カタチあるもの

宇宙、自然の写真をメインに撮っていますが、時々、読書、日常出来事について書きます。

柘榴世界  パラレルワールド

2016-02-18 19:54:00 | 写真_自然

 

 寝ている時に見る夢は不思議だなと思う。夢を見ているときには自然なストーリーで展開していると思っているのに、目覚めて夢を思い返してみると、奇想天外、ストーリーなどあったものではない。また、人は起きている時も妄想という”夢”を見ることがあるし、妄想をストーリーとして組み立てて”小説”にすることもできる。そんな頭の中で描くストーリーを題材とした「月世界小説」という本を最近読みました。出張時の空いている時間に読もうと思って、本屋に寄ると「読者投票第2位」と帯に書かれており、何やら面白そうだ・・・・と買いました。こういう見出しに弱いです。

 時代は第二次世界大戦から30年経過した1975年、日本はアメリカの属国となっていて、日本語自体がなくなっていた。アメリカとの講和条約の中で「日本語の使用を禁止する」という条文があるのだが、そもそもだれも日本語を記憶していない。古事記でさえ英語で書かれている。言語学者の主人公は、ある日、そのことを不思議に思い、日本語について調べ始めたところ、どうやらある種の目覚めた人が日本語の物語を語ると現実を想像する強力な力があるらしいことが分かってきた。こんな感じで、3つのパラレルワールドを行き来しながら、幸せな現実を創造したい主人公達と神の物語に引き込みたいグループの戦いが始まっていくというSF小説です。言語兵器が登場するようなエンターテイメント小説で、話のテンポが良かったので1日で読んでしまいました。

 日本では、古来から人が発する言葉には言霊という霊力があり、現実に影響を与えると考えられてきました。言葉は物理的に考えると空気の振動ですが、その振動が感動を与えたり、喜びを与えたり、怒り、憎しみまでも与えるのですから不思議ですね。聖書ではバベルの塔の物語が語られていますが、神の怒りはバベルの塔の破壊やバベルの塔を人々の殲滅ではなく、言葉を通じなくすることでした。この時、神は同じ言語を話す人同士が集まる国に分割したようにも思えますね。言葉、言語、奥が深そうです。