VEPTR早期認可への嘆願運動に関連して、PMDA(医薬品医療機器総合機構)による審査
という「壁」について述べてきましたところ、「初夏の便り」さんという方から
メールとともに、新聞記事の切り抜きを送っていただきました。この方からは前回の
記事にコメントもいただいているのですが、メールでは、コメントでは書ききれな
かった内容について語りたいということで、かなり詳細で長文のご説明をいただき
ました。VEPTRベプターの認可をPMDAが滞らせるようであるならば、そのメールに
書かれてある事実を公表してもらってかまわない。とあり、ここでは述べることが
できませんが、厚生労働省とPMDAの内部情報......VEPTRが関係するのですが....
について、書かれてありました。
私は、その内容を読み、PMDA審査官に対して非常に強い不信感を抱かざるえない
気持ちがさらに強くなっています。
今回は、お送りいただいた新聞記事(添付写真)についてのみ、ご紹介いたします。
日経産業新聞(2008年3月5日)
「医療機器、日本は中古市場」
*エドワードライフサイエンス社は2004年から国内で販売を開始した、国内初の
植え込み型補助人工心臓を2006年2月末で販売をやめた。理由は部品供給の限界から。
日本で認可を取得し販売開始した時に、欧米ではすでに第四世代まで実用化されて
いた。日本で販売していたのは、三世代前の製品で、バッテリーを供給していた
カナダの会社がもう作れないと供給停止したからである。
*日本では新型の導入も進まないうえ、中古機器さえ市場から消えるお寒い状況
*医療機器メーカーを日本での治験から遠ざけるのは、原材料規格に代表される
激しい基準。成分を少し変更しただけで試験などをやり直さなければならない。
一方、海外では簡単に手続きできる。
*審査体制の人員不足も指摘される。医療機器は30万種類。薬が1万7000品目にすぎ
ず分類もしやすいのに対し、医療機器は限られた人員で多様な分野をカバーしなけ
ればならない。
*医療機器の普及を目指す在日米国商工会議所医療機器委員会の児玉順子副委員長は
「数合わせよりも、専門家の育成が重要」と訴える。
産経新聞 東京本社版 (2008年4月18日)
「外国製医療機器の導入 審査緩和求める 有識者会議 」
海外から日本への投資拡大策を検討している内閣府の対日投資有識者会議(座長・
島田晴雄千葉商科大学長)は17日、月内に取りまとめる中間報告書で、最新の
医療機器が国内に迅速に導入できるよう厚生労働省に大幅な規制緩和を求める方針
を固めた。機器の安全性審査などを担う機関への重点的な予算配分も報告書に盛り
込む。医療費の圧縮などで閉塞(へいそく)感が出ている医療機器市場に海外メー
カーを呼び込み、市場の活性化を図る。
医療機器のうち、心疾患の治療に用いるペースメーカーやカテーテルなどは海外製
品が多い。欧米で有効性が認められた機種でも、日本での承認審査は長い時間がか
かり最新機器が市場で流通しにくい。有識者会議ではこうした事情を踏まえ、厳格
な審査が必要な厚労相認定対象機種の削減や、審査の最終段階である薬事・食品衛
生審議会の運営ルールの見直しが必要と判断した。
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(august03より)
「初夏の便り」さんからのご指摘にもありましたように、PMDA審査官が一方的に
悪者扱いされるべきではありません。その点は私の記述も偏りがあったと反省しな
ければならないと思います。
これはいわば大枠の言葉で現すならば、“構造的な問題”ということになるのでしょう。
米国流に言えば、「戦略の欠如」とも言えると思います。米国は、国家戦略として
医療と医療産業に力をいれています。それは単にベンチャー企業育成に資金を提供
するとかだけではなく、法体系においても「米国の世界における医療技術、医療
産業を推進し、国力を高める」という戦略を後押しする法律と行政組織が構築されて
いる、という事実があります。
国内でも経済産業省が医療分野の国内企業を育成しようと様々な施策をうっている
ようなのですが、その目論みも、最終段階での厚生労働省/PMDAでの「審査」という
壁にぶつかって先に進むことができていない。というのが現実のようです。
縦割り行政の弊害の典型例です。どんなに世界に秀でた技術を持っていたとしても
世界でもっとも難解な国内審査の壁の前では、新製品を世の中にだすまでに何年も
かかってしまい、認可がとれた頃にはすでにその技術は陳腐化している。という
現実.....最初の新聞記事にあった例もそのひとつです。
私は、このブログのカテゴリー「医療へのひとりごと」のなかで、何度となく
日本はいまや医療三流国になってしまった、と述べてきました。先進国はもとより
中国や韓国に導入済みの先端医療機器が、日本ではいまだに認可されていない、
という例は多数存在します。
その原因を探っていけば、つまるところは、日本が何を目指しているのか、その
方向性が得られていないことに大きな原因があるのでしょう。
FDAと比較したとき、PMDAの現状は
予算がない / 人数不足 / 人材育成ができいない(能力の問題)
さらには、法体系として
免責条項がない(何か問題が起これば担当者個人の刑事責任になる)
規制を強化させている薬事法
審査の運用実態は、これまでにこのブログ内で指摘してきたとうりです。
どこをどう切り取っても、良い面はちっとも見えてきません。
VEPTRの認可が今後どういう展開を見せるのか、予測がつきませんが、VEPTRという
ひとつの医療機器をとおして、日本の医療(薬事)行政の実態を勉強していきたいと
思います。
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ブログ内の関連記事
「医薬品医療機器総合機構 (PMDA)について」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/46524f01f7542c90980d5e7fb5d28957
「医薬品医療機器総合機構 (PMDA)について No.2」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/aed0182dd8b8db8e6785718805aaa538