三日月ノート

日々の出来事を気ままに。

【読了】人間の未来AIの未来

2018年09月15日 15時59分17秒 | 書籍

山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長と、羽生善治棋士の対談形式になっています。

科学と将棋の世界でのAIの位置づけや今後どのようになっていくのだろうかというお話が、それぞれの専門の立場で語られて非常に興味深かったです。

帯に書いてあるような「10年後、100年後の世界の予言」は出てこないのですが・・・。

本書の中で、「将棋で言えば、現状、AIは過去のデータを基にその場その場で一番いい手を指してくるのに対し、今日は攻めて行こうとか、持久戦でいこうといった「対局の流れ」から次の手を指すことはできない」というのが印象的でした。(もちろん今は流れを読むような研究も進められているようですが。)

そして、人間と機械(AI)の大きな違いの一つに、人間が必ずしも「最適解」を選んでいるわけではないという事も、言われてみればそうだなと思います。

「成功する確率は1%ですよ」と言われたからといって、チャレンジするのを諦めるのか?というと、そうではない場合も多いですからね。むしろ失敗から得られるものも数多くある。人間の可能性は「わざわざ最適解を求めない事」に残されているのかもしれませんね。

気軽に読める内容なので、頭を休めるのにもいい本だと思います。

『人間の未来AIの未来』講談社
山中伸弥/羽生善治

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【読了】降霊会の夜/浅田次郎

2018年08月08日 10時23分17秒 | 書籍

久しぶりの「途中でやめられなくなる小説」でした。

ひょんな事から生者と死者の魂(霊)を呼ぶ「降霊会」に招かれ、ずっとわだかまっていた人と語り合うというお話しです。

「イタコ」みたいなものですが、ホストの女性3名と主人公がテーブルで輪になって手を繋いで魂を呼び、4名のうちの誰かに魂が憑依して話をするというスタイル。

自分が呼びたい魂が来るとは限らず、別の「知っている人」の魂が来ることもあるし、降霊する魂は一度に数名になることも。

登場人物一人一人の繊細な心の動き、他者との関わりの中で生まれる身勝手さと罪の意識、それを認めたくない自分の心などが丁寧に描写され、読んでいるほうも苦しくなるほど。
最後まで引き込まれるように読み進めてしまいました。

人生において誰かと関わる以上、関わった時間の長短にかかわらず必ず互いの人生に何らかの痕跡は残るもので、相手を傷つけてしまったときには同時に自分の心も傷つき、和解するまでその傷は残り続ける。

自分が「降霊会」に参加できるなら誰を呼びたいだろう。
ふと考えてしまいました。

いやぁ、小説って、ホントにいいもんですね。
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『降霊会の夜』
浅田次郎/朝日文庫

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【読了】教誨師

2018年08月06日 11時26分53秒 | 書籍
長い間教誨師を務めていた浄土真宗の僧侶「渡邉」と、刑務所の関係者へのインタビューを元に執筆されたノンフィクションです。

死刑制度についてだけでなく、罪とは何なのか、人が人を罰するということは何なのかを深く考えさせられる作品でした。

そして「死刑」という制度がある以上、死刑囚だけではなく刑務官や教誨師など、それに直接関わる人たちの心にも多くの深い傷を与えるという事は見逃せないと思います。

死刑制度をどうすべきかはもっと議論されなければならないと思いますし、そのためにはこの本に書かれているような事柄、犯人が罪を犯すまでのさまざまな経緯、罪を犯してしまった背景、死刑が確定してからの死刑囚の心の動き、死刑に関わる全ての人の苦しみを、まずは知ることが大切だと思います。

そういった点で本書は、死刑廃止、存続、いずれの立場の人にとっても有益な内容であると思います。


この記事は2000年の新聞です。その頃、気になる記事を色々スクラップにしていたのですが、今でも心に残っている記事の一つです。
本書を読んでふと思い出し、引っ張り出してしまいました。

人は、死をもってしか償えないものはあるのでしょうか。
人が、死をもって償えるものはあるのでしょうか。

とても重たい問いだと思いますが、真剣に考えるべき問いでもあると思います。
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『教誨師』
堀川惠子 著
講談社 Kindle版

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読了『退屈をあげる』

2018年07月13日 18時30分57秒 | 書籍


元ノラ猫(♀)のモノローグ。
拾われた日のことやその後の生活が、猫目線で語られています。

媚びずに思ったままを語っているのですが、これがなんとも猫らしくて。

版画もとても素敵です。

最後の「あとがきにかえて」も、猫を保護したかたなら誰もがうなずくほどの猫に対する気持ちが書かれていて泣けてくる……。

「私は知りたかった。猫が幸せかどうかを」

これは本当に猫と出会ってしまった者の永遠の問いかけですね。

猫好きのかたには凄くおススメです。

『退屈をあげる』坂本千明/青土社

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読了:日本の気配/武田砂鉄

2018年06月24日 11時10分24秒 | 書籍

「一億総忖度社会の日本を覆う、危険な「気配」を追うフィールドワーク」と帯(帯が表紙の2/3を占めているので、これはもはや帯ではなく表紙の一部か?)にありますが、自己主張せずに大人しく、他人の顔色を伺いながら生きている日本人の生態を、様々な事象を織り交ぜながら淡々と切り取る本書。

毎日、ニュースなどで目にする「イラっ」を一つに掻き集めて絶望感を与えてくれる内容です。

政治に関する部分は言わずもがなで、うんざりくる事柄がこれでもかこれでもかと書かれているのですが、これが今の日本の現実。

最終章の「強いられるコミュニケーション」の中の「訃報をこなす感じ」は、大人になると通常は「不謹慎」のそしりを受けないよう、日常から最新の注意を払って生活してるんだなと、思い当たる節が多々ありました。

全般的に今の日本のダメさ加減を再認識させられ、ドンヨリした気分になる内容ですが、それでも筆者が言うように、

「ムカつくものにムカつくと言うのを忘れたくない。」

「改めて読み返すと、いちいちそんなこと言わなくてもいいのに、と思うのだが、今、いちいちこんなことを言わなくてはいけないのだ、と思い直している。」

最後はここに激しく共感したのでした。

『日本の気配』
武田砂鉄著/晶文社

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