~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

乳幼児期側弯症について お母さん方へ予備知識を目指して

2008-12-07 23:42:42 | 乳幼児期側弯症
側わん症.VEPTRの会の記事(12月6日)より引用させていただきます;
“患者家族の交流会を兼ねて専門の先生を招いて講習会(相談会)等があれば...
不安を抱いている患者・家族の気持ちも前向きに治療を頑張っていけるのでは
ないか” という声がありました。

-----------------------------------------------------------------
国内にも様々な病気の家族会が立ち上がり、患者さん同士で助け合える場があり
ますが、残念ながら側弯症については、現実にアクティブに活動が見える患者会
は、唯一「側わん症VEPTRの会」があるだけだと思います。(あやめの会は会員制の
ためどういう活動をされているのかは不明なので、ここでは省略させていただき
ます) 少なくとも、この二年間ずっとネット検索を続けてきて活動が外から確認
できたのは、VEPTRの会だけでした。
患者会があることのもっとも大きなメリットは、「声」をだすことができる、
ということだと思います。VEPTRの会はその声を大きく広げることにより、医療
機器VEPTRの国内早期認可を獲得することに近づくことができました。
そして、患者会があることにより、VEPTRの会の皆さんが次に目指しているような
先生を招いての講習会(相談会)というような輪も実現することができると思います

昨日アップしました広島の泉先生のような活動にも通じることだと思いますが、
正しい知識、正しい情報、そしてどういう方向を目指せばいいかは、私のブログも
含めて、専門外のものが書き連ねることは決して「あるべき姿」ではありません。
側弯症のこどもたち/お母さんがたにとって、本当に必要なものは、「患者の会」
なのかもしれません。例えば、ブックマークにもあります「日本マルファン協会」
では定期的な会合に側弯専門の先生を招待されて説明を聞くという活動を実践され
ています。そのような会が定期的に開催されるならば、「側弯症に対する理解」も
広まっていくのではないかと思います。
患者会を設立運営するのも容易なことではありませんが、ぜひともそういう機運が
広がってくれることを願ってやみません。

--------------------------------------------------------------------------
さて、ここでは、そのような説明会も含めて、皆さんが外来診察等で先生から
説明を受けるときに、予備知識があるのとないのでは先生の話している内容の理解
がまったく異なることになりますので、基本な部分だけは掴んでもらえるように
内容を噛み砕いて説明してみたいと思います。

(私がここで言う「皆さん」とは、先生から病気の説明を初めて受けるお母さんを
想定してのものです)

こどもの側弯、その中でも思春期特発性側弯ではなく、それ以前の乳幼児期から
学童期にかけての側弯について整理してみたいと思います。

[ 側弯症 ] と同じ言葉で呼ばれますが、その中身はかなり異なるため、はじめて
診断されたお母さんには、何がなんだかわからない事態が生じてしまいます。

なお、ここに記載する内容は、国際側弯症学会(SRS)のページを参考としてできる
だけわかりやすく説明してみようとしたものです。和訳で不明な箇所があった場合
はその旨を括弧にて示すことにします。

まず第一に皆さんが知識として得ておいていただきたいことは、医療の世界では
病気を「特定」する、あるいは「定義」するという作業を行います。
これは部位で区分することもあれば、年齢で区分したり、症状で区分したり、と
様々なケースがあるため、「病気は分類されるもの」というイメージでつかんで
おいていただければいいと思います。

例えば、側弯症の場合も発症する年代により

  乳幼児期側弯 Infantile Scoliosis 0歳~3歳ほど
  学童期側弯  Juveniles Scoliosis 4歳~10歳ほど
  思春期特発性
  Adult Scoliosis

このように4分類があります。年代といっても、きっちりと決まったものではなく
おおよそ、このくらいの年齢、というつかみかたになります。
あくまでも目安ですから、ナーバスになりすぎずに、全体像のなかで、捉えるよう
にしたほうがいいと思います。

次に発症原因を上記区分と重ねますと、

  先天性側弯症.....脊椎の椎体形成の異常が関与
  乳幼児期側弯.....原因不明

生まれてからすぐに脊柱変形に気づく場合もありますし、赤ちゃんの定期検診で
発見されることもあり、発見経緯はまちまちですが、0歳~3歳程度までに発見される
ことが多いようです。ただし、同じような年代で発見された「側弯症」といっても
、先天性側弯症と乳幼児期側弯症では、その原因がまったく異なります。

乳幼児期側弯症とは、思春期特発性側弯症と同じくその発症原因は「不明」です。

一方、先天性側弯症.....脊椎の椎体形成の異常が関与。と記載しましたように、
その原因は画像診断をすることで明確にされます。
添付写真は、その一例なのですが、赤枠でかこった椎体が正常椎体とは異なる形を
していることがおわかりになると思います。この形の異常は、個人により様々で
あり、ここに示したのは一例にすぎません。
いかなる側弯症でもそうですが、原因を特定する為には、画像診断は必須であり
単純レントゲン撮影だけでなく、MRIやCTでの撮影をすることが求められると思います。
添付写真が典型例ですが、このように画像で原因が特定できることで、次の治療
方針へと繋がることになります。

原因不明の乳幼児期側弯ですが、SRSのサイトには次の説明があります
Many infantile curves will resolve without treatment.
大半の乳幼児期側弯は何もせずとも自然治癒する。
Those that do not resolve can be very difficult to manage. Your pediatric
spine surgeon may suggest a magnetic resonance imaging (MRI) study in a
case of unresolving infantile idiopathic scoliosis to determine if there
are any abnormalities of the spinal cord or spinal column that are causing
to the deformity
しかし、自然治癒しないケースでは治療は困難を伴う。専門医は、MRI検査により
脊髄神経や脊柱(椎体)に異常がないかどうかをチェックする。

→(august03)
 先天性側弯症と確定診断がなされた後は、カーブが進行するかどうかを経過観察
し、カーブ進行が明らかで、生命予後にも影響を及ぼす。という判断がなされる
場合は、手術(異常椎体の切除と脊柱形成)のタイミングをご相談されることになると
思います。

→(august03)
 原因不明の乳幼児期側弯の場合は、徹底した検査でも椎体の異常などがみつから
ないときは、(つまり先天性側弯症ではない、という確定診断を意味する)
おおくの場合は自然治癒することがわかっていますので、しばらく経過観察する
ことになります。

SRSの記述では
Your pediatric spine surgeon will probably want to see your child every
four to six months and have new front- and side-view X-rays made. They
will then measure the curves and compare them with the previously made
films, as well as the films from the child's first visit.
経過観察は、四ヶ月~六ヶ月おきに行われ、レントゲン撮影等を行います。
それによりカーブが進行していなかどうかをチェックします。
If your pediatric spine surgeon documents progression of the curve, though, a different form of treatment will need to be instituted.
もしカーブの進行が確認された場合、次の治療に移行することになります。

→(august03)
 カーブが進行性の場合は、装具療法に移ることになるわけですが、思春期特発性
側弯症の場合も、様々なタイプの装具があるように、乳幼児期側弯の場合も、施設
により、その形状は異なり、あるいはギブス固定を行うケース、またときには
ハロー牽引と呼ばれる方法で牽引することもあるようです。
ブレースの場合にせよ、ギブス固定の場合にせよ、こどもは成長を続けています
ので、定期的に新しいものと交換する必要があります。

SRSの記述は
Casting in children under 2 years of age, where the goal is curing the
scoliosis, requires cast changes under anesthesia every 2-3 months
(minimum 5 casts) with the goal of achieving a straight spine. Despite the
extensive casting a brace will still be needed after the casting
treatment. Children over age 2 require cast changes every 3-4 months
二歳以下の場合のギブス固定では、側弯カーブの矯正を目標として、2~3ヶ月おきに
麻酔下で交換作業を行います。ギブス固定治療後も、しばらく装具療法も必要に
なります。二歳以上の場合は、3~4ヶ月おきにギブス固定を交換することになります。

→(august03)
 全てのこどもで装具治療やギブス固定治療が奏功するわけではなく、こどもの
状態によっては、それらに代えてハロー牽引を行うことを選択する場合もあるよう
です。いずれにしましても、非常にまれなケースであり、多くの実践による治療
経験が必須でしょう。先天性側弯はもとよりのこと、たとえ乳幼児期側弯では
自然治癒する場合が多いとはいえ、厳密な画像診断がなされなければならず、
進行性かどうかの判断や、治療開始のタイミング、そして治療の進め方は専門医
以外には難しいことです。ときに、進行が抑えられない場合は、手術による最終
手段も選択しなければならないこを考えますと、誰にでもできる、というものでは
なく、どの先生に診ていただくか、ということが、皆さんにとっての最大の努力に
なると思います。

(この項は、Scoliosis Reserch Societyの下記ページを参照しています)
 http://www.srs.org/patients/infantile/infantile.php



/////////////////////////////////////////////////////////////////////////
ブログ内の関連記事
 「 (追記あり) 乳幼児期側弯症 ( 0~3歳 )について」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/066b40546508cd55aba5d44fed11c622

 「特発性側弯症 マイルドカーブについてのQ&A」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/555dca1476ce045bfc81a03cab3acf93

 「VEPTR.COM.JAPN 先天性側弯症のページ」
 http://sokuwan.googlepages.com/%E5%85%88%E5%A4%A9%E6%80%A7%E5%81%B4%E5%BC%AF%E7%97%87


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 側弯症啓蒙活動 早期発見へ... | トップ | 早期発見のためにできること... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (core)
2009-09-17 02:06:41
はじめまして。
先ずは…これだけの資料を集め、また専門的な文献を素人でも分かり易いようにまとめられた事に敬意とお礼を申し上げます。

私は1才の娘をもつ母親です。
41才の高齢で授かった最初で最後の愛娘です。
娘は6ヶ月の時にそくわん症と診断されました。
5ヶ月の頃、左の背中の腫れに気付きました。
心臓側だから少々腫れいるように感じるのか?気のせいか?など、思っていたら
主人や母も最近、背中の腫れが気になってきたと言うので小児科で診てもらう事にしました。
小児科では「もしかして骨に異常があるかもしれないがここでは何とも言えない」と言われ
早速、近所の慈恵会に行き、そこで初めて「そくわん症」という病名を耳にしました。
その日はそくわん専門の先生が居らず「おそらく、そくわん症だと思いますが…
もしかしたらレントゲンの時激しく動いた為、曲がって写ってしまったかも知れない」
と言われ1ヶ月後に専門医に再診してもらう事になりました。
しかし、その専門医?の応対が悪く…しばらく黙ったままだったので、こちらから話を切り出し…
「で、結果はそくわん症なんですか?」と尋ねたら「はい。そくわんです」の一言。
「はい。骨折です。」と言うくらいの軽い言い方でした。
まぁ言い方感じ方は兎も角、診断結果と症状を詳しく知りたかったので更に
「で、そくわん症のタイプは何ですか?乳幼児期のタイプは自然に治る可能性もあるらしいのですが…どうなんでしょうか?」
と質問したら「この時期だともう乳幼児期ではないので治る可能性はありません」と言われました。
そくわん症という病名を初めて聞く人は多いはずなのに、そくわん症に関しての説明も一切なく、
こちらが質問してやっと答えるといった始末。

では、どうしたら良いのか…現在どういう状態なのか?今後の治療はどうするのか?再度質問したら
「上の先生と相談しながら治療方針を決めて行きます」と言われて終わりです。


今の段階では治療云々…進行の様子を見て行くしかないとは把握していましたが…

それにしても…あ、もうここはダメだ。この先生では埒が明かない…と思いました。
診察結果がどうあれ信頼の置けない先生にこの先診てもらうのは不安なので、
こちらのブログでリストに出ていた慶應の先生に診てもらうことにしました。
先ずタイプは乳幼児期のもので、レントゲンで見る限りでは先天性のものではないので自然に治る可能性もある。
との事でしたが、先天性その他の要因の有無は検査をするつもりです。

取り敢えず・・・気になっていた事も全て分かり易く回答してもらい、絶望的な気持ちが希望へと変わりました。
但し、これからも現実は現実として捉えて、母として落ち着いて娘の病気と向き合って行きたいと思っています。

こちらのブログのお陰で予備知識をもって冷静な判断で病院選びが出来、信頼出来る先生に出会えました。
本当にありがとうございます。

そして、長い内容を投稿して失礼しました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

乳幼児期側弯症」カテゴリの最新記事