添付画像は文献「Etiology of Congenital Scoliosis」The university of
Pennsylvania Orthopaedic Journal 2002 より引用したものです。
今回は、この文献より、先天性側弯症と診断される脊柱変形(病態)とはどういう
形態なのかについて、医学分類という切り口から説明を試みてみたいと思います。
ものごとを「分類」する、という作業は日常生活でも頻繁に行われるものです。
整理整頓することにより、後々に行われる作業が効率よくなることは説明するまでもないと思います。
これは医学においても同様です。病気を治療する為には、まずその病気そのものを
「定義」することから始まります。例えば、A先生が「風邪とはこれこれこういう
ことです」といい、ところがB先生が「風邪とはかくかくしかじかのこと」だ、
という具合に、その病気の定義自体が定まらなければ、その病気に対する治療法がどうあるべきか。という次元の共有化ができません。
風邪という定義が定まったとしたら、次には、その風邪にも実は幾つかの「タイプ」があるのだ。という具合に細分化する作業が行われます。そうすることで、
国内はもとよりのこと、世界中の先生がたが「症例」を共有化することができます
症例を共有化することができれば、例えば、A-1タイプの治療としてはXXXX薬が有効であった、B-2タイプの治療にはYYYY薬が有効であった。という具合に、どの治療が最適なのか、どういう方針でその病気に対応すれば良いのか、という治療次元での知識と情報の共有化が可能となるわけです。
医学が民間療法と根本的にことなるのは、こういう面からも明確です。民間療法とは魔法の世界であり、医学とは科学の世界です。あざとい民間療法者は、さすがに
現代人に「これは魔法です」と言ったのでは信じてもらえないために、あたかも
科学性があるかのような衣(ころも)を着せて、皆さんを信用させようとします。
科学の世界ではなんの価値もないアダムスミス大学なる幽霊大学から「理学博士」を授与されたなどというのは、まさにその衣(ころも)以外のなにものでもありません。
科学とはある意味では分類することで成立している世界ともいえるのかもしれません。そして、先天性側弯症の場合も、同様に病態(脊柱の変形状態)を分類する作業が行われています。添付図がその分類になります。
同文献より一部を引用しますと、
The congenital vertebral anomalies are classified based
on failure of formation, failure of segmentation and a combination
of the two (mixed) (Fig. 1). The most common type
of failure of formation anomaly is a hemivertebra. This is
where a portion of the vertebra is missing resulting in a
small, triangular shaped “half vertebra” or hemivertebra.
Hemivertebrae can be subclassified based on their relationship
to the adjacent spine (segmented, semisegmented, nonsegmented).
When several vertebral segments fail to separate
bilaterally, a block vertebra results producing fused
vertebral bones. Unilateral unsegmented vertebral bars are
caused by the failure of segmentation only on the left or
right side of the spine.
先天性椎体異常は形態の違い(椎体分離異常や椎体癒合とのコンビネーションなど)
をもとに分類する。もっとも一般的に見られるタイプは、半椎体(hemivertebra)が存在するタイプである。これは、椎体の大きさ/形状が、本来のあるべき大きさよりも小さかったり、三角形であったり、半分であったりする場合をいう。
半椎体(hemivertebra)は、隣接する脊椎との連続性異常の有無によりさらに細分化され、それらは 分節タイプ(椎体がそれぞれ本来あるべきように独立している)、半分節タイプ、非分節タイプ、 というように区分される。
さらに、分節しているべき椎体の片側だけが上下椎体と癒合(ゆごう....結合している状態)しているタイプもある。これは右側だけが癒合している、あるいは左側だけ
が癒合しているタイプである。
------------------------------------------------------------------------
(august03より)
添付図とのリンクさせて上記をレビューしますと、分類は下記のようになるかと
思います。
A : Hemivertebrae(半椎体タイプ)
図のように、本来は四角形であるべき椎体が、三角形をしているようなタイプ
三角椎体の存在する場所や大きさは、個々の患者では異なることになる
B : Failure of segmentation (分離or分節異常タイプ)
椎体は本来それぞれ分離独立しているべきなのに対して、このタイプでは
椎体どうしが癒合している。癒合している部分によって、Block vertebra
(正常椎体どうしが上下で癒合)、Unsegmented bar(椎体の一部が癒合)、
C : Mixed (混合型)
Unsegmented bar with hemivertebrae(三角椎体を伴う非分離タイプ)
ここで用いた和訳の専門用語としての正確性を検証できませんでしたので、正しい
用語ではない可能性がありますが、意味としては間違ってはいないと考えます。
分類に対する知識を得てもそれが何になる、と思われかもしれませんが、皆さんが
分類を知り、どのような病態がお子さんの背中で発生しているかを知ることは決して
無駄な知識ではありません。ひとつには、先生からの説明が理解しやすくなると
思います。それはなによりも、手術とも関連した重要事項となります。
先生がたは、患者さんの症状をMRIやCT等を駆使して詳細に検査を行います。そして
その検査結果から、患者さんの脊柱がどのように変形しているかを把握します。
それを基礎地図とすれば、その地図をもとにして、どういう手術をしなければなら
ないかを先生がたは考えることになるわけです。脊柱には、脊髄神経があり、血管
があり、筋肉もあります。どこをどのように切開し、どういうアプローチをとるか
どうやってこの三角椎体を取り除くか、取り除いた後をどういう具合に対処するか
等々の手術計画を練ることになるわけです。それがどういう手術となるかを理解す
ることで、皆さんは、その手術のリスクの大きさ(あるいは小ささ)と、もしその
手術をしなかった場合お子さんがどういう状態になるかについて冷静に考える下地
になると思います。
非情な言い方ですが、手術を受けるかどうかを最終的に決定するのは親御さんであ
る皆さんの役割です。
ネット上では、様々な意見を目にすることがあると思います。手術はするな、という
意見とも脅しともとれる発言も目にするでしょう。そのような意見に従うのも良い
かもしれません。ただ、仮にその意見に従ったとしても、あるいは従わなかった
としても、その結論と、そこから得られる「結果」を背負っていくのは、お子さん
自身である。ということを忘れないでください。
私august03は、手術はできれば避けたい。ということを基本としてこのブログを
書いています。しかし、しなければならない手術を医学的根拠もなく「してはいけ
ない」という発言をする考えもありません。大切なことは、他人の意見に惑わされることなく、ご自身がしっかりと理解することに努め、そして、ご自身で結論を
だすことです。ネット上には、誰もその結果に責任をもつ人はいません。
あなたご自身以外にはいないのです。自分が出した結論だからこそ、お子さんと共に
その結果と歩んでいけるのだと思います。そして、その結果に悔いを残さない為に
しなければならないのは、ネット上の誰かに相談することではなく、この病気が
どういうものであり、お子さんがどういう状態にあり、手術をした場合としない
場合ではどういうことが起こるのかを理解することです。理解するために、一生懸命に
勉強して欲しいと思います。
勉強することで、皆さんはもうひとつの大きな能力を得ることができるはずです。
それは、「医者を見る目」と言っていいでしょう。たとえどんなに忙しい医者でも
手術についての説明はきっちりとしてくれます。その説明を聞いたとき、皆さんの
中には、この先生の言っていることは正しい、この先生に全てを任せよう。という
判断できる能力が備わっているはずです。それは直感的なものかもしれません。
しかし、そのような直感とて、まったく無知の人では得られない範疇のものです。
正しい知識を学び、正しい情報にもとづいて検討し、そして最後はご自分の目で
全てを託せると感じられる医師を探してください。私たちには運命を変える力は
ありません。しかし、私たちには、医師を探す力は備わっているのです。
Pennsylvania Orthopaedic Journal 2002 より引用したものです。
今回は、この文献より、先天性側弯症と診断される脊柱変形(病態)とはどういう
形態なのかについて、医学分類という切り口から説明を試みてみたいと思います。
ものごとを「分類」する、という作業は日常生活でも頻繁に行われるものです。
整理整頓することにより、後々に行われる作業が効率よくなることは説明するまでもないと思います。
これは医学においても同様です。病気を治療する為には、まずその病気そのものを
「定義」することから始まります。例えば、A先生が「風邪とはこれこれこういう
ことです」といい、ところがB先生が「風邪とはかくかくしかじかのこと」だ、
という具合に、その病気の定義自体が定まらなければ、その病気に対する治療法がどうあるべきか。という次元の共有化ができません。
風邪という定義が定まったとしたら、次には、その風邪にも実は幾つかの「タイプ」があるのだ。という具合に細分化する作業が行われます。そうすることで、
国内はもとよりのこと、世界中の先生がたが「症例」を共有化することができます
症例を共有化することができれば、例えば、A-1タイプの治療としてはXXXX薬が有効であった、B-2タイプの治療にはYYYY薬が有効であった。という具合に、どの治療が最適なのか、どういう方針でその病気に対応すれば良いのか、という治療次元での知識と情報の共有化が可能となるわけです。
医学が民間療法と根本的にことなるのは、こういう面からも明確です。民間療法とは魔法の世界であり、医学とは科学の世界です。あざとい民間療法者は、さすがに
現代人に「これは魔法です」と言ったのでは信じてもらえないために、あたかも
科学性があるかのような衣(ころも)を着せて、皆さんを信用させようとします。
科学の世界ではなんの価値もないアダムスミス大学なる幽霊大学から「理学博士」を授与されたなどというのは、まさにその衣(ころも)以外のなにものでもありません。
科学とはある意味では分類することで成立している世界ともいえるのかもしれません。そして、先天性側弯症の場合も、同様に病態(脊柱の変形状態)を分類する作業が行われています。添付図がその分類になります。
同文献より一部を引用しますと、
The congenital vertebral anomalies are classified based
on failure of formation, failure of segmentation and a combination
of the two (mixed) (Fig. 1). The most common type
of failure of formation anomaly is a hemivertebra. This is
where a portion of the vertebra is missing resulting in a
small, triangular shaped “half vertebra” or hemivertebra.
Hemivertebrae can be subclassified based on their relationship
to the adjacent spine (segmented, semisegmented, nonsegmented).
When several vertebral segments fail to separate
bilaterally, a block vertebra results producing fused
vertebral bones. Unilateral unsegmented vertebral bars are
caused by the failure of segmentation only on the left or
right side of the spine.
先天性椎体異常は形態の違い(椎体分離異常や椎体癒合とのコンビネーションなど)
をもとに分類する。もっとも一般的に見られるタイプは、半椎体(hemivertebra)が存在するタイプである。これは、椎体の大きさ/形状が、本来のあるべき大きさよりも小さかったり、三角形であったり、半分であったりする場合をいう。
半椎体(hemivertebra)は、隣接する脊椎との連続性異常の有無によりさらに細分化され、それらは 分節タイプ(椎体がそれぞれ本来あるべきように独立している)、半分節タイプ、非分節タイプ、 というように区分される。
さらに、分節しているべき椎体の片側だけが上下椎体と癒合(ゆごう....結合している状態)しているタイプもある。これは右側だけが癒合している、あるいは左側だけ
が癒合しているタイプである。
------------------------------------------------------------------------
(august03より)
添付図とのリンクさせて上記をレビューしますと、分類は下記のようになるかと
思います。
A : Hemivertebrae(半椎体タイプ)
図のように、本来は四角形であるべき椎体が、三角形をしているようなタイプ
三角椎体の存在する場所や大きさは、個々の患者では異なることになる
B : Failure of segmentation (分離or分節異常タイプ)
椎体は本来それぞれ分離独立しているべきなのに対して、このタイプでは
椎体どうしが癒合している。癒合している部分によって、Block vertebra
(正常椎体どうしが上下で癒合)、Unsegmented bar(椎体の一部が癒合)、
C : Mixed (混合型)
Unsegmented bar with hemivertebrae(三角椎体を伴う非分離タイプ)
ここで用いた和訳の専門用語としての正確性を検証できませんでしたので、正しい
用語ではない可能性がありますが、意味としては間違ってはいないと考えます。
分類に対する知識を得てもそれが何になる、と思われかもしれませんが、皆さんが
分類を知り、どのような病態がお子さんの背中で発生しているかを知ることは決して
無駄な知識ではありません。ひとつには、先生からの説明が理解しやすくなると
思います。それはなによりも、手術とも関連した重要事項となります。
先生がたは、患者さんの症状をMRIやCT等を駆使して詳細に検査を行います。そして
その検査結果から、患者さんの脊柱がどのように変形しているかを把握します。
それを基礎地図とすれば、その地図をもとにして、どういう手術をしなければなら
ないかを先生がたは考えることになるわけです。脊柱には、脊髄神経があり、血管
があり、筋肉もあります。どこをどのように切開し、どういうアプローチをとるか
どうやってこの三角椎体を取り除くか、取り除いた後をどういう具合に対処するか
等々の手術計画を練ることになるわけです。それがどういう手術となるかを理解す
ることで、皆さんは、その手術のリスクの大きさ(あるいは小ささ)と、もしその
手術をしなかった場合お子さんがどういう状態になるかについて冷静に考える下地
になると思います。
非情な言い方ですが、手術を受けるかどうかを最終的に決定するのは親御さんであ
る皆さんの役割です。
ネット上では、様々な意見を目にすることがあると思います。手術はするな、という
意見とも脅しともとれる発言も目にするでしょう。そのような意見に従うのも良い
かもしれません。ただ、仮にその意見に従ったとしても、あるいは従わなかった
としても、その結論と、そこから得られる「結果」を背負っていくのは、お子さん
自身である。ということを忘れないでください。
私august03は、手術はできれば避けたい。ということを基本としてこのブログを
書いています。しかし、しなければならない手術を医学的根拠もなく「してはいけ
ない」という発言をする考えもありません。大切なことは、他人の意見に惑わされることなく、ご自身がしっかりと理解することに努め、そして、ご自身で結論を
だすことです。ネット上には、誰もその結果に責任をもつ人はいません。
あなたご自身以外にはいないのです。自分が出した結論だからこそ、お子さんと共に
その結果と歩んでいけるのだと思います。そして、その結果に悔いを残さない為に
しなければならないのは、ネット上の誰かに相談することではなく、この病気が
どういうものであり、お子さんがどういう状態にあり、手術をした場合としない
場合ではどういうことが起こるのかを理解することです。理解するために、一生懸命に
勉強して欲しいと思います。
勉強することで、皆さんはもうひとつの大きな能力を得ることができるはずです。
それは、「医者を見る目」と言っていいでしょう。たとえどんなに忙しい医者でも
手術についての説明はきっちりとしてくれます。その説明を聞いたとき、皆さんの
中には、この先生の言っていることは正しい、この先生に全てを任せよう。という
判断できる能力が備わっているはずです。それは直感的なものかもしれません。
しかし、そのような直感とて、まったく無知の人では得られない範疇のものです。
正しい知識を学び、正しい情報にもとづいて検討し、そして最後はご自分の目で
全てを託せると感じられる医師を探してください。私たちには運命を変える力は
ありません。しかし、私たちには、医師を探す力は備わっているのです。
NTT東日本関東病院/整形外科は東大系の病院です。
部長の下出先生は、脊椎分野において国内でも著名な先生でいらっしゃいます。
小児脊柱変形手術数は年間10数例を過去10年ほどにわたり実施されておられ、この症例数は全国の大学と比較しても同じくらい、あるいは多いほうだと思います。
側弯症手術は、大学だから良いとか、総合病院だから劣るとか、そういうことはありません。
下記は病院ホームページからの抜粋です。
「過去8年間102例の手術による合併症は、特発性側弯症では1例も発生していません。(中略)手術による感染例や生命に関係する重篤な合併症はありません。」
お子さんの手術を経験されたお母さんのコメントですが、「この先生ならば信頼できる。と感じられるかどうか。そこが先生を選択するときのポイントになると思います」
大学により、先生により、「手術方法」が異なることはままありえますので、セカンドオピニオンを求められる場合は、系列の違う病院(大学)にいかれると参考になると思います。
掲示板(先天性側弯症こどもの広場)に、ときおり病院名や先生のお名前も書き込まれることがありますので、そちらもご参考にされてはいかがでしょうか。
august03としてのコメント:
小学六年生という年齢から想定されますこと、及び三角椎体の除去ということですと、部分的手術の範疇と思います。今後の身長(成長)のことなどをご心配される必要はないようですので、手術のタイミングは、先生がサジェスションされたときが、より良いタイミングだと思います。三角椎体がある限り、体が大きくなっていくほどに、その部分に負担がかかり、その状態が続くことは決して良いことではありません。このままにしておいた場合、将来どういうことが想定されるかは先生よりご説明があったと思います。
セカンドオピニオンをとられた場合も、おそらく同じ意見が示されるだろうと予想します。
手術にさいしては、お子さんの先生に対する気持ち、そしてご両親の先生に対する気持ち....信頼感の有無が最終的な判断要素になるのではないでしょうか。