初回記載:2017年11月15日
追加記載:2018年2月25日 有田正規「科学の困ったウラ事情」岩波科学ライブラリーからの引用を記載
医学論文を読んでいますと、ときおり奇妙な感覚を覚えることがあります。読み手の私の知識不足・学力不足・英語力不足からくるところの、内容の手ごわさというものではなく、論理展開にどこか無理をしている感じがいがめない。データ記載に何かミスをしているのではないか。得られたデータを意図的な方向に解釈しようとしているのではないか。 あるいは、何でいまさら、過去に否定された方法(例:側弯治療としての電気刺激とか)を対象にして、比較データを出すの? という部類の奇妙な感覚です。
もちろん、私が100%正しいわけもないのは承知しているのですが、幾つも幾つも読んでいますと、内容の品質のようなものが感じられるのです。
今回読んだ論文が気になったので、その表紙にある「OPEN ACCESS」をウイキペディアで見てみました。以下はウイキペディアからの引用です
「オープンアクセスジャーナルには批判も多い。研究者が費用を負担することへの否定的な見解や、査読に対し信頼性が低いといった批判がある。読まれることによって収入を得るのではなく、論文を掲載することによって収入を得るため、質の低い論文でも掲載する、あるいはデタラメな論文でも掲載する出版社も存在する。」
さらにグーグルで「オープンアクセス」を検索したところ、一番安いケースですと、約15万~16万円を論文著者が出版社に支払うことで、掲載されるようですね。。査読、いわゆる掲載前の内容点検はどこまでされているものなのでしょう.......
また、類似のソーシャルネットワークサイトにおいても、論文の削除を行ったり、再点検をするとか、いろいろと問題を抱えていることが見えてきました。
患者さん向けには、「この〇〇〇法は、多数の医学論文でその効果が証明されています」と謳うわけですが、そこには真の医学データが伴っているのでしょうか? 患者さんは こういう論文の世界には素人です。 まして医学論文と銘打たれたら、誰も疑ることすら考えもしないでしょう。
先生がたは患者さんのための治療法を日夜研究して考えておられるのだと思いますが、その出発点としての「エビデンス」の利用の仕方を間違えているのではありませんか?
このブログを読まれている患者さんに申し上げたいです。 この世の中には欺瞞があちこちに埋め込まれていますよ、と。
追加記載:2018年2月25日
上記を記載したのは昨年11月のことでしたが、私の感じた違和感は決して的外れではなかった。ということをこの本から裏付けすることができました。
有田正規「科学の困ったウラ事情」岩波科学ライブラリー247, 2016年刊
(有田氏は、東京大学理学部情報科学科卒。現在は国立遺伝学研究所生命情報研究センター教授)
以下、この本の中から引用します。
・オープンアクセスというビジネスモデル
なぜSpringerはBMCを買収したのか。理由はひとつ。儲かるからである。一流の学術誌は採択率も低く、
編集者が文章や体裁などをチェックする。
そのコストは大きい。一方、ほとんどのオープンアクセス誌は、論文1報あたり15万円以上の投稿料を
徴収しておきながら、編集作業を一切しない。
(略) 論文の査読も研究者によるボランティアである。
(略) 引用されやすいという幻想が影響して投稿数はうなぎのぼりである。
オープンアクセスと商業主義は相反する概念ではなく、金儲けを重視する程度の問題に過ぎない。
・個人の処理能力を超える情報量
この10年間に文献調査を徹底できなくなった無力さを感じる研究者は多いはずだ。生命科学文献の
データベース PubMedに登録される論文数は急増し、総数は今年(2010年) 2000万件に届く。
論文急増の原因には印刷物を発行しないオンライン誌の影響が大きい。
そのほとんどが著者がお金を払って論文を掲載してもらうオープンアクセス誌である。
例えば総合誌「Plos ONE」(2006年創刊)は、2009年に4400報の論文を掲載し(採択率66%)、
2010年には6000報に迫る。(略) 結果として、学術論文は研究者間のコンセンサスや共有知識として
機能しなくなっている。
印刷しないオンライン誌は低コストで発行できる。例えば208誌、年間3万件の投稿を処理する
BioMed Central(BMC)は社員が250人(平均年齢30歳)しかいない。
編集コストは最小化されており、編集部は論文の中身に口出ししない。
(略)
適切な査読者の選定は編集者側の作業だが、ほとんどの場合、著者自身が査読者を推薦できる仕組みに
なっている。 しかも、査読者に与えられる時間はわずか2週間から1カ月に過ぎない。
(略)
こうした査読の実態を正当化するのが、オンライン誌が掲げはじめた「理に適えば採択」という基準である。
(略) 掲載数を増やしたい商業誌の思惑が透けてみえる。結果として、何でも発表できる環境を整え、
論文数の急増を招き、サーベイ・査読の手間を無暗に増やし、学術発表の本質を変化させてしまった。
・社会が気づいていない論文の質的変化
論文数の急増が引き起こしている最大の問題は、もたらした質的変化が世の中に伝わっていないことである。
(略) 内容の判断は、実質、読者一人一人に任されている。
(略)
・インターネットが変える論文の質
(略) ボランティアの査読者は長い論文を読みたくないし、いちいち付き合って細かな指摘をしていられない。
その結果、オンライン論文の査読や編集は形式的になりがちである。(略)
とりわけ論文の質の低下を加速させているのが、オープンアクセス誌である。
august03
追加記載:2018年2月25日 有田正規「科学の困ったウラ事情」岩波科学ライブラリーからの引用を記載
医学論文を読んでいますと、ときおり奇妙な感覚を覚えることがあります。読み手の私の知識不足・学力不足・英語力不足からくるところの、内容の手ごわさというものではなく、論理展開にどこか無理をしている感じがいがめない。データ記載に何かミスをしているのではないか。得られたデータを意図的な方向に解釈しようとしているのではないか。 あるいは、何でいまさら、過去に否定された方法(例:側弯治療としての電気刺激とか)を対象にして、比較データを出すの? という部類の奇妙な感覚です。
もちろん、私が100%正しいわけもないのは承知しているのですが、幾つも幾つも読んでいますと、内容の品質のようなものが感じられるのです。
今回読んだ論文が気になったので、その表紙にある「OPEN ACCESS」をウイキペディアで見てみました。以下はウイキペディアからの引用です
「オープンアクセスジャーナルには批判も多い。研究者が費用を負担することへの否定的な見解や、査読に対し信頼性が低いといった批判がある。読まれることによって収入を得るのではなく、論文を掲載することによって収入を得るため、質の低い論文でも掲載する、あるいはデタラメな論文でも掲載する出版社も存在する。」
さらにグーグルで「オープンアクセス」を検索したところ、一番安いケースですと、約15万~16万円を論文著者が出版社に支払うことで、掲載されるようですね。。査読、いわゆる掲載前の内容点検はどこまでされているものなのでしょう.......
また、類似のソーシャルネットワークサイトにおいても、論文の削除を行ったり、再点検をするとか、いろいろと問題を抱えていることが見えてきました。
患者さん向けには、「この〇〇〇法は、多数の医学論文でその効果が証明されています」と謳うわけですが、そこには真の医学データが伴っているのでしょうか? 患者さんは こういう論文の世界には素人です。 まして医学論文と銘打たれたら、誰も疑ることすら考えもしないでしょう。
先生がたは患者さんのための治療法を日夜研究して考えておられるのだと思いますが、その出発点としての「エビデンス」の利用の仕方を間違えているのではありませんか?
このブログを読まれている患者さんに申し上げたいです。 この世の中には欺瞞があちこちに埋め込まれていますよ、と。
追加記載:2018年2月25日
上記を記載したのは昨年11月のことでしたが、私の感じた違和感は決して的外れではなかった。ということをこの本から裏付けすることができました。
有田正規「科学の困ったウラ事情」岩波科学ライブラリー247, 2016年刊
(有田氏は、東京大学理学部情報科学科卒。現在は国立遺伝学研究所生命情報研究センター教授)
以下、この本の中から引用します。
・オープンアクセスというビジネスモデル
なぜSpringerはBMCを買収したのか。理由はひとつ。儲かるからである。一流の学術誌は採択率も低く、
編集者が文章や体裁などをチェックする。
そのコストは大きい。一方、ほとんどのオープンアクセス誌は、論文1報あたり15万円以上の投稿料を
徴収しておきながら、編集作業を一切しない。
(略) 論文の査読も研究者によるボランティアである。
(略) 引用されやすいという幻想が影響して投稿数はうなぎのぼりである。
オープンアクセスと商業主義は相反する概念ではなく、金儲けを重視する程度の問題に過ぎない。
・個人の処理能力を超える情報量
この10年間に文献調査を徹底できなくなった無力さを感じる研究者は多いはずだ。生命科学文献の
データベース PubMedに登録される論文数は急増し、総数は今年(2010年) 2000万件に届く。
論文急増の原因には印刷物を発行しないオンライン誌の影響が大きい。
そのほとんどが著者がお金を払って論文を掲載してもらうオープンアクセス誌である。
例えば総合誌「Plos ONE」(2006年創刊)は、2009年に4400報の論文を掲載し(採択率66%)、
2010年には6000報に迫る。(略) 結果として、学術論文は研究者間のコンセンサスや共有知識として
機能しなくなっている。
印刷しないオンライン誌は低コストで発行できる。例えば208誌、年間3万件の投稿を処理する
BioMed Central(BMC)は社員が250人(平均年齢30歳)しかいない。
編集コストは最小化されており、編集部は論文の中身に口出ししない。
(略)
適切な査読者の選定は編集者側の作業だが、ほとんどの場合、著者自身が査読者を推薦できる仕組みに
なっている。 しかも、査読者に与えられる時間はわずか2週間から1カ月に過ぎない。
(略)
こうした査読の実態を正当化するのが、オンライン誌が掲げはじめた「理に適えば採択」という基準である。
(略) 掲載数を増やしたい商業誌の思惑が透けてみえる。結果として、何でも発表できる環境を整え、
論文数の急増を招き、サーベイ・査読の手間を無暗に増やし、学術発表の本質を変化させてしまった。
・社会が気づいていない論文の質的変化
論文数の急増が引き起こしている最大の問題は、もたらした質的変化が世の中に伝わっていないことである。
(略) 内容の判断は、実質、読者一人一人に任されている。
(略)
・インターネットが変える論文の質
(略) ボランティアの査読者は長い論文を読みたくないし、いちいち付き合って細かな指摘をしていられない。
その結果、オンライン論文の査読や編集は形式的になりがちである。(略)
とりわけ論文の質の低下を加速させているのが、オープンアクセス誌である。
august03