『サクリファイス』『エデン』『サヴァイヴ』に続く4作目です。
前半は登場人物の関係や背景描写で淡々と物語が進んでいきますが、それが後半に向かって徐々に重くのしかかってきます。
そして何より、自転車競技をやっている人なら誰もが共感できるのではないかと思わせられる心理描写は、読んでいて胸につまされるものがあります。
最後の数ページ、レースのスタートからゴールまでの間、主人公は自分の過去、ライバルの思いと対峙し、徐々に気持ちが変化してゆきます。
ロードレース特有の「自分を犠牲にして他者を生かす」ことや、スポーツに限らず「誰かの思いを背負って走る」ということを身を以て体験し、ここで初めて主人公は単に「自転車の才能がある」という段階から、「ロードレースを知り、走る」という段階へステップアップしてゆくのでした。
主人公は「1年だけ」という約束で自転車部に入部したわけですが、一度自転車競技に魅せられた者はきっとそれを捨て去ることなどできないように思います。
続きが気になる終わり方でした。
自転車競技(特にロードレース)をやっているかたには一読をオススメいたします。