サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1)) 価格:¥ 861(税込) 発売日:1985-06 |
中学の時、『マルタの鷹』を読んだ。つまらなくはなかったけど、後味良くないな、と思った。
あまり書くとネタを割るので控えるが、結末は女子中学生にとってはいろいろモヤモヤ感が残るものだった。
また、同じころTVで『さらば愛しき女よ』の映画をちょっと見たときも、殴りあっている印象しかなくて、“なんて暴力的な話!”と思った。
つまり、中学生の頃はハードボイルドはちっともいいと思わなかったのだ。
けれど、高校の時短編『スペードという男』を読んで、“嫌な男だけど、ちょっとセクシーだ”と思った。
その後、フィリップ・マーロウものの『長いお別れ』など読んで、ちょといいかも……なんて思うようになった。
でも、私にミステリーを教えてくれた友達には言えなかった。
なんだかそういうものを読むことは、彼女に対する裏切りのような気がしたのだ。
今から考えると大げさだけど、でも、クリスティーものの登場人物たちは、暖炉の前で紅茶を飲み、優雅にテニスンの詩なんか暗唱しているのに、心に騎士を秘めているとはいえ、卑しい街で殴りあってる主人公はまずいだろう、と思った。
なのでこっそり読んだ。二十歳前後の時はちょうどタフな女性探偵(レディ・ガムシューなんていった)のブームが来ていたし、共感する部分もあってけっこうはまった。それから警察小説に流れ、いつしか、コージーもの(優雅な英国ミステリ)の方が遠くなってしまった。
それがちょっぴり後ろめたかったのだけれど、何年か後、彼女も女性探偵ものは読んだらしい、というのがわかって、ほっとした。また、ミステリーの好みも、多彩になったのを知って、これは少し意外だった。
けれど、それは当然だ、と今は思う。
私も変わっていったように、彼女だって、日々、移り変わって大人の女性になったのだ。
いや、母親になった彼女は、私よりもずっと真の意味で大人だ。
今はそんな彼女の手元に、どんな本があるのだろうか。
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