は、温度や湿度を一定に保つのみならず、必要濃度の酸素も満たしています。少しづつ元気になっていく気配があって、私はもう嬉しくて嬉しくて、初めて涙が出てきたのでした。この後に悲しい現実が控えているのだけれど、今日はアルファの命が助かったということだけで十分でした。
-続く-
あらためての記-血管肉腫と心タンポナーデ(4)
口に鮭でもくわえていそうな…
獣チックな空組兄ちゃん
■2012年5月12日(土)/病気の発覚②
家に帰っても落ち着かない状態で、ただただ時間を待ちました。午後3時半、病院に行くと、アルファがエリザベスカラーをして診察室から出て来ました。『今、点滴を終えました』と看護士さんは言いましたが、その言葉は上の空で、それよりも私を見たアルファの顔がぱっと明るくなったことにどれほど安堵したことか。持っていたスマホでカシャ。アルファ、大丈夫だよ~と家で待っている主人に写真を送信しました。これから大変な結果を聞くことになるというのに…
準備が整ってやっとCTの検査です。この病院は県内屈指の設備を誇っていて、CTも3Dで断層撮影が出来ます。きっと簡単にアルファの身体の異変の原因を突き止めてくれる、そして、なんだ~、アルファ、こんなことだったんだ、と後で笑い話になる、とまだそんな希望的観測を抱いていました。例えば、散歩の時にでも何か悪いモノを食べて、最悪手術で取り除く~みたいなことを想像していたのです。
アルファを検査室に見送って、待合室でぽつねんと座っていましたが、20分ほど経った頃、看護士さんが呼びに来ました。中に入ると、アルファが背中を見せて診察台にぐったりと横たわっています。院長先生は、『アルファ君は失神しています。人間でいうと意識不明の重体です。今、心臓に貯まった血液を抜いていますが、非常に危ないです』と言いました。私は言われたことの意味が分からず呆然と立ち尽くしていました。
院長先生初め、担当医や看護師さん、その他研修医やスタッフが各々厳しい言葉を交わしていましたが、私はまだ状況がよく飲み込めない。CTの検査なのに一体これは何?そんな私に院長先生は大きく息を吸って、ゆっくりと説明をし始めました。
アルファが、心タンポナーデを起こし生死の境をさ迷っていること。その原因は心臓に出来た腫瘍からの出血で、今、心臓の膜に針を刺し、そこから心膜に貯まった血液を取り除いていること、そして、その施術を目の前でしているが、麻酔の必要もなく、それほどアルファが重体であること。貯まっている血液は大量で300㏄以上にもなることなど。少しづつ理解はしていきましたが、院長先生が指し示す3Dの断層映像を見ながら、頭が真っ白になるとはこういうことを言うのか、と次元の違うところで、思考回路が妙に冷静になっていくのを感じていました。
あらためての記/-血管肉腫と心タンポナーデ-(3)
娘にお姫様カールしてもらう
金髪ロン毛の空組兄ちゃん
■2012年5月12日(土)/病気の発覚①
あの日以降、アルファの様子を観察していましたが、食欲もあるし散歩も喜んで行くので大丈夫そうだなぁと安心しかかっていました。が、それでも私には気になることがありました。
一週間前の川遊び後、シャンプーをしたのですが、ふわふわで輝くほど綺麗だったアルファの毛がとても荒れているのです。まるでハリネズミのように全身の毛が逆立っていて、どんなになでつけてもその異様な毛の様子は治まりませんでした。新しく購入したシャンプ剤が悪かったのかなとも思いましたが、やっぱりおかしい、私は不安に駆られて、週末には再度病院で検査して貰おうと思っていました。ところが、その不安が的中し、この日の朝、アルファは、今度は四肢で踏ん張った仁王立ちの状態で動かなくなりました。お腹も痙攣していて、二、三歩歩いたかと思うとその場にドタっと倒れてしまったのです。もう便秘なんかじゃない。大急ぎで病院に運びました。
心電図をとり、血液検査もしてもらいましたが、前回と同じくそれほど重篤な数値は出ていません。貧血もない。ただ幾つかの肝臓に関する項目の数値が基準値より上がったり下がったりしていましたが、先生は首をかしげるばかりです。それでも私は、『アルファのこの様子は絶対に異常です。院長先生に診察をお願いします。』と必死で訴えました。
この病院はホームドクターとしての役割で通常は女性の医師が診てくれます。一方重い病になると、院長先生が診断や手術を手がけます。実はこの日は、手術が終日入っていて、アルファが院長先生に看て貰う時間はなかったのですが、私の訴えと、恐らく医師自身もアルファの様子に異変を感じ取られたのだと思います。急遽、CT検査や超音波検査をしてくれることになりました。
造影剤を入れたり点滴などの準備があるので、アルファを病院に預けて、私は一度家に帰ることになりました。午後3時半に来て下さい、とのことだったので、妙な胸騒ぎを覚えながらも、自宅に引き上げました。看護師さんに施術室に連れて行かれるアルファの、私の姿を追う不安そうな顔は、今でも思い浮かびます。
-続く-
あらためての記/-血管肉腫と心タンポナーデ-(2)
´
ボールを見つけ飛び込んだ垣根で´遭難´
救助される空組兄ちゃん
古いフォルダを整理しようとして
はからずも見つけたあの折の日記
落ち着いて読み返すと
当時一人で悶々としていた様子がうかがえます
血管肉腫を発症し
心タンポナーデを起こした
二代目アルファの闘病記
決して愉快な記事ではありませんが
振り返ってみようと思います
病い発覚から38日間
少々長くなりますが
懸命に生きた空組兄ちゃんの記録です
■2012年5月8日(火)の記/最初の異変
この日の午前9時半、私は仕事中でしたが、たまたま家に居た主人から、上記の写真と共に、「アルファの様子がおかしい、座ったまま動かずお腹が震えている、異常だからすぐに病院に連れて行く」とメールがありました。病院では、心電図やレントゲンを撮ったようですが、異常は見あたらず、ただお腹にガスが貯まっていて、便が2、3個見える、ということでガスを解消する注射をして貰って帰って来ました。
先生は様子を見て、おかしなことがあれば、すぐに連れてきて下さい、と言ったとのことでしたが、まさか、アルファが大変な病いに冒されているなんてこの時は考えもしませんでした。そして、その引き金になったのが、アルファがあんなに喜んだ川遊びだったということも…アルファ~便秘かー、でも大したことでなくて良かったと私達は安心したのでした。
-続く-
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