今日、母と岩合光昭氏の『ねこ』写真展を観に行ってきました。
海ちゃん―ある猫の物語 (新潮文庫) 価格:¥ 620(税込) 発売日:1996-10 |
5つの展示室と廊下に猫の写真がいっぱい。
『ニッポンの猫』シリーズの写真もあれば、外国で撮った異国猫の写真もある。
その中でいちばん印象に残ったのは、岩合さん夫妻が初めて一緒に暮らした猫、“海(かい)ちゃん”の写真を集めたスペースでした。
無邪気な子猫時代の海ちゃん。一面の菜の花の中で、牛の大きさに驚いて、新雪の中を一心に走って……。
そうしてやがて母親になった海ちゃんの、凛としつつけなげな姿。
でも、写真は海ちゃんの元気な姿ばかりですが、文章パネルでは海ちゃんとの別れも語られます。
平日だったせいかたまたま展示室に私たち二人しかいなかったし、母は字が少し読みにくいので私は小声でパネルを音読しました。
そうして核心のところにきたら、母の目が潤んできて、唇が震えだしたのにはびっくり。
母は男兄弟のまんなかで(正確には長姉がいるが、年が離れているので)ふだんはけっこう気が強いのです。めったなことでは泣いたりしません。
でも本当はデリケートなんだ、と感じるのはこういう時です。
螺旋階段を降りながら、母は、「あやちゃんが逝ってからまだたったの1年なんだもんね…」と呟いていました。
「こうしてやればよかった、と、たくさん後悔する」とも。
岩合さんも、海ちゃんとの別れに際して、強い後悔を味わったようです。
もっと幸せにできたのではないかと悔やんでらしたようでした。
でも、写真の中で海ちゃんの輝いていること!
ことに、本の表紙にもなっている横顔の海ちゃんの透明な瞳は、満ち足りているように私には見えました。
愛された猫なのだと思いました。
でも、猫に去られるとやっぱり、飼い主は多かれ少なかれ後悔するものなのでしょう。
それが私には、猫がこちらを愛するほどは、人間はなかなか愛を返せないせいではないかと思ったりするのです。