
(添付はNational Scoriosis Fundationのホームページの一部で、本文と関係する
箇所です)
National Scoliosis Fundation
http://www.scoliosis.org/index.php
今回の大阪.能勢町の脊柱学校検診をめぐる訴訟を考えるうえで、米国での
スクリーニングはどういう状況にあるかを調べようと考え、このブログでしばしば
参照している米国のNationalScoliosis Fundation(米国側彎症協会)のホームページ
を探してみましたところ、興味深い資料を見つけることができました。
添付写真は、同ホームページの画面なのですが、このなかの、
Please go to
SCREENING FOR IDIOPATHIC SCOLIOSIS IN ADOLESCENTS
をクリックしますと、米国医学会の資料PDFをダウンロードすることができます。
今回はその資料から幾つかの情報をご紹介したいと思います。
ダウンロードしたPDFのタイトル:
SCREENING FOR IDIOPATHIC SCOLIOSIS IN ADOLESCENTS An Information Statement
American Academy of Orthopaedic Surgeons 米国整形外科学会
Scoliosis Research Society 国際側彎症研究会
Pediatric Orthopaedic Society of North America 北米小児整形外科学会
American Academy of Pediatrics 米国小児学会
-------------------------------------------------------------------------
第一に、
米国政府機関と思われる US.Department of Health & Human Servicesの研究機関
[U.S Preventive Services Task Force](米国疾病予防会議とでも訳せばいいのかも
しれません)は、学童に対する側彎症検診 scoliosis screeingは予防措置としての
効果を見いだせる信頼性レベルの高い研究/調査文献がないことから、検診実施を
支持しない。という発表を2004年に出しています。
http://www.ahrq.gov/clinic/uspstf/uspsaisc.htm
Rationale: The USPSTF did not find good evidence that screening
asymptomatic adolescents detects idiopathic scoliosis at an earlier stage
than detection without screening. The accuracy of the most common screening
test―the forward bending test with or without a scoliometer―in
identifying adolescents with idiopathic scoliosis is variable, and there is
evidence of poor followup of adolescents with idiopathic scoliosis who are
identified in community screening programs.
USPSTFは、スクリーニング以外で側彎症が発見されることよりも、スクリーニング
によってこそ発見できるのだ。という十分な証拠を見つけることができなかった。
検診の標準的方法である前屈テストの正確性は変化しやすく、地域でのスクリーニング
プログラムで発見された側彎症患者がその後どういう経過をたどったかの事実を
証明するものが見つからなかった。
(august03より)
つまり、この疾病予防会議の結論は、学童検診によって発見された側彎症の疑い
を持たれたこどもがその後どういう経過をたどったかを示す十分な研究/調査結果
を見つけることができなかった。見つけることができなかった、ということは、
検診が効果がないことと同じ。というような理屈で、学童に対する脊柱検診の実施
を支持しない。という結論にいたっているわけです。
この結論に対して、今回ご紹介する医学会側の意見は次のとおりです。
(簡便性より、オリジナル英文の転記はしませんので、オリジナルにご興味のある
方は、上記のNSFのホームページからPDFをダウンロードして下さい)
予防会議の結論は、多くの研究/調査論文を無視したものであり、また各医学会の
考えを無視したものであり、また側彎症のこどもたちを治療している専門家の意見
を無視したものである。我々、側彎症治療に携わる医学会は、この予防会議の結論
には反対する。
第二として、米国内の半分ほどの州では学校検診はいまだにその効果については
賛否両論がある。1993年のスクリーニングを推薦する研究発表によれば、学校検診
をすることによってコブ角がまだ小さいうちに発見することができる。もし検診が
なかった場合は、カーブが45度を超えたり、手術を必要とするまでに進行していく
リスクが、検診した場合よりも8倍大きくなることを示唆した。一方、1994年には
学校検診は費用対効果の面から反対意見の研究が発表された。また、レントゲンの
照射が害となることから反対とする意見もある。
(放射線による害については、現在病院に普及しているレントゲン機器は放射量が
以前に比較すると格段に減少しており、デジタル撮影機器ではその害を気にする
レベルでは無くなっている)
第三として、予防会議が学校検診を支持しない理由として、進行性の高い側彎症
患者はごく少数であるにも関わらず、進行するかしないか不明な多数の患者に
装具療法を行うことは、彼らの生活の質を落とすことになりメリットがない、と
している。これに対して医学会側は、装具による進行抑制効果があることを示して
反論している。1)装具療法により進行が抑制できる 2)手術を必要とするほどの
ひどい変形をできるだけ早期の段階で発見できる(手術をするとしても、ひどい
状態まで進行した場合よりも、それ以前での手術実施のほうが成績が良い)
第四として、医学会は学校検診について下記の方法を提案している。
女子は10歳と12歳のときに、それぞれ一年間に2回の検診を受ける事。男子は、
13歳と14歳のときに一度/年の検診を受けること。
--------------------------------------------------------------------------
(august03より)
上記に示したように、医学会は政府系機関のだした結論(学校検診は不要)に対して
反対を表明しました。しかし、現実として米国内の各エリアでは、この政府系機関
のだした結論を根拠として、以下のウエストバージニアのように、検診をストップ
するところがではじめているようです。
The National Association of School Nurses (NASN) does not have a position
statement or policy brief on postural screening in schools. Therefore,
the WV Council of School Nurse recommends school nurses
DO NOT perform mass postural screenings due to the outcomes of
evidence-based research by USPSTF.
米国学校看護婦協会は学校での脊柱検診の実施に関する是非を判断していない。
従って、ウエストバージニア州学校看護婦会は、疾病予防会議の結論を根拠として
州内の学校での脊柱側彎検診は実施しないこととします。
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ブログ内の関連記事
脊柱側彎症に対する学校検診に関する記事は、左カテゴリーから「モアレ検診」を
選択して下さい。
箇所です)
National Scoliosis Fundation
http://www.scoliosis.org/index.php
今回の大阪.能勢町の脊柱学校検診をめぐる訴訟を考えるうえで、米国での
スクリーニングはどういう状況にあるかを調べようと考え、このブログでしばしば
参照している米国のNationalScoliosis Fundation(米国側彎症協会)のホームページ
を探してみましたところ、興味深い資料を見つけることができました。
添付写真は、同ホームページの画面なのですが、このなかの、
Please go to
SCREENING FOR IDIOPATHIC SCOLIOSIS IN ADOLESCENTS
をクリックしますと、米国医学会の資料PDFをダウンロードすることができます。
今回はその資料から幾つかの情報をご紹介したいと思います。
ダウンロードしたPDFのタイトル:
SCREENING FOR IDIOPATHIC SCOLIOSIS IN ADOLESCENTS An Information Statement
American Academy of Orthopaedic Surgeons 米国整形外科学会
Scoliosis Research Society 国際側彎症研究会
Pediatric Orthopaedic Society of North America 北米小児整形外科学会
American Academy of Pediatrics 米国小児学会
-------------------------------------------------------------------------
第一に、
米国政府機関と思われる US.Department of Health & Human Servicesの研究機関
[U.S Preventive Services Task Force](米国疾病予防会議とでも訳せばいいのかも
しれません)は、学童に対する側彎症検診 scoliosis screeingは予防措置としての
効果を見いだせる信頼性レベルの高い研究/調査文献がないことから、検診実施を
支持しない。という発表を2004年に出しています。
http://www.ahrq.gov/clinic/uspstf/uspsaisc.htm
Rationale: The USPSTF did not find good evidence that screening
asymptomatic adolescents detects idiopathic scoliosis at an earlier stage
than detection without screening. The accuracy of the most common screening
test―the forward bending test with or without a scoliometer―in
identifying adolescents with idiopathic scoliosis is variable, and there is
evidence of poor followup of adolescents with idiopathic scoliosis who are
identified in community screening programs.
USPSTFは、スクリーニング以外で側彎症が発見されることよりも、スクリーニング
によってこそ発見できるのだ。という十分な証拠を見つけることができなかった。
検診の標準的方法である前屈テストの正確性は変化しやすく、地域でのスクリーニング
プログラムで発見された側彎症患者がその後どういう経過をたどったかの事実を
証明するものが見つからなかった。
(august03より)
つまり、この疾病予防会議の結論は、学童検診によって発見された側彎症の疑い
を持たれたこどもがその後どういう経過をたどったかを示す十分な研究/調査結果
を見つけることができなかった。見つけることができなかった、ということは、
検診が効果がないことと同じ。というような理屈で、学童に対する脊柱検診の実施
を支持しない。という結論にいたっているわけです。
この結論に対して、今回ご紹介する医学会側の意見は次のとおりです。
(簡便性より、オリジナル英文の転記はしませんので、オリジナルにご興味のある
方は、上記のNSFのホームページからPDFをダウンロードして下さい)
予防会議の結論は、多くの研究/調査論文を無視したものであり、また各医学会の
考えを無視したものであり、また側彎症のこどもたちを治療している専門家の意見
を無視したものである。我々、側彎症治療に携わる医学会は、この予防会議の結論
には反対する。
第二として、米国内の半分ほどの州では学校検診はいまだにその効果については
賛否両論がある。1993年のスクリーニングを推薦する研究発表によれば、学校検診
をすることによってコブ角がまだ小さいうちに発見することができる。もし検診が
なかった場合は、カーブが45度を超えたり、手術を必要とするまでに進行していく
リスクが、検診した場合よりも8倍大きくなることを示唆した。一方、1994年には
学校検診は費用対効果の面から反対意見の研究が発表された。また、レントゲンの
照射が害となることから反対とする意見もある。
(放射線による害については、現在病院に普及しているレントゲン機器は放射量が
以前に比較すると格段に減少しており、デジタル撮影機器ではその害を気にする
レベルでは無くなっている)
第三として、予防会議が学校検診を支持しない理由として、進行性の高い側彎症
患者はごく少数であるにも関わらず、進行するかしないか不明な多数の患者に
装具療法を行うことは、彼らの生活の質を落とすことになりメリットがない、と
している。これに対して医学会側は、装具による進行抑制効果があることを示して
反論している。1)装具療法により進行が抑制できる 2)手術を必要とするほどの
ひどい変形をできるだけ早期の段階で発見できる(手術をするとしても、ひどい
状態まで進行した場合よりも、それ以前での手術実施のほうが成績が良い)
第四として、医学会は学校検診について下記の方法を提案している。
女子は10歳と12歳のときに、それぞれ一年間に2回の検診を受ける事。男子は、
13歳と14歳のときに一度/年の検診を受けること。
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(august03より)
上記に示したように、医学会は政府系機関のだした結論(学校検診は不要)に対して
反対を表明しました。しかし、現実として米国内の各エリアでは、この政府系機関
のだした結論を根拠として、以下のウエストバージニアのように、検診をストップ
するところがではじめているようです。
The National Association of School Nurses (NASN) does not have a position
statement or policy brief on postural screening in schools. Therefore,
the WV Council of School Nurse recommends school nurses
DO NOT perform mass postural screenings due to the outcomes of
evidence-based research by USPSTF.
米国学校看護婦協会は学校での脊柱検診の実施に関する是非を判断していない。
従って、ウエストバージニア州学校看護婦会は、疾病予防会議の結論を根拠として
州内の学校での脊柱側彎検診は実施しないこととします。
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