(マクミラよ、我を闘いでやぶっただけでなく、我の心まで奪った愛しき相手。冥界の最高位の神官としてたぐいまれなる力を持ったお前の爪は、我がプライドだけでなく凍りついていたハートまでも引き裂いた、狂おしい愛の痛みに打ち震える内に、我は異次元空間を人間界に堕ちていった)
「おおかたそんなことと思っていたが、その姿はわたしが知っている姿ではないぞ」
(我はもはや魔神スネールではない。精神世界でトリックスターと合体した我は、輪廻の蛇ウロボロスとなったのだ。我らは、お前たちの時間で10年にわたってお互いにもう一匹の尻尾を呑み込もうと絡み合ってきたのだ)
蛇は、脱皮による成長と長期の饑餓に耐える生命力から「死と再生の象徴」であり、ウロボロスはみずからの尾を食べる終わりも始まりもない完全なるものの象徴であった。ヘレニズム文化圏では世界創造の完全性を表す例として、錬金術でも相反するものの統一を示す象徴として用いられてきた。もしもこの場にパラケルススがいたら、なんと言うか聞いてみたいものである。
「お前が輪廻の蛇ウロボロスになったというのか?」
(太古の蛇一族の予言によれば、我が人間界に堕ちるのは予定されていたこと。この国の比丘神社の池には、マーメイドの血筋を引く十三匹の錦鯉たちがいた。長い時間をかけて錦鯉たちを喰らい続けた我は、いつの日か来るマーメイドとの闘いに備えて力をたくわえていた。だが、マーメイドの小娘の6本目の指を切らせる企みに失敗した上に、お前はマーメイドとも手を結んでしまった)
「手を結んだなどと、大げさな。わたしは、この星を滅ぼそうとする側のあまりの身勝手さにあきれて傍観者となっただけだ」
(それもよかろう。しかし、お前が傍観者でいるチョイスはなくなりつつある。すべての神々のゲームのルールは変わりつつある。我らがウロボロスになったのも、その1つにすぎぬ)
「いったいどういうことだ?」
(本来、トリックスターとは、世界が作られ、線引きされ、範疇が定義され、階層が建造されるやいなや原始的パフォーマーとして規範を破るため入り込み、タブーを犯し、すべてをひっくり返すはずであった。しかし、トリックスターのさかさまジョージが、お前を忘れられない我と合体した結果、一度は単体のウロボロスとして合体した後、お前を救うことを望む儂とお前を破壊することを望むトリックスターの2匹に分裂したのだ)
「意味がまったくわからぬ。わたしが、お前に救われるとかトリックスターに破壊されるなどとは思いもよらぬ」
(そんなことはないであろう。自分自身の気持ちを探ってみるがよい。最近の胸騒ぎ、兄弟の降臨、我らの合体と分離。すべては魔性たちが反乱を起こし、魔界を脱出したことに端を発している)
「まさか魔性たちが結界を超えたのか!?」
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