イスラエルとトランプの暗闘
2019年12月12日 田中 宇
トランプの米国が、イスラエルの政争に介入している。イスラエルでは9月17日の議会選挙で拮抗状態になった後、最初の1か月はリクードのネタニヤフが連立組閣を試みて失敗した。次の1か月は青白連合のガンツが組閣を試み、こちらも難航したものの、リクードから世俗派を引き抜くか、少数派の連立政権を作って信条的に連立に入れないリーベルマンの「イスラエル我が家」に閣外協力してもらう形でまとめようと、11月20日の組閣期限を控えて最後の交渉に入った。ところがそんな段階の11月18日、ポンペオ米国務長官が記者会見で「イスラエルの西岸入植地の建設は必ずしも国際法違反でない」と宣言した。これは1970年代以来の米国の対イスラエル姿勢の根本を覆すもので、西岸入植地の拡大に積極的だったネタニヤフを加勢するものだった。この宣言を受けて、ネタニヤフを裏切って青白側に転向しようとしていた人々がリクードを離れないことを決め、青白の連立組閣は失敗した。来年3月に再度のやり直し選挙を行うことになった。 (Trump's gifts to Israel: Jerusalem, the Golan and now the settlements) (U.S. State Department denies Netanyahu's claim he discussed Jordan Valley annexation with Pompeo)
イスラエル政府はネタニヤフが暫定首相の状態が続くことになったが、青白連合の組閣失敗が決まった翌日の11月21日、イスラエルの検察が、何年も前から捜査していた汚職の容疑でネタニヤフを起訴した。イスラエルの検察は、ネタニヤフについて4種類の微罪の汚職容疑を並行して捜査しており、微罪しかないネタニヤフを何とか有罪にして失脚させたい政治的意図が感じられる。ネタニヤフは側近を司法相に据えて検察の捜査を妨害しており、ネタニヤフvs検察の政争になっている。検察が単独で戦っているのでなく、イスラエル上層部の官僚機構(軍上層部、諜報界、外交界、法曹界など)がネタニヤフを辞めさせたがっている感じだ。 (What Does the Indictment Against Netanyahu Portend?) (Will Israel's right-wing camp lose its leader soon?)
検察がネタニヤフの捜査を始めたのは2016年末で、ちょうどトランプが当選した直後だ。トランプとネタニヤフはいずれも、ユダヤ系米国人でカジノ王のシェルドン・アデルソンが最大の政治資金源だ。トランプが共和党の予備選に勝つための決定打になったのがアデルソンからの支持だった。トランプはアデルソンの支持を得るために2つの約束をした。一つは、イスラエルの仇敵であるイランを弱体化させるため、米欧がイランと結んだ核協定(JCPOA)を破棄してイランを再制裁すること。もう一つは、イスラエルがパレスチナ国家の建設(「2国式」の中東和平)を拒否してヨルダン川西岸の占領地をイスラエルの領土として併合していく「2国式潰し」を支持・支援することだった。トランプは就任後の2年間で、この両方を実施している。トランプが提唱した「世紀の中東和平案」は詐欺的な目くらましで、内容が非公開のまま2年近く放置され、10月末に米政府の中東和平担当だったグリーンブラットが辞任して雲散霧消した。 (Indicted for bribery, Netanyahu ramps up his victimization campaign) (Jason Greenblatt: I still hope peace plan will be released (笑)
イランとパレスチナ。この2つのテーマについて、トランプがネタニヤフを巻き込んで、イスラエルの官僚機構が好まない方向に事態を動かすようになったため、官僚機構はネタニヤフに汚職の疑惑をかけて権力を削ごうとしたと考えられる。イラク戦争あたりまで、イスラエル内部の対立は大したものでなく、パレスチナ人やイランを敵視する好戦的なネタニヤフのリクードなど右派と、それらへの敵視が少ない中道派・左派とが政界内でバランスし、そのバランスの上に官僚機構が存在していた。当時、イスラエルの官界は米国の軍産複合体の一部だった。 (PM Netanyahu’s chances of survival are drowning under a concerted political, legal, media onslaught)
しかし、911後に米国がイスラム世界への敵視を強め、それに乗ってイスラエルでも右派が強くなり、リクードは選挙で連戦連勝になり独裁的な権力を持った。中道派や左派は弱体化した。17年からトランプがネタニヤフを加勢し始めたため右派はますます強くなり、イスラエルの官僚機構は選挙でなく司法の力でネタニヤフを倒す試みを開始せざるを得なくなった。それがネタニヤフの汚職疑惑の本質だ。しかし、疑惑は微罪の寄せ集めで威力がない。米民主党によるトランプ弾劾と似ている。イスラエルの官界は、トランプに引っ張られたネタニヤフがイスラエルを国際的に弱体化させていくことを懸念している。米国の軍産は、米国の覇権を維持するのが目標だが、イスラエルの官界はイスラエルの国益を守るのが目標だ。米国の覇権が失われるなら、イスラエルは米国から距離をおき、ロシアや中国と組まねばならない。トランプの覇権放棄が成功するほど、米軍産とイスラエル官界の利害が離反していく。 (Gantz warns Netanyahu is risking ‘internal war,’ calls Likud to unity coalition) (米国から露中への中東覇権の移転が加速)
17年にトランプがネタニヤフを加勢する態勢になった後、18年秋から、右派(しかも親ロシア!)の政治家であるリーベルマン元防衛相・外相がネタニヤフを倒す側に入ってきて、イスラエルの政争を「右派vs中道派」の構造から「左右の世俗派vs宗教右派」の構造へと転換しようとした。この構造転換をもとに、左派から右派までのイスラエルの世俗派を統合する「青白連合」の政治組織が「打倒ネタニヤフ・打倒宗教右派」を共通の目標に掲げて作られた。ネタニヤフと組んでいるトランプは、米国のキリスト教原理主義の勢力から支持されており、宗教右派の側は、ユダヤとキリスト教の右派連合だ。これはブッシュ政権の時からの構図だ。 (Avigdor Liberman drives Israeli politics crazy) (Avigdor Liberman’s followers accept his worldview change)
この新たな対立構造のもとで今年9月に議会選挙が行われ、青白連合は、これまで蚊帳の外に置かれていたアラブ系(イスラム教徒のイスラエル人=パレスチナ人)の諸政党をも取り込もうとする(世俗右派の反対で道半ばに終わった)など、全く新しい動きを見せた。だが結局、9月の選挙は複雑な拮抗状態を表出させ、ネタニヤフと青白の両方が連立組閣に失敗した。その直後、官僚機構がネタニヤフの起訴に踏み切ったが、ネタニヤフはその後も暫定首相として留任している。起訴されても留任できることになっている。イスラエル政界の暗闘は、ネタニヤフ・トランプ・宗教右派の側と、官僚機構・青白連合・リーベルマンの側との対立になっている。依然としてネタニヤフの側が優勢だ。 (No legal grounds forcing Netanyahu to resign as PM, attorney general says) (Netanyahu, Liberman: the ultimate battle)
▼イスラエルのためにイランを敵視し、イランを強化してイスラエルを困らせるトランプ
イランとパレスチナの2つのテーマについて、ネタニヤフやトランプの戦略の何が問題なのか。イスラエル官界は何がしたいのか。トランプの意図は何か。これらを説明せねばならない。イランの方が構造が単純だ。イラク侵攻まで、イスラエルと米国の目標は一致していた。それはイラクの次にイランを、軍事侵攻もしくは経済制裁の末の反政府運動の扇動によって政権転覆することだった。オバマは、イランを政権転覆することに反対で、核協定を結んでイランを許して強化し、米イスラエルがイランを潰せないようにした。アデルソンがトランプに核協定を放棄させたのは、オバマが作ったイラン強化の流れを逆流させるためだった。トランプは、約束通りイラン核協定を離脱したが、同時にシリアやイラクなど中東からの撤兵をやりたがり、イランがロシアの支援を得つつシリアやイラク、レバノンで影響力を強める流れを作ってしまった。イランは米国から制裁された分、ロシア中国など非米諸国との経済関係を強め、非米諸国内の結束が強まることにつながった。イラン核協定からの離脱は、米国が中東覇権を失う流れを強めた。 (トランプのシリア撤兵の「戦略的右往左往」)
トランプは18年4月に安保担当補佐官としてネオコン系のジョン・ボルトンを起用し、翌5月にイラン核協定からの離脱を挙行したが、ボルトンの起用はアデルソンの差し金だったと指摘されている。トランプはその後、今年9月にボルトンを辞めさせ、翌10月にシリア撤兵を発表した。この時ネタニヤフは選挙後の組閣ができず行き詰まり、青白やリーベルマンらとの対立が激化してトランプだけが頼りで、イスラエルはトランプのシリア撤兵を抑止できなくなっていた。 (中東大戦争を演じるボルトン) (中東の転換点になる米露首脳会談)
イスラエルは、米国の仲裁でアラブの盟主サウジアラビアと和解し、米イスラエルサウジが組んでイランを敵視して潰す流れをトランプに求めた。トランプはイスラエルの要求通りサウジとイスラエルをくっつけようとしたが、これを「サウジとイスラエルがくっつけば米国が中東から撤退しても大丈夫だ」という覇権放棄の文脈で進めた。そのため、イランがどんどん強くなる中、サウジはこの話に乗ることへの躊躇を強め、むしろイランと和解したがるようになった。トランプとネタニヤフが中東和平を進めないため、サウジはイスラエルと組みたがらなくなった。世界の石油利権に対する米国の支配力が低下し、サウジが主導してきたOPECは、米国が敵視するロシアと組み、非米的な「OPECプラス」に変身した。イスラエルがトランプにやらせたイラン敵視は、米イスラエルの弱体化を招いている。トランプはイスラエルを出しぬいて、これをやっている。 (Israel after signing treaty with PG Arab states at White House: Report) (イランを共通の敵としてアラブとイスラエルを和解させる)
ネタニヤフと青白の両方の組閣が失敗し、トランプ政権がネタニヤフを強化する西岸占領合法宣言を発し、対抗してイスラエル官界がネタニヤフを起訴し、事態は乱戦になっている。トランプはさらに、ネタニヤフとの間で史上初の米イスラエル軍事協定を締結しようとしている。軍事協定の中身は不明だ。トランプはおそらく、イスラエルと軍事協定を結んだ上で、米イスラエル連合でイランと戦争するシナリオを急進させようとしている。米軍はイラン正面のサウジへの増派を開始したと報じられ(米軍自身は否定。多分ガセネタ)、米空母がペルシャ湾に急派された。トランプがイランと本気でイランと戦争するなら驚きだが、トランプは戦争するふりだけだ。 (Preparing the Stage: A Flawed Prospectus for War, This Time With Iran) (Netanyahu, Pompeo Push Forward With US-Israel Defense Pact)
米国は06年にチェイニー副大統領がイスラエルのオルメルト首相に「米イスラエルで、イランと戦争しよう。まずイスラエル軍がレバノンのヒズボラに戦争をしかけろ。そうしたら米軍がイランを攻撃する」と持ちかけ、オルメルトが騙されてヒズボラと開戦しても米軍は動かない、という戦争詐欺をやっている(チェイニーはトランプと同様、親イスラエルのふりをした隠れ多極主義者だった)。イスラエルは、もう騙されたくないはずだ。しかし、政治的に行き詰まっているネタニヤフは、トランプの提案を断りにくい。イランとの実際の戦争はしないが、イランを共通の敵とする史上初の軍事協定を米国と結ぶ可能性はある。 (Netanyahu’s Get-out-of-Jail Card... War With Iran) (ヒズボラの勝利)
イスラエルが米国と軍事協定を結ぶと、イスラエルがイランなどから脅威を受けた時に米軍に助けてもらえる。だがその一方で、イスラエルが他国で軍事や諜報の活動をする時に米国に通知せねばならず、イスラエルの秘密の動きを米国に知られ、トランプにつけ込まれる傾向が増す。だから従来イスラエルは米欧などと同盟関係を結ばない「栄光ある孤立」を戦略としていた。 (US-Israel Defense Treaty Gaining Steam After Pompeo & Netanyahu Meet)
そもそもイスラエルに対するイランの脅威は、米イスラエル側からのイラン敵視の反動だ。しかも最近では、イランの軍勢(革命防衛隊+民兵団)がイスラエルのすぐ隣りのシリア南部に拠点をいくつも作り、いつ攻撃してきてもおかしくない。この状況は、オバマとトランプがシリア内戦の後始末をロシアに丸投げし、ロシアがイランと組んでシリアに駐屯した結果だ。米国はイスラエルに脅威を与えている。イスラエルの官僚機構は、ネタニヤフがトランプから圧力を受けて軍事協定を結ぶのを看過できない。 (トランプ中東覇権放棄の大詰め) (シリア内戦の終結、イランの台頭、窮するイスラエル)
米国と対照的に、ロシアはイスラエルの国家安全に配慮し、シリアに駐屯するイラン系軍勢の拠点をイスラエルが空爆しても黙認している(シリア上空はロシア軍が防衛している)。ロシアは中東の覇権運営コストを下げるため、イランとイスラエルが敵対を弱めていくことを好んでいる。トランプの米国(の演技)と逆方向だ。イスラエルは、9月の選挙後に青白連合が連立組閣に成功していたら、トランプから距離をおき、ロシアに接近していたかもしれない。青白連合をテコ入れするリーベルマン元国防相は、イスラエルで最もプーチンと親しい親露派だ。しかし、青白の組閣はトランプの横槍で失敗した。米イスラエルが今にもイランと戦争しそうな感じが強いほど、ネタニヤフは暫定首相としてとりあえず延命できる。 (Russia nixed arms sales to Israel’s enemies at its request, PM’s adviser says) (Russia Exposes Operational Details on Several Israeli Strikes in Syria)
今後しばらく、おそらく来秋の米大統領選挙後まで、米国が今にもイランと戦争しそうな状態の演出が続く。だが実際には、イランはかなり強くなっており、米国もイスラエルもイランと戦争できない。トランプが覇権を放棄するほど、イランは強くなるし、イスラエルは米国に頼れなくなる。いずれイスラエルは米国よりロシアに頼るようになり、それとともに米国はイランを敵視しなくなる。それはトランプの2期目が終わる2024年以降かもしれない。 (イラクやレバノンの反政府運動がスンニとシーアの対立を解消する) (Iran shuts south Syrian command center opposite Golan, consolidates Abu Kamal hub)
▼2国式の死滅はハマス=ムスリム同胞団の席巻につながる
イスラエルの官界や青白連合と、ネタニヤフ・トランプ・宗教右派との政争のテーマの2つ目はパレスチナ問題・中東和平をどうするかだ。焦点は、ヨルダン川西岸にパレスチナ国家を作る「2国式」の和平を進めるのか、それとも2国式を潰して西岸をイスラエルの国土として併合するのかという対立だ。「2国式」を続けようとする官僚機構と、それを潰そうとするトランプ・ネタニヤフらの戦いになっている。 (Finally the USA Supports the One State Solution) (Trump Administration Says Israeli Settlements Aren’t Illegal)
ネタニヤフ側は、西岸を併合して2国式の和平交渉の体制を終わらせようとしている。これは明確だが、他方の官僚青白側が2国式の交渉を急いで進めて妥結させたいかというと、そうではない。交渉が妥結したら、米国が出て行ってしまう。官僚側は、2国式の交渉が妥結せず永久に交渉途中である状態にして、米国がイスラエルに支援し続け、イスラエルが米国を牛耳って間接的な中東覇権を握り続けるようにしたい。官僚側は、永遠に未解決な2国式を望んできた。これは米国の軍産複合体も同じであり、その意味でこれまでイスラエルの官界は軍産の一部だった。2国式を永遠に未解決にするために、2国式に強く反対して西岸併合を叫ぶネタニヤフのリクード(宗教右派+世俗右派)の存在も必要だった。 (Pompeo Goes Full Neocon)
だが01年の911事件後、イスラム敵視で右傾化(ネオコン化)したブッシュ政権の米国が、2国式を潰したいリクードの考え方に本気で同調し「2国式の永遠の未解決」でなく「2国式を潰す」新たな流れが米国から押し寄せてきた。911後のテロ戦争は、イスラエルが米国を巻き込んで中東のイスラム勢力を永遠に敵視できるイスラエルに好都合な長期体制(第2冷戦)として作られたが、親イスラエルのはずの構図が、2国式を本気で潰す反イスラエル的な構図に変身した。 (西岸を併合するイスラエル)
2国式の死滅とともに、イスラエルが西岸を占領・併合する傾向が強まり、イスラエルは「アパルトヘイト国家」になっていく。イスラエルは孤立をいとわないので、親イスラエルのトランプ政権が続く限り、これでかまわない。問題はむしろ、2国式に依拠して政治正統性や経済援助を得てきたパレスチナ自治政府(PA)とヨルダンが政権転覆される可能性の高まりだ。PA(ファタハのアッバース政権)とヨルダン(王政)の政権は従来、米イスラエルの傀儡として機能してきたが、2国式が死滅すると、両国の政権は正当性を失い、米国からの経済援助も失われ、両国ともいずれハマス(=ムスリム同胞団)の政権に取って代わられる。ハマスは、この地域で政治的人気が最も強い。ガザはすでにハマスの統治下だ。ヨルダン西岸ガザでハマスが政権を取ると、その余波でエジプトでも軍事政権を倒して同胞団の政権に替えようとする「カイロの春」が再燃する。米国の覇権が低下するほど、ハマス=同胞団が強くなる。 (US position on Israeli settlements backs Jordan into a corner) (イスラエルのパレスチナ解体計画)
ハマスはイスラエルを敵視してきたので、これはイスラエルにとって最大の脅威かと思いきや、そうでもない。ハマス=同胞団は、ヨルダン西岸ガザとエジプトという広大な領土を得られ、イスラエルと国際社会がそれを認めるなら、西岸の一部の入植地をイスラエルに割譲しても良いと考えそうだからだ。イスラエルと和解した方が、ハマスも「平和の配当」として経済発展を得られる。 (Israeli Officials Warn Annexation May Lead Jordan to Take Drastic Steps) (中国が好む多極・多重型覇権)
米国やイスラエルは、すでにこのハマス台頭の路線を容認しているふしがある。9月以来、どこからかの圧力で、PAの独裁者であるファタハのアッバース大統領が、PAの議会と大統領の選挙をやると宣言している。圧力をかけたのは米国のはずだ(そうでなければアッバースは動かない)。選挙時期は来年2月が取り沙汰されている。前回06年の選挙では、西岸もガザもハマスが勝ったのに、負けを認めないファタハが内紛を起こし、西岸はファタハ、ガザはハマスの分割統治にしてしまった。それから13年たち、ハマスはさらに優勢になっている。選挙がきちんと行われれば、西岸もガザもハマスの政権になる。そうなるとヨルダン王政が風前の灯になる。ヨルダンの最大政党は同胞団=ハマスだ。カイロでも今秋来、同胞団による反政府運動が続いている。 (Palestinian elections look increasingly feasible) (プーチンが中東を平和にする) (ハマスを勝たせたアメリカの「故意の失策」)
最近、トランプと仲が良いキリスト教原理主義勢力が、イスラエルとハマスの許可を受け、ガザとイスラエルの境界線に敷地を借り、病院を建設することになった。これは実のところ単なる病院でなく、米軍と米外交官も駐留し、イスラエルとハマスの和解を取り持つガザの米国代表部として機能するという説がある。この施設の建設に猛反対しているファタハの筋がそう言っている。もともとハマスは、イスラエルがパレスチナ側の内紛を扇動するために育てた組織と言われ、両者は諜報的に、敵もしくは味方として以心伝心できる間柄だ。トランプの2期目かそれ以降にハマス=同胞団が大化けするかもしれない。同胞団の後見人であるトルコやカタールが優勢になる。 (Suspicious timing of US field hospital in Gaza) (A proposed long-term Gaza truce brings Hamas back to Judea & Samaria. The IDF would go for it)
トランプは、イスラエルをできるだけ長く自分の側に巻き込み続けようとすると予測される。その理由は、イスラエルを野放しにすると、きたるべき多極型の覇権体制下で大きな力を持つロシアや中国にすり寄り、イスラエルがこれまでの米国覇権を牛耳ってきたように、多極型の世界も牛耳ってしまう(もしくは恒久的な混乱や対立構造を多極型の世界に植えこんでしまう)かもしれないからだ。安定した多極型世界を実現したいトランプと背後の資本家層としては、イスラエルをできるだけ長くトランプの側に巻き込み、ロシアや中国とのつき合いを最小限にさせ、ロシアと密通するリーベルマンを抑制しておく必要がある。 (イスラエル傀儡をやめる米政界) (ロシアの中東覇権を好むイスラエル)
ロシアで経済運営ができるのはユダヤ人だけだ(ロシア人は下手くそ)。イスラエルがその気になれば、ロシアを混乱させたりプーチンを無力化できる。しかし、今のイスラエルはプーチンを大事にしたい。米国の側が、イスラエルとイランを戦争させたがるなど意図的に常軌を逸し続けているので、正常で合理的な頼れるプーチンを失うと、それこそイスラエルは米国によって自滅させられてしまう。 (プーチンが中東を平和にする) (米国に頼れずロシアと組むイスラエル)
資本家層は、英国をEU離脱騒動で頓珍漢な自滅状態にさせているが、これも形成されつつあるまだ脆弱な多極型世界を英国が破壊・支配せぬようにする防御策なのだろう。 (米国が英国を無力化する必要性)
イスラエルを書くときはいつも複雑で難解な長文になってしまう。読者に申しわけない。ユダヤ人は世界で最も政治絶倫かつ諜報的・国際的な人々(日本人と対照的)なので、イスラエルの政争は敵味方が不透明で本質も隠蔽されていて分析が難しい。