Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ダマスクローズ 17

2020年03月05日 | ダマスクローズをさがして — Ⅰ

    

1/26日に見ていただいた同じ薔薇の芽です。少し伸びました。

まったく同じ方向から撮った絵です。あれから40日過ぎました。

これから花をつける5月の中旬過ぎまでどのような成長をするのか注目していてください。

      

       


ダマスクローズ 16

2020年03月05日 | ダマスクローズをさがして — Ⅰ

『庭園の中で楽しげな人々がカロールを踊っているのを見ていた。ダンスをリードしている人々のようすを見ていると、庭園を探検して、美しい月桂樹や松や榛や胡桃の木を見てみたくなった。』

                                                                  

                    Harley 4425 f. 14v Dancing から

 

        

                    Carole Roman de la rose

             Guillaume de Lorris et jean Meun, Rouen ?, 3e quart du XVe s..

          BNF, Manuscrits, français 19137, f. 68 © Bibliothèque nationale de France

ナルシスの泉から流れ出る小川を見つめるわたし(次第に泉の方へと引き寄せられていきます)

 

フードを取れば、“わたし”ってこんなヘアースタイルなんですね。ちょっとびっくり!!(この写本では “わたし” は聖職者ではなく普通の若者としてとらえていたようです。この頃は御覧のように短髪が普通でした)

輪舞に加わる人々の中に ”美“という名の貴婦人が出てきます。彼女の描写の中に注目すべき箇所がチョーサー訳にあります。

『その顔色は白百合や小枝に咲く薔薇の花のようにあくまで白く。典雅な目鼻立ちをしていた。』

この箇所はフランス語の原典には記されていません。同じく、”美“ の頭上に置かれた赤い薔薇の冠についても原典にはない記述です。

チョーサー訳に登場する薔薇の花の色については心に留めておく必要がありそうです。

 

 


ダマスクローズ 15 

2020年03月04日 | ダマスクローズをさがして — Ⅰ

冒頭で掲げた絵をもう一度、イタリアの写本から引用しました。”私” の後ろに描かれた薔薇の花の色が気になったものですから。やはり赤、白とあまり色には頓着せずに描かれているようです。1353年画のミニアチュールですがきれいに残っていました。

 

                      

Miniature from a manuscript of the Roman de la Rose by Guillaume de Lorris and Jean de Meun, 1353. Found in the collection of the Bibliothèque de Genève.

 

 


ダマスクローズ 14

2020年03月03日 | ダマスクローズをさがして — Ⅰ

薔薇物語では『その被りものの上には、新鮮な薔薇で作った花飾りを載せている。手には鏡を保ち、豪華なリボンで髪を豊かにまとめていた。』と書かれていますが、絵の中の乙女とは少し異なります。

                                    

別の写本では、

 

        Roman de la Rose France, Paris, between 1340 and 1350 MS M.48 fol. 5v 

右手に鏡を、左手に櫛を持っています。その先には園に通じる扉が描かれています。

                  

           Royal 20 A XVII f. 7v Idleness and the Lover

 

この時代の美人の基準は、目と目の間隔が開いた広い眉間、愛嬌をたたえた目元、灰色がかった目の色、薔薇の花のように白い顔色、銅~真鍮のような色の髪、ほっそりとくびれた腰です。

 

 

 


ダマスクローズ 13

2020年03月01日 | ダマスクローズをさがして — Ⅰ

冒頭の口絵、右下の絵にある悦楽の園の中に作者が入っていきます。その時扉を開けてくれたのが「閑暇」という名の乙女です。閑暇 (Oiseuse) とはラテン語 otium の形容詞 otiosus に由来しています。訳者によれば、「人間の諸能力の開花」を意味するとありました。最初にご紹介した口絵(フランス写本1565 fol. 1r°)の右下に描かれた園の入り口に止まっている鳥 oisel、訳中では単に「小鳥」としか訳出されていませんが、これと対峙する名で興味深いと述べています。

これは翻訳者でなければ気の付かない事で、翻訳者冥利に尽きるところです。言葉は悪いが ”役得“ です。こつこつと地味な作業を続けている中で時にはこういう出来事に出会えるからこそ、一生をかけて『薔薇物語』を翻訳しようと思うのです。

訳者が訳注で指摘するように、“薔薇(の蕾)”は作者ギョームの意中の女性の象徴的表現ですが、寓意に満ちたこの物語では、その意味は多義的であり、常に不安定で変化に富んでいます。読み進めるには注意が必要です。

                                     

『庭園の周りの潜り戸を叩くとひとりの乙女が熊四手でできた小さな扉を開けてくれた。』

この情景を著すのが次の絵です。

  

                                    L'amant entrant dans le jardin de Déduit, accueilli par Oiseuse

                                                                   Roman de la rose

                            Guillaume de Lorris et jean Meun; Maître du Boèce, enlumineur, 1460?.

                        BNF, Manuscrits (Fr. fr 19153 fol. 5v) © Bibliothèque nationale de France

                                                 図版「閑暇」B.N. Ms 19153 fol.5v°から