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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

(再送版です!)マクミラの真のバースデーパーティ・ウィズ・ミスティラ

2019-03-02 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 4年に一度のうるう年。
 マクミラは、2月29日の真の誕生日をヌーヴェルバーグ・タワーで迎えた。ただし、四人の魔女との闘い以降、ダニエルの看病で誕生日であることも忘れていたし、友人たちも遠慮していた。
 コンコン。ノックの音がした。
「いったい、誰が?」暗闇の中で、ワイングラスを手にしたマクミラは考えた。「おそらくこのタイミングで訪ねて来そうなのは・・・」
「あの~、お姉様。昨年は、2月28日に勘違いして失礼いたしました」蚊の鳴くような声でミスティラが入って来た。
「やはり・・・」
「お誕生日おめでとうでございます。もしかして、おじゃまだったでしょうか?」
「よいのだ。わたしは人間がするようなことは、ダニエルとはしない」
「それは、どういう意味ですか?」
 柄にもなく照れたマクミラが、一瞬、躊躇した。「人間の恋人同士がするようなことだ。我らは、ヴァンパイアだからな」
「参考のために教えていただきたいのですが、デートもしないのですか?」
「バカなことを聞くな。だが、読者も知りたいかも知れないな。よいであろう。ダニエルが元気だった頃には、ひたすら夜のニューヨークの街を歩いた」
「夜の街を、歩く?」
「そうだ。かつて冥界の神官だったわたしには、肉の交わりなどは興味がない。不思議だが、ダニエルと何時間でも腕を組んで歩くことが唯一の安らぎだった。時々、冥界から抜け出して来た悪鬼共と出会うこともあったが、二人で闘うことも楽しみの内だった」
「そうなのですか」マクミラに近づいたミスティラがギョッとした。「お姉様、その顔は!」
 マクミラの顔は、痣だらけだった。
「まさか人間界で今、はやりのDVですか?」
「まさか。だが、わたしは自分では見ることができないからな。ひどい顔をしているか? あばれるのだ、ダニエルが。もう自分の中の悪と正義の対立をおさえられなくなってきているらしい」
 ミスティラが気がつくと、床にぶっ倒されたダニエルが横になっている。
「お姉様、これは・・・」
「人間になったとはいえ、まだダニエルに遅れを取るわたしではない。やられたら、倍にして返すまでのことだ」マクミラが、ゾッとする微笑みを浮かべた。「アヴァンが今、書いている第三部では再び、わたしは悪役に戻るかもしれぬ」
「まさか」ミスティラは思った。でも、それも昔のお姉様らしくてよいかも。
「もうよいであろう。せっかく、かわいい妹が訪ねて来てくれたのだ。極上のワインでも飲もうではないか」
 アオーン! 
 キル、ルル、カルの3匹が小さく哭いた。3人と3匹のパーティが始まった。
 1人は床に寝転がったままだったが。


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