アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

赤穂事件 情と仁

2023-02-08 08:56:40 | 漫画

       赤穂事件 情と仁



阿部 正武 (老中 赤穂事件担当)
「柳沢殿が儒学者の荻生徂徠を採用したそうだな」

三宅 尚斎 (儒学者 阿部正武に仕える)
「その者、手強き者で御座います」

阿部 正武
「其方が論破しろ!」

三宅 尚斎
「対立するのは、得策では御座いません」
「その者の説を破り、
理屈を立ちゆかなくさせることは容易い事ですが」
「その者を論破すれば
開き直り、筋の通らぬ理屈で防御するでしょう」
「そうなれば、水掛け論に陥り
大老格には太刀打ち出来ませぬ」

阿部 正武
「では、お前は
戦う前に負けを認めるのか!」

三宅 尚斎
「いきなり論破を目指すのではなく
相手の動向を見極めてから
それ相応に対処する事が肝要と・・」

阿部 正武
「今、大老格は弱っておる」
「其方が勝つ絶好の機会じゃぞ」

三宅 尚斎
「勝ち負けの問題では御座いません」

阿部 正武
「んんゥ」
「儂は今、赤穂事件の担当を任されておる」
「大老格は、儂に責任転嫁しようとしておるのじゃぞ」
「負ければ、儂はお終いじゃ」

三宅 尚斎
「ご安心下さいませ」
「負けない為に
論破は為さらぬ方が宜しいのです」
「決して負ける事は御座いません」

阿部 正武
「老中間では、
赤穂に温情ある裁きをする事を決定した」
「しかしな、
もしも上様が赤穂を許さぬと仰せであれば
我らの立場は危険になるのじゃぞ」
「儂は、赤穂事件の担当じゃ」
「この決定で、責任を問われる事になるのじゃぞ」

三宅 尚斎
「荻生徂徠は情と仁を分ける事で
赤穂を陥れようとしております」
「もしも、我らが徂徠を論破すれば
赤穂方に味方する事になるのです」
「それは、非常に危険な事で御座います」

阿部 正武
「んんゥ」
「左様じゃ」
「しかしな」
「他の老中共は赤穂を助けたいと考えておるぞ」
「儂は、如何すれば良い?」

三宅 尚斎
「先ず、情を忠義に置き換える必要が御座います」
「そして、忠義を天下様に尽くす事に御座います」
「赤穂は、仇を吉良としておりますが
実際の仇は、吉良殿ではないかも知れません」

阿部 正武
「如何なる事?」

三宅 尚斎
「大老格が赤穂を許さぬ事を決めた時に
赤穂の仇は吉良であって
吉良で無し」

阿部 正武
「んんぅ」
「では、災いを逃れる為に
我らは、積極的に
吉良を討たせるのか?」

三宅 尚斎
「左様に御座います」

阿部 正武
「儂は、善良なる良将として
大いに称賛されてきた」
「露骨な悪だくみは出来んぞ」

三宅 尚斎
「悪だくみでは御座いません」
「武将は陰謀・策略・計略をもって
敵に打ち勝つので御座います」

阿部 正武
「んんゥ」
「其方は、朱子学を遵守しておるのではないのか?」

三宅 尚斎
「朱子学は基本で御座います」
「体と精神と万物は一体で御座います
良き精神には健全なる肉体が宿り
善良なる行いは、万物の平穏に繋がるのです」

阿部 正武
「では、策略は善良と言えるのか!」

三宅 尚斎
「赤穂の行動で左右する事に
いちいち拘っていてはいけません」
「赤穂の仇は吉良であって
我らでは有りません」

阿部 正武
「んんゥ」
「左様じゃ」
「情を捨てて
忠義を貫かせ
赤穂に吉良を討たせるのじゃな」

三宅 尚斎
「はい」
「それが得策に御座います」

阿部 正武
「しかし、儂は善良なる良将なのじゃぞ」
「儂の評判が落ちるぞ」

「んんゥ」
「・・・・・・・・」
「裏工作はするが
目立つ行動は出来んぞ」

三宅 尚斎
「責任転嫁致しましょう」

阿部 正武
「誰に?」

三宅 尚斎
「赤穂藩士に御座います」

阿部 正武
「それは、清廉潔白と言えるのか?」

三宅 尚斎
「赤穂藩士の忠義で
吉良を討つので御座る」
「主殿に責任は御座いません」

阿部 正武
「もしも、逆襲を受けたら如何する?」

三宅 尚斎
「天下様に従い為さいませ」

阿部 正武
「んんゥ」
「他の老中共は赤穂を救いたいと申しておる」
「面倒じゃぞ・・」

三宅 尚斎
「吉良殿が討たれれば解決致します」