
オリジナル投稿:2008-05-10 19:13:18
追記:2017年11月15日 (青字)
下記は2008年に記載したものですが、ここで説明されている内容は、最近の医学文献においても多くが追認されています。
カテゴリー「特発性側弯症と装具療法」
特に 「あなたは何を信じますか? (医学的事実を調べる、ということ) 追記」
Effect of Bracing in adolescent with ideiopathic scoliosis,
「側弯症-自然緩解、装具療法の効果等に関する医学文献をここに一覧にしました」
また、装具開始時から、終了さらに、その後の予想を図式したものを作成してみましたので、参考となれば幸いです。
「側弯症:発見から治療、経過予想図作成 - 参考として (脊椎アライメント良好、不良例付)」

などをご参照ください。
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
このところ文献紹介が滞っていました。一件、装具に関する文献からご紹介します。
以前、ネット検索をしていてPDFでダウンロードできたもののため、掲載された専門誌
名は不明です。
「Brace Wear Compliance 」 装具装着の遵守
はじめに : 思春期特発性側彎症における手術以外の保存療法として、医学的に効果が
証明されているものは装具装着のみである。装具装着を効果的ならしめる為の基本は
1) 脊柱可動性が残っており、装具装着時のレントゲン写真で矯正が得られる
マイルドカーブであるかどうか。
2) 十分に訓練を受けて熟練した装具士が作成した、定評のある装具デザインであること
3) 決められた装着時間をしっかりと守れる患者であること
装着時間は重要なポイントであるが、これを確認することはなかなかに難しい。
患者が正直に状況を伝えてくれることが必要であるが、同時に、装着拒否が心理的
負担などの問題からくることもある為に、医師は家族にも状況を確認し、どういう
アプローチを患者にとるべきかを探る必要がある。
調査 :
進行性の20度~39度の思春期特発性側彎症の患者33人をボストンTLSO装具で治療し
た。患者には一日20時間の装着を指示した。残り4時間は、リクレーションやスポー
ツ活動に努めるように指示した。患者を四ヶ月以上経過観察し、定期観察の来院時
には、朝に装具をはずして来院するように指示し、その状態でレントゲンを撮影し
た。患者のrisser signリッサーサインが4に達した段階で、装具は夜間装着1年間
というプログラムとした。
33人のうち25人は一年以内で装具装着を終え、2人は手術が必要となった。
装具は決められた一人の装具士が作成した。
結果 :
四ヶ月~3年間の経過観察が行われた。次の要素について分析した。
1) 装具装着時間を遵守した患者におけるコブ角度
33人の8人がもっとも遵守した装着をしており、3年間において一日あたり14~19
時間の装着であった。このグループではコブ角は平均 12.7%減少しており、平均的
には 32度 → 27度 であった。これら8人の改善状況は他の患者に比べて極めて
大きな差を示した。
2) カーブ矯正と装具装着時間遵守の関係
カーブの変化の定義は、12ヶ月間のうちで、連続2回での測定により、6度以上の
コブ角の変化があったときを記録することとした。
8人の患者がコブ角の減少を示した。これらのグループの平均装着時間は一日16時間
であった。12人が角度変化なしであった。このグループの平均装着時間は一日12時間で
あった。
13人は角度が悪化していた。このグループの平均装着時間は一日10時間であった。
3) 装着状況
* 夏場になると装着時間は減少した
* 装着開始から2年ほどを減ると、しだいに装着時間が減る傾向を見せた。
* 装着時間は、初潮の有無と関係していた。まだ初潮が訪れていない女の子が
もっとも装着に関する遵守が守られていた。
結論 :
この調査から、もっとも装具装着時間を守った患者が、もっともカーブ減少の成功
を得ていることがわかる。しかし、もっとも遵守が高かったグループでも、一日
14時間~19時間であり、誰も20時間を超えて装着していたものはいなかった。
----------------------------------------------------------------------
(august03より)
本研究文献の結論も、これまでご紹介していたものと基本的に同じです。
装着時間は長ければ長いほど、その効果が期待できる。ということです。ただし
現実には、一日23時間装着するということは、かなり難しいことであり、何時間
が最小時間で最大の効果が得られるか、というのは皆さんにとってのもっとも大きな
関心時だと思います。
これについては現時点では、それを示しえた研究はありません。しかし、いま現在
米国では大規模な装具に関する比較臨床試験が行われております。この研究の成果
がまとまることで、患者さんにとってもっとも負担が少なく、そして効果が得られる
装着時間というものが判明すると思われます。
これから暑い夏場を迎えるわけで、この時期がもっとも装具中のこども達にとって
はつらい季節になります。この時期を乗り越えるための、皆さんの工夫がありましたら
ぜひとも、ご投稿をお願いします。
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ブログ内の関連記事
「装具をしなければ50%の確率でカーブは悪化します No.2」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/fee622a7588131f2f77289c25d19fd2f
「そくわん症治療の確率 50%のリスクをとるか80%の可能性にかけるか」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/8d2b14d64b859ecacb4fad21f0d48505
(全米20大学が参加しての装具着用に関する臨床試験)について記載されています
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/140434c80f4deb99afb5d462802248e4
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?
追記:2017年11月15日 (青字)
下記は2008年に記載したものですが、ここで説明されている内容は、最近の医学文献においても多くが追認されています。
カテゴリー「特発性側弯症と装具療法」
特に 「あなたは何を信じますか? (医学的事実を調べる、ということ) 追記」
Effect of Bracing in adolescent with ideiopathic scoliosis,
「側弯症-自然緩解、装具療法の効果等に関する医学文献をここに一覧にしました」
また、装具開始時から、終了さらに、その後の予想を図式したものを作成してみましたので、参考となれば幸いです。
「側弯症:発見から治療、経過予想図作成 - 参考として (脊椎アライメント良好、不良例付)」

などをご参照ください。
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このところ文献紹介が滞っていました。一件、装具に関する文献からご紹介します。
以前、ネット検索をしていてPDFでダウンロードできたもののため、掲載された専門誌
名は不明です。
「Brace Wear Compliance 」 装具装着の遵守
はじめに : 思春期特発性側彎症における手術以外の保存療法として、医学的に効果が
証明されているものは装具装着のみである。装具装着を効果的ならしめる為の基本は
1) 脊柱可動性が残っており、装具装着時のレントゲン写真で矯正が得られる
マイルドカーブであるかどうか。
2) 十分に訓練を受けて熟練した装具士が作成した、定評のある装具デザインであること
3) 決められた装着時間をしっかりと守れる患者であること
装着時間は重要なポイントであるが、これを確認することはなかなかに難しい。
患者が正直に状況を伝えてくれることが必要であるが、同時に、装着拒否が心理的
負担などの問題からくることもある為に、医師は家族にも状況を確認し、どういう
アプローチを患者にとるべきかを探る必要がある。
調査 :
進行性の20度~39度の思春期特発性側彎症の患者33人をボストンTLSO装具で治療し
た。患者には一日20時間の装着を指示した。残り4時間は、リクレーションやスポー
ツ活動に努めるように指示した。患者を四ヶ月以上経過観察し、定期観察の来院時
には、朝に装具をはずして来院するように指示し、その状態でレントゲンを撮影し
た。患者のrisser signリッサーサインが4に達した段階で、装具は夜間装着1年間
というプログラムとした。
33人のうち25人は一年以内で装具装着を終え、2人は手術が必要となった。
装具は決められた一人の装具士が作成した。
結果 :
四ヶ月~3年間の経過観察が行われた。次の要素について分析した。
1) 装具装着時間を遵守した患者におけるコブ角度
33人の8人がもっとも遵守した装着をしており、3年間において一日あたり14~19
時間の装着であった。このグループではコブ角は平均 12.7%減少しており、平均的
には 32度 → 27度 であった。これら8人の改善状況は他の患者に比べて極めて
大きな差を示した。
2) カーブ矯正と装具装着時間遵守の関係
カーブの変化の定義は、12ヶ月間のうちで、連続2回での測定により、6度以上の
コブ角の変化があったときを記録することとした。
8人の患者がコブ角の減少を示した。これらのグループの平均装着時間は一日16時間
であった。12人が角度変化なしであった。このグループの平均装着時間は一日12時間で
あった。
13人は角度が悪化していた。このグループの平均装着時間は一日10時間であった。
3) 装着状況
* 夏場になると装着時間は減少した
* 装着開始から2年ほどを減ると、しだいに装着時間が減る傾向を見せた。
* 装着時間は、初潮の有無と関係していた。まだ初潮が訪れていない女の子が
もっとも装着に関する遵守が守られていた。
結論 :
この調査から、もっとも装具装着時間を守った患者が、もっともカーブ減少の成功
を得ていることがわかる。しかし、もっとも遵守が高かったグループでも、一日
14時間~19時間であり、誰も20時間を超えて装着していたものはいなかった。
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(august03より)
本研究文献の結論も、これまでご紹介していたものと基本的に同じです。
装着時間は長ければ長いほど、その効果が期待できる。ということです。ただし
現実には、一日23時間装着するということは、かなり難しいことであり、何時間
が最小時間で最大の効果が得られるか、というのは皆さんにとってのもっとも大きな
関心時だと思います。
これについては現時点では、それを示しえた研究はありません。しかし、いま現在
米国では大規模な装具に関する比較臨床試験が行われております。この研究の成果
がまとまることで、患者さんにとってもっとも負担が少なく、そして効果が得られる
装着時間というものが判明すると思われます。
これから暑い夏場を迎えるわけで、この時期がもっとも装具中のこども達にとって
はつらい季節になります。この時期を乗り越えるための、皆さんの工夫がありましたら
ぜひとも、ご投稿をお願いします。
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ブログ内の関連記事
「装具をしなければ50%の確率でカーブは悪化します No.2」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/fee622a7588131f2f77289c25d19fd2f
「そくわん症治療の確率 50%のリスクをとるか80%の可能性にかけるか」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/8d2b14d64b859ecacb4fad21f0d48505
(全米20大学が参加しての装具着用に関する臨床試験)について記載されています
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/140434c80f4deb99afb5d462802248e4
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?
装具の装着時間は原則23時間と娘も先生から言われています。長ければ長いほど効果が得られるのはわかっていますが、現実にはとても難しいです。
特に成長期の子供にとっては大変です。
食事中に着けていると苦しくて食べられないのです。
もともと細身なのに太れません。
無理して着けて食べているとお腹が痛くなります。
お腹を圧迫するので生理中も大変です。
august03さんの記事でも初潮前の女の子の装着時間が一番長かったというのはもっともだと思います。
我が家も装具生活がもうすぐ2年になりますが、だんだん短くなってきています。
装具がもっと改良されて、アメリカのスパインコアのようであったなら、装着時間も延びてよくなる子供たちが増えるのにと思います。
娘は休日など長い時で17時間くらい、短い時で10時間ぐらいです。それでも角度はだいぶ改善されています。
アメリカばかりに頼っているようで申し訳ないですが研究成果の発表に非常に興味があります。