私august03は、このブログ Step by stepを記載するうえで、「事実を記載」する
ということを最大のモットーとして実行してきました。
病気の患者さんにとっては、心のなかで求めるものは「何か自分の不安を解消して
くれて、安心させてくれることはないか」というものだと思います。「病気が
治る方法を知りたい」ということに尽きると思います。
その点については、このStep by stepはお役にはたっていないと思います。
治療には様々な要因が関与しますので、これこれこういうことをすれば「治る」
「治った」というような週間誌的な記述は「事実」を伝えるものではありません。
医学とは可能性であり、確実性とは違います。
病気の治療とは可能性であって、確実性ではありません。
この部分をしっかりと理解することができるか、できないかによって、皆さんが
病院の先生から話を聞き、説明を受けたとき、先生に対する印象がまったく違う
ものになってきます。
医学の可能性に賭けるか、不確実性に恐怖を抱き尻ごみするか、
極端にいえば、そういうことになります。
下記は小松秀樹先生(虎ノ門病院泌尿器科部長)が書かれた新潮新書「医療の限界」
からの転記で、先生が作られて手術前に患者さんに読み上げているインフォームド
コンセントの説明書です。
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多くの診療行為は、身体に対する侵襲 (ダメージ)を伴います。通常、診療行為
による利益が侵襲 (ダメージ)の不利益を上回ります。
しかし、医療は本質的に不確実です。過失がなくとも重大な合併症や事故が起こり
得ます。診療行為と無関係の病気や加齢に伴う症状が診療行為の前後に発症する
こともあります。合併症や偶発症が起これば、もちろん治療には最善を尽くします
が、死にいたることもありえます。予想される重要な合併症については説明します
しかし、極めてまれなもの予想外のものもあり、全ての可能性を言いつくすことは
できません。こうした医療の不確実性は、人間の生命の複雑性と有限性、および
各個人の多様性に由来するものであり、低減させることはできても、消滅させる
ことはできません。
過失による身体障害があれば病院側に賠償責任が生じます。しかし、過失を伴わ
ない合併症・偶発症に賠償責任は生じません。
こうした危険があることを承知した上で同意書に署名してください。疑問がある
ときは、納得できるまで質問してください。納得できない場合は、無理に結論を
ださずに、他の医師の意見を聞くことをお勧めします。必要な資料は提供します。
他の医師の意見を求めることで不利な扱いを受けることはありません。」
------------------------------------------------------------------
医学は日進月歩です。10年前よりも、現在のほうが格段の進歩をとげています。
これからさらに10年後にはもっと大きな進歩をとげていると思います。
しかし、根本的に、医学の不確実性は変わらないと思います。
たとえば、その不確実性の発生率をさらに減少させる医療技術が発展していたと
しても、それがゼロになることは絶対にありません。
人間ゆえに、ということではなく、仮にロボットが手術を担当するようになった
としても、コンピュターが全てを管理するようになったとしても、不確実性は
ゼロになることはありえません。
なぜならば、ここで述べられている“不確実性”という言葉は医学だけに限った
ことではなく、この世界の全ての分野、全ての産業、全ての業種において
「あり得る」出来事を表現していることと同じだからです。
不確実な出来事の発生 イコール 医療ミス
この方程式は正しいと感じられるか、そうでもないか、と感じられるか
その気持ちの分岐点が、「不確実性」をどのように理解されるか。ということと
深くつながっているといえるでしょう。
医学情報をなかなかお届けできずに、このような雑文ばかり書いており、まことに
申し訳なく思いますが、治療を受ける皆さんにとって、この医学の事実と向き合う
ということもとても大切ですので、どうか、こころに止めておいていただければと
願うものです。
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ブログ内の関連記事
「医療の限界について (医師は神様ではないという事実をどう捉えますか? )」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/644557d7e4387cf3217f148361456ec4
ということを最大のモットーとして実行してきました。
病気の患者さんにとっては、心のなかで求めるものは「何か自分の不安を解消して
くれて、安心させてくれることはないか」というものだと思います。「病気が
治る方法を知りたい」ということに尽きると思います。
その点については、このStep by stepはお役にはたっていないと思います。
治療には様々な要因が関与しますので、これこれこういうことをすれば「治る」
「治った」というような週間誌的な記述は「事実」を伝えるものではありません。
医学とは可能性であり、確実性とは違います。
病気の治療とは可能性であって、確実性ではありません。
この部分をしっかりと理解することができるか、できないかによって、皆さんが
病院の先生から話を聞き、説明を受けたとき、先生に対する印象がまったく違う
ものになってきます。
医学の可能性に賭けるか、不確実性に恐怖を抱き尻ごみするか、
極端にいえば、そういうことになります。
下記は小松秀樹先生(虎ノ門病院泌尿器科部長)が書かれた新潮新書「医療の限界」
からの転記で、先生が作られて手術前に患者さんに読み上げているインフォームド
コンセントの説明書です。
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多くの診療行為は、身体に対する侵襲 (ダメージ)を伴います。通常、診療行為
による利益が侵襲 (ダメージ)の不利益を上回ります。
しかし、医療は本質的に不確実です。過失がなくとも重大な合併症や事故が起こり
得ます。診療行為と無関係の病気や加齢に伴う症状が診療行為の前後に発症する
こともあります。合併症や偶発症が起これば、もちろん治療には最善を尽くします
が、死にいたることもありえます。予想される重要な合併症については説明します
しかし、極めてまれなもの予想外のものもあり、全ての可能性を言いつくすことは
できません。こうした医療の不確実性は、人間の生命の複雑性と有限性、および
各個人の多様性に由来するものであり、低減させることはできても、消滅させる
ことはできません。
過失による身体障害があれば病院側に賠償責任が生じます。しかし、過失を伴わ
ない合併症・偶発症に賠償責任は生じません。
こうした危険があることを承知した上で同意書に署名してください。疑問がある
ときは、納得できるまで質問してください。納得できない場合は、無理に結論を
ださずに、他の医師の意見を聞くことをお勧めします。必要な資料は提供します。
他の医師の意見を求めることで不利な扱いを受けることはありません。」
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医学は日進月歩です。10年前よりも、現在のほうが格段の進歩をとげています。
これからさらに10年後にはもっと大きな進歩をとげていると思います。
しかし、根本的に、医学の不確実性は変わらないと思います。
たとえば、その不確実性の発生率をさらに減少させる医療技術が発展していたと
しても、それがゼロになることは絶対にありません。
人間ゆえに、ということではなく、仮にロボットが手術を担当するようになった
としても、コンピュターが全てを管理するようになったとしても、不確実性は
ゼロになることはありえません。
なぜならば、ここで述べられている“不確実性”という言葉は医学だけに限った
ことではなく、この世界の全ての分野、全ての産業、全ての業種において
「あり得る」出来事を表現していることと同じだからです。
不確実な出来事の発生 イコール 医療ミス
この方程式は正しいと感じられるか、そうでもないか、と感じられるか
その気持ちの分岐点が、「不確実性」をどのように理解されるか。ということと
深くつながっているといえるでしょう。
医学情報をなかなかお届けできずに、このような雑文ばかり書いており、まことに
申し訳なく思いますが、治療を受ける皆さんにとって、この医学の事実と向き合う
ということもとても大切ですので、どうか、こころに止めておいていただければと
願うものです。
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ブログ内の関連記事
「医療の限界について (医師は神様ではないという事実をどう捉えますか? )」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/644557d7e4387cf3217f148361456ec4