胡散臭い

　ネットでふと目についたＭＶ。

　なんとなく見入りながら、すぐに胡散臭いな、と思った。

　理由はわからなかったけど、途中で切れたそのＭＶが、なんかの映画のもので、映画の中に出てくるバンドのＭＶだと後でわかった。

　それでが合点がいった。

　本職のひとがやってるＭＶじゃなかったからだ。

　……

　……

　……

　いやいや、ちょっと待って！

　何故本職でないと胡散臭い！？

　ＭＶに役者が出るなんて良くあることじゃん。

　なんで劇中バンドのＭＶだと胡散臭くて当然なのさ？

　と、自分で自分の感想が不思議だったから、他のＭＶと見比べて検証してみた。

　答えは案外すぐに出た。

　僕が観た劇中バンドのＭＶは、音楽を聴かせる事に特化してなかったんだよ。

　音楽でなく、役者を魅せることに力を入れていた。

　いや、ひょっとしたらそれは意図的にしたことじゃなかったのかもしれないけど、とにかく僕の眼には役者の方が目立って映った。

　音の魅力。

　歌詞の力。

　メロディの美しさ。

　等々、歌の持つ素晴らしさ以上に役者の力の方が輝いていた。

　だから、観た瞬間から違和感を覚えて、なんとなく胡散臭さを感じたんだ。

　これはある意味良いことなんじゃないかな、と思う。

　だって映画の一環なんだからさ。

　その映画に出ている役者さんには魅力があるという事だよ。

　音楽や歌なんかよりもね。

　それがわかったから、僕は安心して、そのＭＶと映画のことを忘れることが出来る。

　もちろん、映画も観に行ったりしない。