気の向くままに

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ヨルダンにエールを 

2015-01-30 08:24:46 | 日記

 

ヨルダンの首都アンマンを一度だけ訪れたことがある。1999年2月、フセイン前国王の葬儀を取材するためだ。アブドラ現国王の父君である。王宮に向かう葬列を沿道から見送る市民は約80万人にも上った。そのうち追いすがるように走り出す人たちが続出して、棺(ひつぎ)が群衆の渦にのみ込まれたようにも見えた。

 ▼生前、ラジオのニュースで自動車事故があったと聞きつけ、自ら四輪駆動車を運転して救助に駆けつけたことがある。「ヨルダンの父」とあがめられた前国王の、「民衆との触れ合い」を示すエピソードは数知れない。現国王も時に、タクシー運転手や高齢者に変装して、民情視察に出かけるらしい。

 ▼国土のほとんどを砂漠が占め、石油も出ない。激動の中東情勢のなか、周辺諸国の仲介役を務めることで、国の存立を図る。前国王から、そんな外交政策を受け継いできたアブドラ国王が、今最大の試練の時を迎えている。

  ▼過激組織「イスラム国」は、2005年に起きた同時爆破テロの実行犯の一人で死刑判決を受けた女の釈放を求めてきた。さもなくば、後藤健二さんとともに人質にとっている空軍パイロットを殺害するというのだ。対応を誤り国民の怒りを買えば、王政の危機にもつながりかねない。

 ▼国王が、パイロットの救出を国家の最優先課題と位置づけるのは当然である。だからといって、総額3千億円を超える経済支援を受けてきた、日本をないがしろにするつもりもないはずだ。

 ▼もともと皇室とヨルダン王室は、前国王の時代から密接に結びついてきた。アブドラ国王自身、11回も来日している親日家である。今は、ヨルダンのお家芸である交渉術を静かに見守るしかあるまい。後藤さんの無事を、切に祈りながら。

【産経抄】 1月30日

 

 

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